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上司の機嫌で一日が決まってしまう日に、見直したいこと

朝、上司にあいさつをしたら、返事が短かった。

表情もいつもより険しい。
机に物を置く音も、少し強く聞こえる。

まだ、自分が何かを言われたわけではありません。

それでも、その瞬間から一日の過ごし方が左右されてしまうことがあります。

聞きたいことがあっても、今はやめておく。
報告するときは、いつも以上に言葉を選ぶ。

相手が近くを通るたびに、表情を確かめる。
頼まれていないことまで、先回りして済ませておく。

仕事が終わる頃には、何か大きな問題が起きたわけでもないのに、ぐったり疲れている。

それでも相手が不機嫌そうなままだと、

「今日の対応、何かまずかったかな」
「私がもっと気を利かせればよかったのかもしれない」

と、帰宅後まで考えてしまう。

不機嫌な人がいると緊張する。

それだけではなく、その人の機嫌によって、自分の行動や、一日の自分への評価まで変わってしまう。

この記事は、そんな日に、自分の中で何が起きていたのかを振り返って整理するための記事です。

苦しいのは、緊張することだけではありません

相手の機嫌の変化を察知すると、心や体がすぐに身構えてしまうことがあります。

ただ、不機嫌な人に影響されてしまうのは、緊張そのものだけではありません。

例えば、仕事をしながらも、相手の状態を確認し続けること。
自分が何をすべきかより、相手がどう反応するかを優先してしまうこと。

そして一日の終わりに、自分の仕事ではなく、相手の表情を見て、

「今日は大丈夫だった」
「今日はうまくできなかった」

と、自分自身の一日の振る舞いを採点してしまうこと。不機嫌な人の影響は、こうしたところにまで及ぶことがあります。

もちろん、職場では周囲への配慮も必要です。
相手の様子を見て、今は声をかけるタイミングではないと判断することが、適切な場面もあります。

なので、相手の機嫌に気づくことそのものが問題なのではありません。
相手の機嫌が、あなた自身の行動や振る舞い方を決める、強力な判断基準になってしまうことが問題なのです。

自分を見るのは、また反省するためではありません

ここから少し、不機嫌な人を前にしたとき、自分の中で何が起きているのかを見ていきましょう。

ただし、これは、

「あなたが気にしすぎている」
「もっと自分を変えた方がよい」

と指摘したり責めたりするためのものではありません。
ましてや、あなたの悪いところを探すためでもありません。

相手の機嫌に気づいたあと、それがどのようにして、自分の注意や行動の基準に取って代わってしまったのかを客観的に理解するためです。

相手の機嫌が、一日の基準になるまで

相手の機嫌に振り回されているとき、心の中では、一つのことだけが起きているわけではありません。

いくつかの動きがつながり、その結果自分の一日の振る舞いや判断の軸が、少しずつ相手へ移っていくことがあります。

相手の状態を見逃さないようにする

返事の短さ、表情、ため息、物音。

そうした相手の変化を察知すると、仕事をしていても、注意の一部が相手に向き続けます。

パソコンの画面を見ていても、意識は相手の声を聞いている。
同僚と話しているつもりでも、視界の一部で上司の表情を確かめている。

目の前の仕事に取り組みながら、別のところでは、ずっと相手の状態を確認しているのです。

相手が近くにいるだけで疲れてしまうときには、目の前の仕事に加えて、こうした確認作業にも力を使っているのかもしれません。

まだ起きていないことに備える

さらに、相手の機嫌が過度に気になると、次に起きることを予測し始めます。

質問したら、嫌な顔をされるかもしれない。
報告したら、強い口調で返されるかもしれない。
何か見落としがあって、あとから責められるかもしれない。

まだ何も起きていないうちから、言葉や行動を調整し始めようとします。
これは、言い換えれば問題や受ける負担を避けるために、心や体が準備しているともいえます。

ただ、その準備状態が一日中続くと、本来は自分の仕事にだけ向ければよかったエネルギーや注意力が、少しずつ消耗していきます。

相手の反応を基準に、自分の行動を変える

そしてそんなまわりへの注意…警戒状態が続くと、

「この仕事には何が必要か」

よりも、

「この人を不機嫌にしないためには、どうすればよいか」

を基準に行動しやすくなってしまうのです。

そのため、本来は確認した方がよいことを後回しにしたり、伝える必要のある意見を飲み込んだり、断ってもよい依頼を引き受けたり、必要以上に謝ったりしてしまう。

そうすることで、その場では相手を刺激せずに済むこともあります。

けれどその結果、よけいに仕事が増えたり、確認できない不安が残ったり、自分の考えを出せなかった苦しさが残ったりしてしまいます。

それでもあとから、

「自分でそうしたのだから」
「ちゃんと言えなかった自分が悪い」

と、自分だけを責めてしまうことも、よくあることなのです。

最後には、相手の表情で一日を評価する

そのようにして、なんとか一日を乗り切ったあと。
不機嫌な人のことがどうしても気になってしまった日は、自分が何を考え、どんな仕事をしたかより、

「相手を怒らせなかったか」
「最後には機嫌が戻ったか」

が、一日の評価基準になりやすくなることもあるでしょう。

これも、判断基準や判断の軸があなたのことではなく、相手のことに移ってしまったから、生じることです。

相手の機嫌がよくなれば、ホッとする。
不機嫌そうなままなら、「今日の私はうまくできなかった」と感じる。

こうして、自分の一日の出来不出来を決める視点まで、相手の機嫌に左右されてしまうことがあるのです。

本来の仕事とは別に、「見えない仕事」をしている

人のお話しを聴く仕事をしていますと、「全然、大したことはしてないはずなんですけど…」と、本人にとっては理由がわからない強い疲労感を口にされる方とお会いすることがあります。

その方のお話しを整理しながら聴いてみると、その一日には、

  • 相手の表情を読むこと。

  • 声をかけるタイミングを測ること。

  • 怒らせそうな言葉を避けること。

  • 場の空気が悪くならないように振る舞うこと。

  • 相手が不機嫌な理由を考え続けること。

など、そうした本来の業務表には載らない「見えない仕事」がたくさん含まれていた、なんていうことがあります。

何も起きなかった一日であっても、何もしていなかったわけではありません。
問題が起きないように、心の中でずっと働き続けていたのかもしれないのです。

だから、帰宅後にどっと疲れたとしても、それをすぐにご自身の体力のなさのせいにしたり、気にしすぎだと無理やり自分に言い聞かせたりする必要はありません。

どこまでが、自分の役割なのか

相手が不機嫌そうなときには「自分にも何か原因があるのではないか」など、つい自分のことについて考えることがあります。

確かに、実際にあなたの報告に不足があったり、説明が足りなかったりする場合もあるでしょう。そんなときには適切にご自身の行動を確認し、必要な修正や説明をすることは大切です。

ただし、そこで考える必要があるのは、「自分に責任があるか、ないか」という二択だけではありません。

あなたのこと以外から生じる責任も、もちろんあるのです。

あなたが確認すること

例えば自分の仕事に不足やミスがあったか。
必要な説明や修正が残っているか。

ここは、ご自身で確認できる部分です。
必要なことがあれば、仕事として対応します。

相手の側から生じること

不満をどのように伝えるか。
怒りをどのような態度で表すか。
自分の感情を周囲にどう扱うか。

これらは基本的には相手の側に残る部分です。
相手の側から生じる責任です。

あなたの行動が相手の感情に影響する場合は、もちろんあります。
ですが、影響を与えた可能性があることと、相手の感情や態度のすべてにあなたが責任を負うことは、同じではありません。

多くの場合、必要な説明や謝罪をしたあとも相手が不機嫌でいるなら、その機嫌が戻るまであなたが働きかけ続けなければならない…なんてことはないのです。

職場として扱うこと

さらには、
相手がすぐに怒鳴る。
話しかけても無視を続ける。
職場の物に当たる。
特定の人を繰り返し強く責める。

その結果、業務に必要な質問や報告ができず、明らかに仕事に支障が出ている。

もしこのような状態になっていたら、それは個人の受け止め方だけで解決しようとする問題ではありません。

安心して働ける環境を整えることは、管理職や組織として対応すべき問題です。

相手の機嫌に振り回されないとは、どんな態度も我慢して受け流すことではありません。
自分だけで扱うものと、相手や組織へ戻すものを分けることでもあります。

一つの場面を、別の角度から見てみる

少し、具体的にみていきましょう。

例えば上司へ報告をしたあと、その上司が大きなため息をつき、短くぞんざいな返事をしたとします。

その瞬間、

「報告の仕方が悪かった」
「私のせいで怒っている」

と感じてしまうかもしれません。

そして相手の機嫌を直すために、本来、する必要のないことまでしようとしてしまうこともあるでしょう。

このときあなたが確認できるのは、報告内容に不足がなかったか、報告が適切にできたかどうか、という点です。

不足があったなら、追加で伝える。
うまく伝わらなかったなら、伝え方を工夫する。
そこまでが、あなたの仕事として必要な部分です。

一方で、それらが適切に行えていたのであれば、それ以上の上司の不機嫌さは上司自身が向き合うべきものです。

何に不満を感じているのかを、上役として適切に相手に伝えること。
不満があっても、周囲を萎縮させない形で扱うこと。

それらは上司自身が考えるべきことです。ため息や態度からそこまで読み取り、あなたが引き受ける必要はありません。

これは、「自分には何の責任もない」とあなたが開き直る…という話ではありません。

ただ、「全部自分の責任だから、相手の機嫌が直るまで何とかしなければならない」という結論でもないのです。

自分の判断に戻るために

まとめになりますが、
相手の機嫌がどうしても気になってしまうとき、その考えをすぐに消す必要はありません。
何も気にしない人になろうと、無理に努力しなくてもいいのです。

ただ、相手の機嫌を察知したあと、自分の行動や一日の評価まで相手を軸にしていなかったかは、見直すことができます。

「今日、自分は本来すべき仕事だけではなく、相手のどんなことまで引き受けようとしてしまっていただろう…?」

もしかすると、相手の気持ちを読み切る役割だったかもしれません。

相手を怒らせない役割。
職場の空気を保つ役割。

あるいは、相手の機嫌を元に戻そうとする役割だったかもしれません。

すぐにはっきりと、答えを出すことは難しいかもしれません。

ただ、自分が引き受けていた「見えない仕事」に気づくだけでも、「この場面で、本当に必要なのは何だろう」と、自分の仕事や判断へ戻る余地が生まれることがあります。

仕事上、必要な確認があるなら、確認する。
あなたに起因する明らかな問題が見当たらないなら、目の前の仕事へ戻る。
威圧的な態度が続き、仕事に支障が出ているなら、一人で抱えず相談する。

このようにして、相手の機嫌を中心に、あなたの一日を組み立てなくてもよいのです。

自分の責任を果たすことと、相手の感情まで管理することは同じではありません。

繰り返しになりますが、責任を分けて見るのは、自分の責任をなくすためではありません。

自分が引き受けること、相手が向き合うべきこと、職場として扱うことを、それぞれを適切な場所へ戻すのです。

不機嫌な人の影響を受けてしまった一日の終わり、相手がどうだったか、相手が何をしていたかを中心に、今日の自分を評価しなくてもいいのです。

相手の機嫌や態度とは別に、その一日の中に確かにあった、あなたが考え、判断し、仕事をしていた時間。

むしろ、そのような『あなたがしたこと、あなたができたこと』を大切にして欲しいと思います。


相手の機嫌や事情を考えるうちに、自分が感じていたつらさまで後回しになってしまうことがあります。その点については、こちらの記事でもう少し具体的に扱っています。

▶︎ 「上司にも事情がある」と考えるほど、自分のつらさを後回しにしてしまうとき


このnote全体で大切にしている「責める前に、分けて見る」という考え方は、固定記事にもまとめていますので、興味がありましたら読んでみてください。

上司の一言が、家でも頭から離れないあなたへ

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