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とろみに混ぜたお薬、効いてますか?

とろみのついたお茶に、粉薬をぱらり。
木べらで、くるくる。

嚥下が落ちてきた患者さんには、よく見る景色だ。

今回はゆるキャラ風の画像でお届けします。

——でも、ふと思うことがある。

あのとろみに混ざったお薬、ちゃんと効いているんだろうか。

飲み込みやすさのために選んだ工夫が、
薬の効き目に影響していたら―
ちょっと、こわい話だ。

お薬は、効いてなんぼですから!!

数年前まで、私もそこまで考えていなかった。
「飲めればOK」だと思っていた時期があった。

これは、とろみと薬の、あいだの話。


第1節:とろみ+薬、効きが落ちるって本当?

結論から言うと、落ちることがある。

とろみ剤と一緒に飲んだお薬で、血中濃度が下がった、効きが弱まった——そういう報告が、実はいくつか出ている。

たとえば、てんかんのお薬であるカルバマゼピン
とろみ剤に混ぜたら、体内に取り込まれる量(AUC)が有意に下がった、という報告がある。

お薬によって、問題ない場合もあります。
でも、カルバマゼピンは下がった。

グアーガム系でも、キサンタンガム系でも、下がった。

——え、両方?
と、最初に読んだとき私もそう思った。

もう少し丁寧に見ていくと、こんな条件で下がりやすいらしい。

  • とろみを濃くしすぎる

  • 薬を長く浸けすぎる

  • とろみ剤の種類が合っていない

盲点になりやすいのは、
②薬を長くつけすぎるかな・・・
とHONOは思います。

逆に言うと、薄め・短時間・適切なとろみ剤を選べば、
影響はぐっと抑えられる。

「とろみに混ぜたら全部ダメ」じゃない。
「条件によっては、落ちることがある」。

このニュアンス、現場で共有できているかどうかで、
けっこう景色が変わる気がしている。


第2節:とろみ剤の種類で、けっこう違う

とろみ剤、と一口に言っても中身はいろいろある。

いまよく使われているのは、大きく分けて二つ。

・グアーガム系
・キサンタンガム系

名前だけ見るとどっちも似たような粉だけど、
薬と一緒になったときの動きは、地味に違う。

ある研究では、薬の吸収という観点で見ると、
キサンタンガム系のほうが影響が少ない、という結果が出ている。
浸ける時間も、1分以内が望ましいらしい。

——あ、そんなに短いんだ。
と、私も最初は思った。

病棟だと、配薬カートに準備して、ナースコールが鳴って、戻ってきて、また少し置いて……みたいな流れで、3分5分はあっという間に過ぎる。

だって、看護師さん忙しいもん💦
ここは、ある程度しょうがないことだと思う。

その「あっという間」のあいだに、
薬がとろみの中でじわじわ変化していることがある、という話だ。

ちなみに、キサンタンガム系でも油断はできない。
第3世代キサンタンガム系では、口腔内崩壊錠の崩壊そのものに影響が出るという報告もある。

「キサンタンなら何でもOK」でもないし、
「グアーは全部ダメ」でもない。

どのとろみ剤を使っているか、
何分置いているか、
何の薬を混ぜているか。
このあたりが、効きを左右する小さなつまみになっている。


第3節:意外な落とし穴

ここでもうひとつ、知っておくとちょっと安心な話を。

口腔内崩壊錠——いわゆるOD錠。
口に入れた瞬間、唾液でさらっと崩れてくれる、あの錠剤。

飲み込みが落ちてきた方に、
すごく相性のいいタイプ……のはずなんだけど。

とろみの中に落とすと、話が変わることがある。

第3世代キサンタンガム系のとろみ剤と一緒にすると、
OD錠なのに崩れない、溶けにくい、
という現象が報告されている。

OD錠よ・・・
お前の個性は封じた・・・

「飲みやすさのために選んだOD錠」が、
「飲みやすさのために選んだとろみ」のなかで、
力を発揮できていない。

ちょっと皮肉な構図になっている。

さらに、特定の薬とは相性そのものが良くない、
という報告もある。

抗うつ薬の一部、抗がん剤の一部、降圧薬の一部。
具体名はここでは控えるけれど、
「この組み合わせは避けたほうがいい」というリストが、
海外のガイドラインには載っている。

——え、そんなのあるの?
と思いませんでした??
私も数年前までその存在をちゃんと知らなかった。

こういう情報は、薬剤師の側でも、
まだ全員が同じ熱量で持っているわけじゃない。
だからこそ、現場で「あれ?」と思ったときに、
声をかけ合える距離感が大事になる。

とろみの向こうで、薬がどう振る舞っているか。
見えにくい話だからこそ、一緒に共有しておく価値がある。


第4節:臨床ではどう判断する?

ここまで読んで、
「じゃあ全部ダメじゃん」と思った方もいるかもしれない。

でも、現場の実感としては、
そこまで悲観する話でもなかったりする。

たとえば、ある回復期リハ病院で、軽度の嚥下障害がある50人ほどの患者さんを対象に、降圧薬を「とろみあり」で飲んでもらった研究がある。

結論としては、血圧コントロールに大きな差は出なかった。

——なんだ、大丈夫なんじゃん。
と思いたくなる。
でも、ここがちょっと面白いところで。

「臨床的に差が出にくい薬」と、
「条件次第で効き目が変わってしまう薬」が、たぶんある。

降圧薬のように、毎日少しずつ効かせて、血圧という数字で見える薬は、多少のブレが許容されやすい。

一方で、てんかんの薬や、抗うつ薬や、抗がん剤のように、血中濃度のちょっとした上下が効き目や副作用に直結するタイプは、同じようには扱えない。

結局、これだと思うんですよね!

どの薬を、どの患者さんに、
どのとろみで、どれくらい置いてから出すか。

このパズルを、ひとりで抱え込まなくていい、
というのが今日のいちばん言いたいところで。

管理栄養士さんが「このとろみ、最近変えたんですよ」と教えてくれる。
看護師さんが「最近うまく飲めてない気がして」と気づいてくれる。
そこに薬剤師が、「ちょっと薬の側から見てみますね」と入っていく。

たぶん、それでいいんじゃないかな。


結び

とろみのカップに、薬を落とすあの瞬間。

飲み込みやすさを選んだその工夫は、ちゃんと意味のあるもの。
そのうえで、もう半歩だけ。

どのとろみで、どれくらい時間を置いて、何を混ぜているか。
そこに薬剤師が、そっと混ざっていけたらいい。

とろみの向こうで、薬は静かに働いている。
その静かさを、こぼさないように。

これは、とろみと薬のあいだに立つ、私たちみんなの話。

今日言いたいことは、コレ!!!

コラム:オムツの中の、未崩壊錠の話

少し地味な話を、ひとつ。

経管栄養や嚥下困難の患者さんで、排泄物の中に錠剤がそのまま出ていた——という事例が、約3割で見つかったという報告がある。

3割。けっこう多い。

飲ませたつもりの薬が、ほどけないまま体を素通りしていることがある、という話だ。

オムツ交換のとき、
ふと「あれ、これ薬?」と気づける目があるかどうか。

看護師さん、介護士さん、管理栄養士さん。
薬の通り道のいちばん最後を見ているのは、
たぶん、薬剤師じゃない。

参考文献

  1. 谷口英喜ら. とろみ調整食品が薬剤の薬効に及ぼす影響に関する研究. KAKEN 19K11283. https://kaken.nii.ac.jp/en/report/KAKENHI-PROJECT-19K11283/

  2. 三浦ら. とろみ調整食品によるカルバマゼピン製剤の薬物動態への影響. 日本静脈経腸栄養学会誌. 2018;33(1):625. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/33/1/33_625/_pdf

  3. Vale of York CCG. Thickeners and Medicines Compatibility Guidance. https://www.valeofyorkccg.nhs.uk/seecmsfile/?id=5074

  4. 浜松リハビリテーション病院. 軽度嚥下障害患者における降圧薬服用時のとろみ添加と臨床効果. 2024. https://mol.medicalonline.jp/newbunken?GoodsID=dg4hppha%2F2023%2F005902%2F006

  5. 倉田なおみ編. 内服薬経管投与ハンドブック 第4版. じほう. 2020.


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