見出し画像

ベトナム・ホーチミン旅行記 3日目後編

前回:3日目前編はこちら



食べすぎで動けなくなる

地下を走っていた電車は、タオディエンに到着するころには高架線を進んでいた。
駅を出て、昼食を取るつもりの店まで歩き始める。距離は15分ほど。
タオディエンは中心部よりかは落ち着いたエリアと想像していたのだが、歩き始めてみて早々に裏切られる。
ここでもバイクの大群が行き交い、絶え間なくエンジン音が耳に入ってくる。旅の高揚が薄れてくると、この騒がしさに少々疲れを感じる。
ともあれ、このあと待っているランチを頼りに、気持ちを奮い立たせていく。

Pizza 4P's

急進決めたタオディエン行きで、昼食に選んだのはピザ。
街中に建つ教会しかり、バインミーしかり、ベトナムはフランスをはじめとしたヨーロッパ文化の影響を色濃く受けている。そのため洋食が安くて美味しいらしい。
中でもこちらの店は抜群の知名度を誇る。ホーチミン市内に複数店舗を構える人気店。なんだったら日本の虎ノ門も出店している。

当初の目的である、現地でないとなかなか味わえない料理からは離れる。ただ、おなかの調子が万全ではないことに加え、昨日から続く東南アジアの味に少し飽きもあった。
ロコミによると、週末のランチタイムは予約なしだと待つとのこと。
しかし、今日は月曜日。とにかく飛び込みで行ってみることに。

入口でフロントスタッフの男性が迎えてくれた。
「こんにちは。1人なんですが、入れますか? 予約はしていなくて」
「ご予約なしですね。こちらで少しお待ちください」
インカムで店内スタッフと連絡を取り始める。
さすが有名店の対応だと感心していると、すぐに確認がとれた様子。
「中へどうぞ、入り口のスタッフがご案内します」
やはり平日の昼間のおかげで、席には余裕があったようだ。緑のあふれる中庭を抜け、建物の入口へ行く。
「こんにちは。こちらへどうぞ」
別のスタッフに引き継がれ、案内されたのは1階の窓際の席。
座るやいなや、また別の女性店員がメニューを持ってきてくれた。聞き取りやすい英語で丁寧にメニューの説明をしてくれる。
メニューはピザだけでなく、バスタやサラダ、サイドディッシュなど盛りだくさん。
どれも魅力的で悩ましいが、「recomend」の文字がついている料理から選択することにした。
「このイチジクとチーズのピザと、カニのクリームパスタ、それからビールをお願いします」
気になったものを一通り頼んでみるが、オーダーを受けていた店員が少し困った表情を浮かべる。
「ピザとパスタ両方だと、お一人では少し多いかもしれません」
「あー、そうですか…」
「もしよろしければ、パスタをハーフサイズにできますが、そちらでいかがでしょうか?」
「ぜひ! それでお願いします!」
「ハーフサイズだとカニの甲羅は盛り付けされないのですが、大丈夫でしょうか?」
「OK! 全く問題ないです!」
シグネチャーメニューのカニのパスタは、メニューの写真にもある通り、普通ならカニの甲羅付きで提供される。
きっと写真映えを気にする人もいるのだろう。そんな細かな部分まで確認してくれるあたりにも、ホスピタリティを感じた。

Hazy IPAは至高

しばらくして、まずはビールが運ばれてくる。
すると注文していない品が、カゴに入って一緒に提供された。
「ピザ生地を焼いたものです、よければこちらのはちみつをかけて召し上がってください」
ビールは好みのIPAをチョイス。ホーチミンのブルワリーHeart of Darkness Brewaryと4P’sがコラボした限定のクラフトビールである。
昨晩飲んだローカルビールとはやはり一味も二味も違う。しっかりとした香りと苦味があってうまい。
焼かれたピザ生地も一緒にいただく。表面は香ばしく、中はふんわり柔らかな食感。これからやってくるピザにも期待が高まった。

ピザもパスタも味わう贅沢ランチ

ほどなくして、待望のピザとパスタが到着した。
まずはピザから。イチジクの自然な甘さに、ハムとチーズの塩味がベストマッチ。ピンクペッパーとバルサミコ酢がアクセントでよい。
カニのクリームパスタも濃厚で、しっかりとカニの風味が感じられる。
どちらも味が抜群で、どんどんと食べ進めていく。

しかし、パスタを食べ終え、ピザが半分を回ったあたりから、急激にペースダウン。
もちもちとした生地が胃の中で膨れているのがわかる。
こんなに美味しいピザを残すまいと、時間をかけつつ攻略していくものの、危険信号が点り始める。
思えば、前回のルアンパバーン一人旅でも、食べすぎで苦しむタイミングがあった。食への欲求に対して、どうにも胃袋の容量が追いつかない。

本当にギリギリまで頑張ったものの、最後はラスト1ピースの耳だけを残してしまった。これ以上は腹がはち切れそうだった。
少し残念な気持ちを抱えつつ会計を済ませると、店員さんが声をかけてくれた。
「料理はいかがでしたか?」
「とても美味しかったです! 全て最高でした」
「それはよかったです。これから雨模様なので、気をつけてお帰りくださいね」
「ありがとうございます!」
最後まで、気持ちの良い接客をしてくれた。
まだまだ食べたいメニューがいくつもあったので、いずれは複数人で再訪して楽しみたい。


店を出たものの、満腹でまともに歩けそうにない。ひとまず落ち着ける場所を探すことにした。
とはいえ、これ以上何かを体内に入れることができないので、カフェに入る気にもなれない。
Google Mapを見たところ、駅の近くにショッピングモールがあった。きっとここならベンチがあるだろうし、いざとなればトイレにも駆け込める。
ランチを取るために歩いてきた道をゆっくりと引き返していく。
そのうちに空は暗くなり、ものの数分で大粒の雨が降り始めた。ここで雨季のホーチミンらしい天気にあたってしまった。
折り畳み傘で凌ぎながら、なんとか目的地まで辿り着いた。

そして、ここから1時間は、特筆すべきことはない。
チャッピーに食べすぎた時の対処法を尋ねたりしながら、ベンチでモールを行き交う現地の人たちをぼんやり眺めていた。
幸い調子がそれ以上悪化することもなく、時間をかけて消化を待つ。
そのうちに雨は弱まり、日差しが戻ってきた。重たかった身体も多少ましになってきたので、ゆるゆると街歩きを再開することにした。

まず向かったのは、1日目にカフェ利用したCộng Cà Phêのタオディエン支店。
こちらでインスタントのココナッツコーヒーを買いたかったのだ。お湯で溶かせば、日本でもあの味を手軽に味わうことができる。
スーパーにも似たようなインスタントコーヒーは並んでいるけれど、せっかくなら少し特別感のあるものを選びたいと思い、わざわざ再び店に足を運んだ。
店内を見ていると、インスタントのジャスミンティーラテもあったので、そちらも一緒に購入してみた。


Maison Marou Flagship Thao Dien

続いては、ベトナムを代表するチョコレートブランドのショップ。
最初に知ったのは、ベトナムへ行った知人からのおみやげ。その後、日本の催事などで見かけては買うようになり、今回のホーチミン旅では絶対に買って帰りたいと思っていた。
午前中はお腹の調子が悪くて断念したが、タオディエンエリアにも店舗があったので、こちらへ。
ただ、食べすぎから回復していなかったので、カフェ利用は泣く泣く見送る。それでも気になるチョコレートだけは買って帰りたい。

店内には定番のチョコレートバーをはじめ、日本では見たことのないフレーバー、タブレット、ボンボンなどがずらりと並んでいた。
「こんにちは。何かお探しですか?」
迷っていると、ここでも店員の方が声をかけてくれたので、あれこれ尋ねてみることにする。
「チョコレートバーを買いたいと思ってるんです」
「OK。 Marouのチョコレートを食べたことはありますか?」
「はい、日本で買ったことがあります。ただ、せっかくベトナムに来たので珍しいものを買って帰りたいんです」
拙い英語ながら、なんとか意図を伝える。
「なるほど。それでしたら、このあたりがおすすめですよ」
紹介してくれたのは、ドライフルーツやナッツを合わせたチョコレート。間違いなく美味しいだろう。
ただ、いつもの如く、旅先では変わったものが買いたい欲が芽生える。
そんなこちらの視線に気づいたのか、別の商品も教えてくれた。
「これらのチョコレートバーもおすすめです。ベトナム各地の名物をインスパイアしたチョコレートです」
「これは、フォーですか?」
中でも異彩を放つ一品に心を動かされていた。
「はい、こちらはハノイをイメージしたチョコレートです。ハノイはフォーが名物なので、そのスパイスを練り込んでいるんですよ」
フォー味のチョコレートとは、ベトナムならではで珍しい。まさに求めていたものにぴったりだった。
もう購入する決意は固まっていたが、試食もすすめていただいた。
確かにフォーを思わせる風味が口に広がる。これまで食べたことがない味わい。独特で面白い、なのに美味しい。
この地域ごとの特色を表現したシリーズは全部で6種類ほどあり、その中から気になったものをいくつか選んで購入した。


買い物を終え、再びショッピングモールへ退避。
お腹が落ち着いてきたら、少し水分を摂ると良いとチャッピーがアドバイスしてくれたので、飲み物を買える場所を探す。
ちょうどモール内に無印良品が入っていたので、立ち寄ってみることにした。こういう時、安心感のある日本クオリティについ頼りたくなる。
店内にはベトナム限定のお菓子やジャムも並んでおり、おみやげとして追加しつつ、目的のペットボトルのお茶を購入。
ベンチに腰掛けてゆっくり飲みながら休憩した。


ひと息つき、そろそろ帰ろうかとモールの出口へ向かう。
ところが外はまるでバケツをひっくり返したような豪雨。しばらく止みそうな気配もない。
仕方なく、傘を差してメトロ駅まで駆け抜けた。

その後メトロに揺られ、ベンタイン駅まで戻ってきても、雨脚は衰えない。
雨で降り込められて、地上へと出る階段に集う人たち。Grabを呼ぼうとしているようだが、突然の雨で道路はひどい渋滞。なかなかつかまらないようだった。
自分も傘は持っているものの、ホテルまでは15分ほどある。土砂降りの中は歩きたくない。

それでも外に続く階段で30分ほど粘っていると、雨が小ぶりになってきた。ここしかないと意を決してホテルへ向かう。
ベンタイン市場周辺は交通量が多く、さらに雨で道路状況も混沌としていて、この時が道路を横断するのに一番苦労した。流れを見極めながら、強い気持ちで乗り越えた。
なんとか無事にホテルに着いたのちは、事前に予約していた空港行きのGrabがやってくる時間まで、ロビーで待たせてもらった。
雨による渋滞がひどかったので、先に手配しておいて正解だった。

振り返ってみると、最終日は雨が降っている時間が多く、体調がすぐれず屋内でのんびりしていたのが、結果的にちょうどよかったのかもしれない。


旅の終わり

雨の中をやってきたGrabに揺られ、タンソンニャット空港にはフライトの3時間半ほど前に到着した。
空港自体はそこまで大きくなく、正直なところイミグレーション前の一般エリアでは特にやることもなかった。
早めに出国審査を済ませ、そのままラウンジへ向かう。

まずは温かい飲み物で胃を落ち着かせながら、果物やデザートといった軽めのものを少しずついただく。

ゆっくりとお腹を慣らしていく

果物コーナーにはドラゴンフルーツと、大好きなパッションフルーツがあった。南国らしいラインナップで嬉しい。
奥の黒いゼリーは、確か仙草ゼリーだった。黒糖に似た風味のシロップに浸されていて、やさしい甘味。そして、プリンは安定のおいしさである。

その後、さらに1時間ほど過ごしていると、胃も空いてきた。
せっかくなので搭乗前にもうひとつくらいベトナムらしいものを食べておきたい。

旅の締めにフォーをいただいた

選んだのはフォー。丼に盛られた麺と具材が置かれており、そこへセルフで寸胴から熱いスープを注いで仕上げるスタイルだった。
サイズは小ぶりながら基本の具材はしっかり押さえられていた。調味料も一通り置かれていたので、好みに調整することができる。ここでも、ライムをしっかり入れてさせてもらった。

帰りのフライトでは、疲れが一気に押し寄せて、離陸してほどなく眠りに落ちていた。
道中ほとんど目を覚ますこともなく、気づけば日本へ到着していた。

今回のホーチミン旅は、急に思い立って決めた弾丸一人旅だった。限られた時間の中に、とにかく詰め込めるだけ詰め込んだ。そのぶん楽しさも濃密だったし、気合いだけでは乗り切れない辛さも感じた。

そして毎回旅するごとにGoogle Mapや翻訳などのありがたさは増していく。
一方で拙いながらも現地の人と直接やり取りする大切さ、楽しさも感じる。
ポジティブな気持ちを伝えたときの笑顔や、思いが共有できた時の空気感は、言語の壁を超えてどこでも共通なのだと思わされることが最近多い。
思い切りを持つことで、旅の面白さをますます感じられるようになっている。
日常から離れた空間に身を置くことで、自分の世界も広がっていく感覚。

今回が2026年3カ国目の旅となった。
たくさん海外を旅をしたい、という年初の目標を満たすためだけではないが、縁あって次の行き先もほぼほぼ決まった。
これから旅路を組み立てていこうと、ワクワクしているところだ。
数ヶ月後には再び旅行記を綴っていければと思っているので、また読んでいただけると嬉しい。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
また、次の国で。


前回のバンコク旅の記録はこちらから


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集