「毎月地獄…」の一言から始まった、褥瘡管理ツールをAIと一緒に作った話
「OHスケールの分析、毎月地獄…」
うちの病院の褥瘡管理者が、ぼそっとつぶやいた。
毎月、患者さんひとりひとりのOHスコアを確認して、リスク区分に分類して、マットが適切かを見て、先月より悪化していないかをチェックして……。
それを全部、手作業でやっている。
しかも、他の業務もたくさんある中で。
聞いていて、思った。
……あ、これ、絶対なんとかなるやつだ。
褥瘡予防に関わるようになってきたので、
俄然気になってきた。
別に、頼まれたわけじゃない。
ただ、「こういうツールがあれば、あの人がちょっと楽になるんじゃないかな」と思った。きっかけは、これだけ。
でもここから、私はアプリ開発の沼にハマっていった。
▶︎褥瘡予防について、薬の視点から考えた記事はこちら
最初に決めた、絶対に曲げない条件
作り始める前に、ひとつだけ絶対条件を決めた。
完全オフラインで動くこと。
これだけは、何があっても譲らない。
病院のPCは、患者さんの個人情報を扱う。
だから、インターネットには繋がっていない。
リスクはできる限り最初から排除したいので、
「PCの中だけで、ぜんぶ完結する」
——それが、医療現場でツールを使うための大前提だった。
そしてこの「当たり前の条件」が、
このあと私をリジェクト地獄に突き落とす。
Claudeに「こんなの作れる?」と聞いてみた
私が使ったAIはClaude。
「こういうデータがあって、こんな風にできたらいいんだけど」
そんな感じで話しかけるところから始めた。
そこからが、リジェクトとの戦いだった。
リジェクトの連続
v1で、10回。
v2で、7回。
これは作り直した回数。合計で17回。
……数えていた自分もどうかと思う。
一番多かったのは、やっぱり、あの絶対条件だった。
「オフラインで動いていない」
AIはなぜかすぐPythonを使いたがる。
賢いから、きっといい方法を選んでくれているんだと思う。
でもそれを動かすには、まずPythonをインストールしないといけない。
うちの病院のPCに、Pythonは入っていないし、入れることもできない。
即、却下。
「ごめん、それじゃ使えないの」
この台詞を、いったい何度言っただろう。
そして、もう一つ忘れられないやりとりがある。
私:「ここ、動かないんだけど」
AI:「でも、問題ないです」
私:「……いや、動かないんだって」
——埒が明かないので、実際の画面を見せた。
私:「ほら。できてないじゃん」
AI:「そうですね……あ、ここが間違えてました」
あっさり。
本当に、あっさり認めた。
……いや、最初からやってよー!
何度そう思ったことか。
エンジニアでもない、プログラミングの知識もない薬剤師が、AIと会話しながらアプリを作っていく様子、想像してもらえるだろうか(笑)
でも不思議と、嫌じゃなかった。
10回目より、15回目のほうが、
確実に形になっていた。
挫折しながら、それでも少しずつ前に進んでいる感覚。
たぶん私は、このやりとりごと楽しんでいたんだと思う。
▶私がAIと向き合ってみた記事はこちらにもあります。
できあがったもの
最終的に、形になったのはこれだけだった。
HTMLファイル、1つ。
CSVファイル、1つ。
たった、それだけ。
Pythonもインストールも、何もいらない。
HTMLファイルをダブルクリックする。
それだけで、開く。
ネットに繋がっていなくても、ちゃんと動く。
あれだけ却下し続けた「オフライン」の答えは、結局これだった。
種明かしをすれば、なんてことはない。
でも、ここに辿り着くまでが、17回だった。
★このアプリでできることはこんな感じ★
月次のリスク区分の推移をグラフで表示
OHスコアの分布を可視化
病棟別のリスク分布を比較
先月比で改善・悪化・不変を自動判定
マットが適合しているか/していないかを自動チェック
マットの見直しが必要な患者を自動でリストアップ
今月悪化した患者を重症度順に表示
患者IDで個別検索
……あの「毎月地獄」を、まるごと画面の中に入れてみた。
データの更新は、CSVを差し替えるだけ。
毎月、ファイルを一つ入れ替える。
それで、終わり。
そして、ひとつこっそり嬉しかったことがある。
完成版を、院内の何人かに触ってもらった。
そのうちのひとりが、ぽつりと言ってくれた。
「これ、いいね」
……もうそれだけで十分だった。
有料部分では、実際の画面を公開します
身バレ防止のため(笑)、実際のダッシュボード画面はここから先に入れています。
有料部分の内容:
ダミーデータで動かした実際の画面と各パネルの見方・使い方
CSVの列構成と作り方(これがあれば自分の病院でも作れます)
AIと一緒に作るときに「これだけは最初に決めておけ」と思ったこと
※ここから有料(100円)
画面の解説 ── 何が見えるのか
ここから先は
¥ 100
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