【#シロクマ文芸部9月②】不思議なギター
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
上記プラス、おばあさんが読み聞かせをするというスタイルを今年は取ることにしました。そのため、シロクマ文芸部のお題から始まる部分が読み聞かせとなり、その後に会話が続く形で物語が展開します。2025年、12個のお話を上手く完成させられるか、お付き合いいただければ幸いです。
9月の物語1回目はこちら👇
思い出の数々が透明なページに記されていました。私は夢中でページをめくります。
覚えている思い出、忘れていた思い出。
そのひとつひとつが私の心をなつかしさでいっぱいにします。ほうっとため息がもれました。悲しいことばかりと思っていた私の思い出が、悲しみの色だけでなく多くの色に染められていたことがわかったからです。ページが透明から、色鮮やかな思い出があるとわかり、私の心は温かくなりました。
「ああ、幸せな人生だったんだ」
そうつぶやきながらめくると、ギターの思い出について書かれたページにたどりつきました。
「不思議なギターだった……」
私はギターの思い出に引き込まれていきました。
そのギターは樹木のように枝と葉を茂らせ花も咲き、常に小鳥が歌い集まっていました。持ち主が日々楽し気に弾いていたことを大切な思い出として、忘れずにいたギターだったのです。
ギターは持ち主と一緒にメロディを奏でることが大好きでしたが、父親は歌ってばかりいる持ち主をダメだと考えていました。
「人生にはもっと大切なことがある!」
持ち主の父親は真っ当な人生を歩むには歌は必要ないと考える人間だったのです。実際、彼は日々働き大金持ちになったので、自分の生き方が一番正しいと考えていました。
息子に自分の跡をつがせたい父親は、ギターをなくそうと思いつきました。息子に何日かかかる仕事を命じると、その間にギターを持ちだし、誰も知らない土地の見向きもされない丘へ捨ててしまったのです。
持ち主は仕事から帰ると、ギターがないことに気づき泣き叫びました。その悲しい声は遠くに捨てられたギターにまで届きます。ギターは持ち主の元に帰りたいと願いましたが、自分では動くことができません。
せめて……せめてメロディだけでも!
ギターは毎日必死に願いました。するとギターに変化が現れます。ネックの部分からニョキニョキと枝が生え葉が茂り花が咲き出しました。蜜や涼を求める鳥も集まります。枝が、葉が、風で揺れ、鳥が弦に触れると美しい音が奏でられ、この世のものとは思えないメロディが生まれました。
ギターが丘にしっかりと根を張り、美しい曲を奏でているところに、私はちょうど通りかかったのです。
📚📚📚
「ギターの木!」
「ギターの木!」
姉と弟は興奮して叫んだ後、しばらくだまっていました。2人の頭の中にはギターの音が再現されているのかもしれないと思い、おばあさんから笑みがこぼれます。
「ギターの音は持ち主さんに聞こえたのかなぁ」
「怖いお父さん、音楽が好きになるといいねぇ」
「そうね、このお話は長くなるから続きは来週ね」
「ええー」
不満そうな孫2人をなだめながら、おばあさんは部屋の電気を消しました。
(つづく)
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。
