- 著者
- 中河与一
- 発売日
- 1954年6月2日
- ページ数
- 144
昭和13年に発表、戦中戦後にわたり45万部発行されたベストセラー。 カミュ、柳田国男、永井荷風、徳富蘇峰、与謝野晶子らに激賞され、六カ国語に翻訳された名著。 本当にあの人だけは愛しつづけました──〈わたくし〉が愛した女には、夫がいた。学生時代、京都の下宿で知り合ったときから、〈わたくし〉の心に人妻へのほのかな恋が芽生え、そして二十余年。二人は心と心の結び合いだけで、相手への純真な愛を貫いた。 ストイックな恋愛を描き、ゲーテの『ウェルテル』に比較される浪漫主義文学の名作。英、仏、独、中国語など六カ国語に翻訳された。解説・保田与重郎。 【本文冒頭より】 信じがたいと思われるでしょう。信じるということが現代人にとっていかに困難なことかということは、わたくしもよく知っています。それでいて最も信じがたいようなことを、最も熱烈に信じているという、この狂熱に近い話を、どうぞ判断していただきたいのです。 わたくしは一つの夢に生涯を賭けました。わたくしの生れて来たことの意味は、だから言ってみれば、その儚(はか)なげな、しかし切なる願いを、どこまで貫き、どこまで持ちつづけたかということになるのです。……(「第一章」) 中河与一(1897-1994) 香川県生れ。早稲田大学英文科中退。1922(大正11)年、歌集『光る波』を刊行。菊池寛主宰の「文芸春秋」の編集同人、「文芸時代」の同人に加わり、「刺繍せられた野菜」「氷る舞踏場」等を発表、新感覚派の一翼を担った。1936(昭和11)年に完結した『恋愛無限』で、透谷文学賞を受賞。1938年発表の浪漫主義文学の傑作『天の夕顔』は西欧諸国でも高い評価を得た。『失落の庭』『探美の夜』『古都幻想』など著書多数。