【#シロクマ文芸部9月③】古本を
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
上記プラス、おばあさんが読み聞かせをするというスタイルを今年は取ることにしました。そのため、シロクマ文芸部のお題から始まる部分が読み聞かせとなり、その後に会話が続く形で物語が展開します。2025年、12個のお話を上手く完成させられるか、お付き合いいただければ幸いです。
9月の物語1回目はこちら👇
9月の物語2回目はこちら👇
古本を息子の父親は若い頃、愛していました。古本は自分の知らない世界を教えてくれる大切な先生だったのです。昔の物語の中には前に進むための道を記しているようなものもありました。古本が自分の足元を明るく照らしてくれる、そう感じることもありました。
しかし、そんな気持ちも忙しく立ち働いているうちに忘れてしまいます。実際に見えることだけが大事になり、息子のギターへの想いが、自分の古本と同じだ、ということに気づけなかったのです。
だから、なぜ息子がそこまで苦しむのか父親には全く理解できません。
「ギターの……ギターの音が聞こえる!」
やつれはて寝込んでいた息子がそう言って飛び起きたのは、そんな時でした。もう立つこともできないほど弱っていたのに目をぎらつかせ外に飛び出しそうとします。
「なにも……なにも音なんて!」
止めようと息子にしがみつくと、父親の耳にもギターの奏でる音楽が聞こえてきました。
「この音は!」
美しい音が、父親には息子を操る呪われた音楽にしか聞こえません。
「ギターめ!」
斧を片手に父親はギターを捨てた丘まで走り出しました。鬼の形相の父親がギターの元にたどり着いた時、私は美しい音楽に包まれうっとりとしているところでした。
「どけ!」
「なにをするんです!」
私はあわてて男とギターの間に飛び込みました。
📚📚📚
「どうなっちゃうんだろう?」
姉が不安そうにおばあさんに問いかけます。
「ギター悪くないよね?」
弟は必死な瞳でおばあさんを見つめます。
「そうねぇ、ギターは悪くないしこの後どうなるのか……」
そう言いながらおばあさんがページをめくったのですが。
「あらあ、いいところで次の巻かあ。図書館に借りにいかなきゃ」
「ええー!」
不満そうな孫に肩まで上掛けをかけながら、良い結果になるようお願いしながら寝ましょう、と言い、おばあさんは部屋の電気を消しました。
「本当にどうなるのかしら?」
「ハラハラだよねー!」
暗い部屋の中で、うふふ、あはは、としばらく笑いあっていましたが、だんだんと可愛い寝息に変わります。
「おやすみなさい」
パタンとドアが閉まる音がしました。
(つづく)
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。
