まだ、わたしの中で濡れていた。──蠍座のリリスが動く前の夜
椅子に座ったまま、
わたしの奥がじんわり湿っているのに気づいて、
目を伏せた。
誰にも触れられていない。
誰にも、言っていない。
でも、わたしのからだの奥では、すでに何かが始まっていた。
夜が深まるほどに、
膝のあいだから、熱が立ちのぼってくる。
それは、思い出でもない。
誰かの手でもない。
たぶん、星のせい。
蠍座のリリスが、
ぎりぎりの場所にとどまっている。
もうすぐ射手座に抜けてしまう、その手前で。
なにかが奥でうごめいて、静かに、ぬるく滲み出してくる。
感じてることは、知られたくない。
でも、知られてしまいたい。
黙っていたい。
でも、バレたらバレたで、もう止まらない気がしている。
そんな矛盾の中で、
わたしはじっと、脚を閉じたまま濡れていた。
その感覚を、名前にしたくなかった。
欲とか、寂しさとか、そういうふうに呼んでしまえば、
たぶん、崩れてしまうから。
わたしは今、
快感の手前で、祈るように黙っていたいだけ。
「リリスが動くまで、
まだ、わたしの中で濡れていたい。」
(つづく)
──ほしのりりす
つづきは、10/21 21時公開予定
👉 よるのショートエッセイ 第十夜
🔗 星としてのリリスについて知りたい方へ
この夜、わたしの奥でざわめいていた星──
それが「リリス」です。
詳しいことはこちらで書いています。
感じてくれて、ありがとうございます。
よるのショートエッセイシリーズは、
ことばだけで、濡れる夜がある。
あなたの「感じるところ」に、そっとふれていく連作です。
わたしのことばが、
からだのどこかに残ったなら。
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わたしはまた、ひらいて書ける気がします。