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地域に人が住む限り保健師の仕事はありますのでご心配いりませんと保健所の課長は言った

宮崎県立看護大学で保健師課程の大学院の学生に講義をしました。

講義の科目は、「保健医療福祉行政論」です。

保健師の国家試験の科目に指定されています。

全5回シリーズの第一回で、保健医療福祉行政の基本とオリエンテーションの話をしました。

2コマで160分の講義に対応するために、126枚のスライドを準備しましたが、70枚しか説明できませんでした。

スライド消化率54.7%で、半分ちょっとです。

「一方的な講義ではなく、受講者と共に創り上げる授業とする」とシラバスに書いたので、そのとおりにやったらこのような結果になりました。

次回からは、スライドの数を調整しようと思います。

今回、保健師についていろいろと勉強しました。

そんな中で一番しっくりきたのが、保健師業務要覧(第4版)です。

日本看護協会の保健師チームが編纂しております。

大学の研究者がつくったものよりも、実践的でした。

そこで講義のはじめに、以下のことを宣言しました。

中身は、保健師業務要覧の「はじめに」に載っている文章そのままです。

・「保健師」の活動は、その規模を問わず、「地域」を対象として展開する。

・取り組む健康問題は、多岐にわたり、近年ますます複雑多様になっている。

・変化する国民のニーズに対応し、保健・医療・福祉のあらゆる場に関わっている保健師は、毎年のように打ち出される新たな施策に携わっている。

・保健師の仕事がどんなに広がろうとも、「地域」を対象として展開するための基本的な共通事項が重要と考え、保健師学生が確認するべき内容を講義していく。

なぜ保健師の業務が拡大していくのか、他の看護職である助産師、看護師とはどこが違うのか、自分なりに考えてみました。

助産師は昔は「産婆」と言われ、医師とおなじくらい歴史が古い存在です。

看護師は、明治時代になって我が国に入院して治療を行う「病院」が登場して初めてできた職種です。 

それでも我が国では、約160年の歴史があります。

保健師は、昭和になって厚生省、保健所、国民健康保険(旧)が開始されたときに新設された看護職では「新参者」です。

分娩はもともと自宅でするものでしたので、助産師は地域ベースの職種で、医師から独立して助産院も運営することができました。

ところが、昭和40年代に自宅分娩から医療機関での「施設分娩」への転換が進み、助産師は医療機関に雇用される方が多くなってきました。

こうして地域から病院へのシフトが起きますが、学校における思春期教室などの業務もあります。

看護師はもともと病院の入院患者の療養上の世話や医師の診療の補助をするためにできた職種ですので、「病院」をベースとしていました。

ところが、患者の在宅医療指向が進み、訪問看護サービスが新設され、訪問看護ステーションも運営できるようになりました。

医師の指示が必要ですが、地域展開が行われるようになります。

こうした地域へのゆるやかなシフトはありますが病院での活動が主です。

保健師は設置当初から地域ベースで保健指導を展開する職種として制度設計されましたので、「地域」が主です。

保険者や企業も、もともと広義の地域です。

保健師の一義的な役割は、疾病などの健康障害の予防ですが、保健指導の対象の制限はなく、その活動も限度がありません。

傷病者の療養上の指導を行う場合は主治医の指示を受けることと、感染症蔓延のときなどに地就業地の保健所長の指示を受けたときはそれに従うことくらいです。

助産師と看護師のビジネスモデルは医療モデルであり、その対象と活動の内容はほぼほぼ医療に限定されます。

一方、保健師のビジネスモデルは地域モデルであり、行政施策の流れと地域社会のニーズに直結しています。

時代とともにその対象と内容が拡大してくのはある意味当然です。

助産師や看護師は、厚生省ができる前から存在しておりましたが、保健師は厚生省の発足と同時に生まれました。

医療モデルの助産師と看護師だけでは、国民の健康ニーズに対応できないことから、地域でフリーに保健指導を展開できる地域モデルの看護職として新たに設けられた職種です。

同時期にできた保健所や国民健康保険とは一心同体です。

そうした「宿命」を背負った職種であることを理解してもらおうと思っております。

昔、青森県のむつ保健所にいたときは、介護保険はまだありませんでした。

ケアプランの策定や、ケアマネジメントを行うことなどが、漏れ聞こえてきました。

そうした中央の情報に詳しい特養の施設長が、「ケアプランに基づく訪問看護サービスが一般的になれば、保健師の仕事は無くなるのではないか」と言っておりました。

不安になった私は、保健所の保健師の課長さんにこの話をしました。

保健師の仕事はたくさんあるので、在宅の高齢者の訪問看護を分担してもらえれば、それはありがたいことです。

地域に人が住む限り、保健師の仕事はありますので、ご心配いりません。


この課長さんは、青森の伝説の保健師で映画にもなった「花田ミキ」さんと一緒に仕事もしたことがある超ベテラン保健師でした。

30年ぶりにこのことを思い出させてくれた、県立看護大学に感謝します。

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