見出し画像

【熔ける前の井川意高物語】#10:プランテーションプラットフォーム!

井川意高氏は現在、インフルエンサーとして活躍されていますが、かつては大王製紙の社長を務め、カジノで106億円もの巨額を失い、特別背任の罪で懲役4年の実刑判決を受けたことで広く知られています。

一方で、その父であり、「大王製紙の中興の祖」と称されながらも、その功績が十分に世に知られていないのが井川高雄氏です。

井川親子と共に仕事をするという貴重な経験を持つ私だからこそ、彼らとの思い出を振り返りながら、なぜあのような事件が起きたのかについて、冷静に考察してみたいと思います。


🌳親子の信念:森林の未来を信じる

井川高雄氏と井川意高氏が森林の持つ多面的な機能にどれほど意識を向け、事業植林への投資を決断したのかは定かではありません。

しかし、毎年10億円を植林に投資しても、10年後に累積100億円に達するまで収穫がないノーリターンの植林投資の決断には、未来を見据えた先を読む能力が必要であったことだけは確かです。

大規模な事業植林は、短期的な利益を追求する思考からは生まれない決断なのです。

林野庁HPより「森林の有する多面的機能」を抜粋

日本の林野庁が「森林の有する多面的機能」を紹介しています。
それによれば、森林には、物質生産(製材や製紙原料の木材チップ生産等)の機能だけでなく、次の機能があるとしています。
例えば、地球環境保全(CO2吸収効果等)、水源涵養(水質浄化、洪水緩和等)、生物多様性保全土砂災害防止快適環境形成保健・レクリエーション文化といった多様な機能が森林には備わっています。

しかし、これまでは、こうした重要な機能が経済的価値として評価されず、森林は軽視されてきました。その結果が気候変動問題にも繋がっています。

とはいえ、2050年の未来においては、事業植林で所有している森林の経済価値が高く評価されている可能性もあります。

インターネット社会という未来やAIの未来を信じて投資を行ってきたソフトバンクの孫正義氏のような経営者でなければ見えないITの未来があるようにカリスマ井川高雄・意高親子には見えていた未来があったのでしょう。

短期収益のことばかりを考える経営者には「森林」が持つ未来の価値が原料の安定調達のための「物(資産)」にしか見えなくても、先が見える経営者には、気候変動問題や生物多様性にとっても重要な価値を生む「自然資本」として、将来その価値が増していくことが見えていたのかもしれません。

🌳共感と競争のライバルからの一言

ライバルであり、尊敬している大先輩でもある王子ホールディングス(王子HD)は、最近になって森林の価値を前面に出して未来のビジネスの選択と集中に取り組んでいることを情報開示し始めました。

昔から日本一の土地持ちさん(森林保有)である王子HDは、未来の競争力の源泉を森林と位置付けた経営戦略を取っています。

四半世紀も前のことになりましたが、当時の王子製紙原料部門の部長さんから「上家さん、プランテーションプラットフォーム構想、ネーミングも含めて今回は一本取られました。」とタスマニアでのジョイントベンチャー植林(以下JV植林)にお褒めの言葉を掛けられたことがありました。

構想段階から井川意高氏の助言をうけ、井川高雄氏が即断即決してくれた豪州での植林は、新たな事業植林の「型」になるハズでした。

しかし、残念ながら2000年に設立したプランテーションプラットフォーム オブ タスマニア Pty Ltd.(PPT)を、資源部長を再度担当した私が2015年に終了させました。

こんな役割のめぐり合わせは偶然ではなく、井川高雄氏によるジョブローテーションという人材育成法の必然だったのかもしれません。

私のキャリアの中で、様々な職務を経験しました。その中でも植林を担当していた外材部長時代が一番楽しかったかもしれません。

ちなみに9.16事件の際には、ハワイ(マウイ島)に駐在していました。

①電算室/情報システム部(担当者)1984.04~1990.12(6年09か月)

②シアトル出張所(担当者)1991.01~1991.12 (1年)

③シアトル/オレゴン出張所(所長)1992.01~1994.12(3年)

④外材部外材課(課長)1995.01~1998.12(3年)

外材部(部長)1999.01~2002.06(3年06か月)

⑥三島工場労務部(部長)2002.07~2005.06(3年)

⑦営業推進部(部長) 2005.07~2006.06(1年)

⑧物流部/物流企画部(部長)2006.07~2009.12(3年06か月)

エリエールハワイ(現地代表)2010.01~2013.03(3年03か月)

⑩海外事業部(部長) 2013.04~2014.06(1年03か月)

⑪資源部(部長)2014.07~2015.06(1年)

⑫情報システム部/IT企画部(部長)2015.07~2017.11(2年05か月)

⑬IT企画本部(本部長)2017.12~2019.10(1年11か月)

⑭CSR部 (参与/部長)・2019.11~2020.03(0年05か月)

⑮CSR部/サステナビリティ推進部(参事)2020.04~2025.03(5年00か月)

ジョブローテーションでの人材育成例:私の職歴

🌳環境保護団体との対話の重要性

タスマニア森林公社及びBORAL社とのJV植林プロジェクトは、大王製紙が環境保護団体との対話の際に高く評価される要因にもなりました。

環境保護団体はタスマニアの自然林保護に熱心でした。そのタスマニアにおいて保護林を守りながら、いかに環境と調和した植林活動を行っているのかを示すためには、このJV植林プロジェクトが重要な役割を果たしました。

タスマニアの自然林は環境保護団体グリーンピースにとって保護価値の高い守らなければならない森林でした。

そんな森林を伐採して、木材チップに加工して原料として輸入している日本の製紙会社はけしからんという抗議行動が2000年代に広がっていきました。

2004年には、王子製紙(当時)や日本製紙の本社前でグリーンピースが抗議活動を行い「原生林破壊やめてください!」のプラカードを掲げてアピールされたことがありました。

大王製紙がグリーンピースのターゲットにならなかったのは、自らがグリーンピースジャパンのオフィスを訪れて、我々が環境にも配慮した事業活動を行っていることをプランテーションプラットフォーム構想を始めとした海外での植林活動やFSC認証へチャレンジしている原料調達方針についての対話を行ったからでした。

これは、ステークホルダーエンゲージメントの先駆けでした。
受け身ではなく自ら乗り込んで対話するという自負心を植え付けてくれたのは、植林投資の決断ができる井川親子の経営哲学の教えがあったからなのかもしれません。

一方、豪州のガンズ社は、当社とは真反対の姿勢を取り、環境保護団体との対話ではなく対決を選びました。その対決姿勢から環境保護団体の標的になっていきました。

そのガンズ社は、タスマニアのチップ輸出事業者を次々とM&Aし、大王製紙のチップサプライヤーでありJV植林のビジネスパートナーでもあったボラル社までをもM&Aしてしまいました。

これによってタスマニアでのJV植林は、ガンズ社をパートナーにしたジョイントベンチャーに変わったのです。環境保護団体の矛先が大王製紙にも向かうリスクが高まり、大王製紙の顧客等を加えて最大7〜8社の出資を受けていたPPT社のJV植林事業は行き詰っていきました。

タスマニア森林公社もこの状況を理解し、JV解消に協力してくれました。それまでの投資資金の回収に関して、PPT社に所有権がある植林木の早期現金化に協力的な対応案を示してくれたのです。

人の縁とは不思議なもので、タスマニア森林公社でJV植林を担当していたマネジャーは、かつて大王製紙が雇用していた英語の先生(当社社員への英語教育を担当し、外材部にも所属していた時期があった)だったのです。

このJV植林事業は、毎年500haの植林を15年間繰り返し、最後の15年目に植林したものを30年目に収穫するという7,500haの植林-伐採ー再植林をローテーションで繰り返す計画の事業でした。


次回はJV植林のビジネスモデルがどのようなものだったのかを解説し、井川意高氏が現場重視の経営者だったことを振り返ってみます。

つづきを読む
第1話に戻る

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
よろしかったら「スキ」🤍ポッチンをお願いします😊😊
コメントなんかいただけたら、飛び上がって喜んじゃいます😂😂

じーじの投稿のアーカイブです👇

🌳じーじと孫娘との思い出づくりのシリーズ🌳
【じーじのボヤキ】

🌳
じーじの初期投稿3点セット+時代の振り返りシリーズ🌳
その時あなたは何してた?(1985年~2020年)
【日米成長力格差】~日本は絶対に復活するんだ~
【気候変動問題の盲点】~森林大国の日本だからこそできること~
【みんなで地球を助けよう】~脱炭素社会はZ世代のあなたが創る~

🌳
じーじが中央官庁のHP等から情報をピックアップしたシリーズ🌳
【じーじは見た!】サイトマップ第1弾
【じーじは見た!】サイトマップ第2弾

🌳
じーじの時事川柳シリーズ🌳
【note川柳】

🌳
じーじが感激した話のシリーズ🌳
【じーじ感激!】

😄
Z世代応援団のじーじをよろしくお願いします😄
Z世代応援団のじーじの自己紹介⁉

その他は
【じーじのもろもろ】のマガジンあるいは【じーじの準備】のマガジンをごらんください。



いいなと思ったら応援しよう!