「謎カクテル」の話 〜まずはこの子だけでも意識してほしい〜
前回の記事で、
「懸濁ボトルの中で、ぜんぶ一緒に混ぜて“謎のカクテル”を作ってしまうと危ないことがあるよ」というお話をしました。
その中で出てきた、このスライド。

作ってくれてありがとう✨
分かっちゃいるけど、
実際の現場では一緒にしないと業務が回らない💦
なんてこともあると思います。
薬剤ごとにボトルやシリンジを分けるのも、
現実問題として難しいかもしれませんよね🤔
そこで今回は番外編として、その謎カクテルの中でも現場でまず意識してほしい主役級の薬である酸化マグネシウムに絞ってお話ししてみます。
酸化マグネシウムって、どんな性格の薬?
酸化マグネシウムは、胃酸を中和したり、便を柔らかくしたりする「制酸・緩下剤」です。

性格で言えば、かなりアルカリ性寄りの子だと思ってください。
アルカリ性寄りということは、
ボトルの中に入ると
周りの水のpH(酸性・アルカリ性のバランス)をグッと変えてしまう
他の薬の“溶け方”や“崩れ方”に強く影響しやすい
という特徴があります。
錠剤やカプセルは、本来「どのpHで、どのくらいの速さで崩れるか」を設計して作られています。
そこに酸化マグネシウム一緒に入ると『その設計図が書き換えられてしまうことがある』というのが謎カクテルの本質なんです。
ボトルの中で何が起きているのか
じゃあ、この薬が入ったボトルで何が起きているのか、気になりますよね💡?
代表的に起こりやすいのはこんな変化です。

💊底にざらざらした沈殿がたまる
本当は水全体にふわっと散ってほしい粒が、急にかたまりになって底に沈んでしまいます。さっきまできれいだったのに、「時間が経つと下にドロッと溜まる」ような状態です。
💊全体がゼリーのようにプルプルする
コロイド(細かい粒の集まり)が、アルカリや塩の影響でゲル(ゼリー)みたいな固まりになり、ボトルを傾けてもなかなか流れなくなります。
💊とろみ飲料のようにドロドロ・ベタベタになる
粘度が上がりすぎて「いつもの懸濁液」とは別物の、とろみの強い飲み物のような質感になり、細い経管チューブの中でベタッと貼りついて詰まりやすくなることがあります。
こうなると、
有効成分が本来のタイミング・場所で溶けにくくなる
チューブが詰まって交換や処置が増える
という、患者さんにとっても、スタッフにとっても、つらい結果につながりかねません。
酸化マグネシウムと「相性が悪い薬たち」
添付文書や各種資料を見ていくと、
酸化マグネシウムは
パーキンソン病の薬(レボドパ製剤など)
鉄剤
一部の抗菌薬
などと一緒に使うと、吸収が下がったり、配合変化で沈殿しやすくなったりすることが知られています。
経管投与の世界でも、
「レボドパ製剤と酸化マグネシウムは、同じボトルに懸濁しない」
「鉄剤と酸化マグネシウムは時間をずらす」
といった注意書きが、各病院の簡易懸濁マニュアルや一覧表に載っていることが多いです。特に、パーキンソン病の薬については、一緒のボトルで混ぜると色が褐色~黒色に変わって、パーキンソン病の薬の力価が大きく低下するので本当に避けてほしい💦

すべてを暗記する必要はないと思います。
ただ、
「処方に酸マグがいたら、とりあえず“同じボトルに入れていいか”を疑う」
という感覚。
これを頭の片隅に置いておいてもらえると、
それだけで謎カクテルの多くを予防できます😆
「全部まとめると時短」は、本当に時短か?
現場でよく聞く発想に、
「全部同じボトルに入れて、一気に流せば時短になるよね?」
というものがあります。
気持ちはとても分かります。
でも、酸化マグネシウムが混ざった謎カクテルになってしまうと、
チューブ詰まりで、交換や洗浄の時間が増える
薬効のブレで、追加投与や副作用対応が必要になる
という“後片付け時間”が上乗せされてしまうことがあります。
つまり、
目の前の5分を短縮する代わりに、
未来の30分を増やしてしまっているかもしれない
というのが、酸化マグネシウム入り謎カクテルの本質的な問題なんです。
じゃあどうする??
最後に、現場で使える簡単な考え方をご紹介✨
自施設で、参考になる部分があればいいなって思います。

🌸その1
処方に酸化マグネシウム方にがいたら、
まず別ボトル・別タイミングが可能かを考える
🌸その2
酸化マグネシウム+レボドパ製剤や鉄剤など、
『怪しそうな組み合わせ』を見つけたら、
『この2つ、一緒に懸濁して大丈夫ですか?』と薬剤師に一言聞いてみる
🌸その3
懸濁ボトルの中身が、いつもよりドロドロ・ゼリー状・底にどっさり沈殿していたら、それは『謎カクテルのサイン』だと思って、投与前に一度立ち止まる
もちろん、酸化マグネシウム以外にも「ボトルの雰囲気を変えやすい薬」はあります。それでも、まずは酸化マグネシウムだけでも意識してもらえると、現場で防げるトラブルはかなり減ると感じています。
おまけ
酸化マグネシウム以外の「ボトルの中で性質を大きく変えやすい子」をご紹介します。

💊鉄剤
レボドパ製剤との組み合わせで吸収低下・配合変化が知られています。
酸化マグネシウム+鉄剤+レボドパはアウトに近い組み合わせ。
キレート形成や沈殿で、
「なんだか砂っぽい沈殿が増える」
「底がざラつく」
といった見た目になりやすいです。
💊大量の粉薬・液剤
散剤・ドライシロップを大量に一緒に入れると、それだけでお湯の温度が下がって、錠剤・カプセルの崩壊が進みにくくなると指摘されています。
ボトル全体が『ねっとりしたとろみ飲料』状態になり、細いチューブでの通過性が落ちてしまうパターンです。
💊塩化ナトリウム
様々なマニュアルで
「塩化ナトリウムと混合すると懸濁し難くなる場合があるので、別懸濁を推奨」と書かれている例があります。
塩析(塩の存在でコロイドが凝集して沈殿する現象)によって、透明だったものが急に濁ったり、粒が大きくなって沈みやすくなるので要注意です。
第二回の多職種協働記事を一緒に作ってくれた、イロドリの詩さんの記事はこちら✨
看護師目線で、とっても読みやすいよ!
ぜひ読んでみて😊☘️
そして、こちら✨
青かぷ@薬剤師さんが、簡易懸濁可否チェッカーを作って下さってます!
いちいち本を調べるのってホント大変💦
このチェッカーがあることで、業務が楽になるかもしれません😍
私も愛用中なので、皆さん覗きに行ってみてください✨
最後に、これだけ!

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