保健師に求められるスキルNo1の保健医療福祉計画の策定・実施・評価(前編)
宮崎県立看護大学の大学院で講義をした「保健医療福祉行政論」の保健医療福祉計画の策定・実施・評価の前編です。
議事録は、AIボイスレコーダーPlaudが作成したものをベースにしています。
1. 宮崎県が直面する医療の課題
1.1 人口動態の変化:深刻化する人口減少と高齢化
宮崎県の人口は毎年約7000人(2町が消滅する規模)のペースで減少し、2040年には89万人にまで落ち込むと予測されています。

人口は宮崎市に集中するか県外へ流出する傾向にあり、特に働き盛りである40代の医師が少ないという課題を抱えています。

同時に高齢化が進行し、約20年後には男性の最多人口層が65〜69歳となり、特に75歳以上の後期高齢者(女性)が著しく増加します。


1.2 医療ニーズの変化:高齢化に伴う疾病構造の変化と介護連携の必要性
高齢化により、医療ニーズは大きく変化します。
- 後期高齢者患者の特徴: 難聴や軽度の認知症、複数の疾患の併発、多剤服用(ポリファーマシー)といった問題を抱え、多くが介護保険サービスを利用しています。
- 医療への影響: 介護施設と急性期病院との間で入退院(肺炎、尿路感染症、骨折など)が繰り返される「介護施設⇔急性期病院」という新たな流れが主流になります。
- 疾病構造の変化: 脳血管疾患、心疾患、神経系疾患(特に認知症)、骨折の需要が増加する一方、がんや糖尿病は横ばい、分娩関連は減少すると予測されています。
1.3 医療提供体制の課題:医師不足と地域偏在
宮崎県は九州で唯一の「医師少数県」であり、医師数は増加傾向にあるものの、県内での偏在が深刻です。宮崎市に医師が集中する一方、日向・入郷、西都・児湯、西諸などの地域では医師が著しく不足しています。




この背景には、宮崎大学の医学生が卒業後に県外(特に東京)へ流出してしまう現状があります。
2. 第8次宮崎県医療計画と国の関連計画
2.1 第8次宮崎県医療計画の目指す方向性
- 基本理念: 県民が安全で質の高い医療を切れ目なく受けられる、持続可能な医療提供体制の実現。
- 重点方針:
- デジタル技術の活用: 医療における「飛び道具」として活用。
- 在宅医療・介護体制の充実。
- 地域を支える医療体制の構築と医療従事者の養成・確保。
- 予防・健康づくり、医薬品の安定供給。
- 地域医療構想: 医療計画の上位概念として、病院ごとの機能(高度急性期、急性期など)を評価し、役割分担を進めます。
現行の7つの二次医療圏は当面維持されますが、将来的には見直しが示唆されています。

2.2 医師確保に向けた県の取り組み
医師の県内定着と偏在是正のため、以下の施策を強力に推進しています。
- 地域枠の設置: 医学部に40人の地域枠を設け、卒業後、一定期間は医師少数区域での勤務を義務付けています。
- ビッグフォーによる共同宣言: 県教育長、宮崎大学長、県知事、県医師会長の4者が連携し、若手医師のキャリア形成支援や勤務環境改善を宣言しました。

- 医学生へのアプローチ: 学生時代からセミナー開催や修学資金貸与を通じて、県内定着を促しています。

- 地域医療支援機構の活動: 新聞広告や広報活動を通じて、宮崎で研修する医師を支援し、地域への定着を目指しています。

2.3 国の主要な関連計画との連携
医療計画は、厚生労働省以外の省庁が策定する計画とも連携することで、より質の高い取り組みが可能になります。

- 労働災害防止計画: 高齢者・女性の転倒予防や、福祉施設の腰痛対策(リフト導入支援など)に活用できます。
- 学校保健安全計画: 各学校で策定される計画。
- 環境基本計画: SDGsの理念を含み、自然環境を利用した健康増進(健康日本21)などと連携できます。
- 食育基本計画: 地産地消を推進し、宮崎県の豊かな食文化を活かした独自の食育を展開できます。
3. 計画推進と保健師の役割
3.1 計画推進のマネジメント手法:PDCAサイクルの活用と課題
計画を効果的に推進するには、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)のサイクルを回すPDCAサイクルが有効です。

しかし、過去の実績に基づく改善が中心となるため、急激な環境変化に対応しにくく、イノベーションを阻害するリスクもあります。

マンネリ化を打破し、常に新しいものを取り入れる姿勢が重要です。


少年ジャンプは、➀友情、②努力、➂勝利という読者の心を掴むための重要な要素を掲げて、大躍進しました。
しかし、同じような漫画が集まってしまい、マンネリで飽きられることになりました。
過剰適用をしてしまうというPDCAの弱点をよく理解して、サイクルを回すことが必要です。
3.2 地域を支える保健師の役割とスキル
保健師は、国の政策(特に予防分野)を実行する上で不可欠な存在であり、その活動の根幹は「地域」を対象とすることにあります。

- 求められる医師像と保健師の連携: 高齢化社会では、特定の臓器だけでなく患者を全人的に診る「総合診療医」が重要となります。

保健師は、医師に介護の状況などを伝え、より良い治療方針を提案する連携が求められます。

- 「地域愛」と行政スキル: 真の地域医療には、地域の歴史や文化を理解する「地域愛」と、計画を策定・実行・評価する「行政スキル(PDCA)」が不可欠です。

- 健康の社会的決定要因(SDH)とライフコースアプローチ: 健康は個人の生活習慣だけでなく、社会格差、教育、経済状況といった社会的要因(SDH)に大きく影響されます。

また、妊娠期から生涯にわたる経験の蓄積(健康資本)が健康状態を決定するという「ライフコースアプローチ」の視点が重要です。

- 災害医療の原則「CSCATTT」: 災害時には、指揮統制(Command)、安全(Safety)、連絡(Communication)、評価(Assessment)といった管理機能と、選別(Triage)、治療(Treatment)、搬送(Transport)という現場活動の原則を知ることが、組織的で冷静な対応に繋がります。


4. 未来に向けた展望とアクション
4.1 DXとテクノロジーの活用
デジタル技術(DX)は、今後の保健師活動における強力な武器となります。
スマートフォンの歩数計や食事記録アプリ、健康情報のサブスク配信などを活用することで、新たな保健指導が可能になります。
4.2 新しい保健指導の実践
技術の進展は、保健指導の内容も変化させます。
例えば、アニサキス対策では、従来の「わさびや酢は無効」という知識に加え、「-20℃で24時間以上の冷凍」や「アニサキスライト」といった具体的な予防法を伝えることで、地域での発生を減少させることができます。
4.3 これからの医療・保健専門職に求められること
これからの保健師や医療専門職は、自分ならではの強みを持つことが重要です。

「オンライン対応のプロ」「健康漫画の専門家」など、何か一つでも「必殺技」と呼べる得意分野を持つことで、自身の価値を高め、複雑多様化する国民のニーズに応えていくことができます。

保健師の仕事がどんなに広がろうとも、「地域」を対象として展開していくことは間違いありません。

