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転職が怖いんじゃない。「次も外した自分」を見るのが怖い

「会社を辞めたい…」

そう思いながら、気づけば半年、1年と同じ会社に居続けてしまう人がいる。

  • 仕事が楽しいわけではない。

  • 待遇に満足しているわけでもない。

  • 上司が好きなわけでも、会社の将来に期待しているわけでもない。

それでも辞められない。
なぜなら、頭の中にこんな言葉が浮かぶからだ。

次の会社が、今よりもっとひどかったらどうしよう…

この恐怖は、かなり厄介だ。

今の会社がつらいことは、すでに分かっている。 しかし、転職先がどうなるかは分からない。

人は、分かっている苦痛よりも、正体の分からない苦痛を怖がる。

だから「辞めたい」と思いながらも、今日も同じ会社へ向かう。 不満はある。 でも、少なくとも今の仕事なら勝手が分かる。

怒られるポイントも、面倒な人との距離の取り方も、最低限の立ち回り方も分かっている。つらいけれど、予測はできる。

一方、転職先は何も分からない。

求人票には「風通しのよい職場」と書かれていても、本当かどうかは入社するまで分からない。 面接官が優しかったとしても、その人が直属の上司になるとは限らない。 残業時間が少ないと説明されても、部署によって状況が違うかもしれない。

転職には、どうしても『ガチャ』のような部分がある。
うん。だから動けなくなる。


本当に怖いのは、ブラック企業ではない

僕自身は、これまで8回転職している。
最初の頃は、あまり「次がもっとひどかったら」という恐怖を感じていなかった。
というより、

「今よりやばいところなんて、そうそうないだろう」

と思っていた。

以前働いていたスーツ屋では、休みが月に2回ほどしかなかった。そこまでいくと、転職先に対する期待値は自然と下がる。

素晴らしい会社に入りたいというより、

「少なくとも、ここよりはマシだろう」

と思える。

だから動けた。

皮肉な話だけれど、今いる場所が明確に最悪なら、人は意外と辞めやすい。


苦しいのは、今の会社が「ギリギリ耐えられる会社」だったときだ。

毎日地獄というほどではない。給料も一応振り込まれる。たまには早く帰れる。優しい同僚もいる。

でも、このまま何年も働きたいとは思えない。こういう会社は、人を辞めさせない。

幸福だからではない。決断するほど不幸ではないからだ。
そして時間だけが過ぎていく。

僕も転職を重ねるなかで、残業を月80時間ほど強制される会社に入ったことがある。その会社を「さすがにおかしい」と思う一方で、こうも考えた。

「でも、転職先にもやばい会社はあるよな」

転職すれば、必ず環境がよくなるわけではない。

むしろ、さらに悪化する可能性もある。

そう考えると、

続けても詰む。辞めても詰むかもしれない…

という状態になる。

ただ、おそらく人が本当に恐れているのは、「次の会社がブラック企業だった」という出来事だけではない。

もっと怖いのは、

次の選択まで間違えた自分と向き合うことだ。

勇気を出して転職した。家族にも報告した。同僚にも送り出してもらった。「これで人生を変える」と思った。
・・・それなのに、前よりひどい会社だった。
そうなれば、会社を見る目だけではなく、自分の判断力まで疑いたくなる。

「自分はどこへ行ってもダメなのではないか」
「会社ではなく、自分に問題があるのではないか」
「また転職したら、周りから根性がないと思われるのではないか」

転職の恐怖には、労働条件だけではなく、こうした自己否定が混ざっている。だから苦しい。


「失敗しない転職」を目指すほど動けなくなる

転職を考えるとき、多くの人は正解を選ぼうとする。

次こそは、長く働ける会社。人間関係がよくて、給料も悪くなくて、残業も少なくて、将来性もある会社。
もちろん、条件を考えることは大切だ。

しかし、転職前にすべてを見抜くことはできない。
どれだけ口コミを読んでも、面接で質問しても、

入社しなければ分からないことは残る。

つまり、

絶対に失敗しないと確信できるまで動かない人は、永遠に動けない。

必要なのは、正解を一発で当てる能力ではない。外したときに、もう一度修正できる能力だ。

僕が転職への恐怖をあまり感じなかったのも、自信があったからではない。
転職するたびに、

「前の会社の何がダメだったのか」
「次は何を確認すべきか」
「自分は何なら耐えられて、何には耐えられないのか」

を少しずつ明確にしていたからだと思う。一度も失敗しないようにするのではなく、失敗を次の判断材料に変えていた。

転職は、自分に合う会社を一発で引き当てるゲームではない。自分の取扱説明書を、少しずつ具体的にしていく作業でもある。


転職先を探す前に、「何が嫌なのか」を言葉にする

「今の会社が嫌だ」という感情だけで転職すると、次の会社でも同じ問題にぶつかることがある。

大切なのは、不満を分解することだ。

給料が低いのが嫌なのか。
長時間労働が嫌なのか。
仕事内容に意味を感じられないのか。
評価されないことが苦しいのか。
上司に支配される環境が嫌なのか。
成長している実感がないことが不安なのか。

ここが曖昧なままだと、求人票を見ても判断できない。
逆に、嫌なものが明確になれば、面接で聞くべき質問も変わる。

たとえば、残業が嫌なら「平均残業時間」だけでは不十分だ。

  • 繁忙期はいつなのか。

  • 残業が多い部署はどこか。

  • 定時で帰る人は実際にいるのか。

  • 休日に連絡が来ることはあるのか。

  • 退職理由の上位は何か。

こうした質問に変わっていく。

転職の恐怖を減らすのは、根拠のないポジティブ思考ではない。自分が避けたいものを、具体的に知ることだ。



辞めるかどうかを、今すぐ決めなくてもいい

転職を考え始めると、

「辞めるか、残るか」

の二択で考えてしまう。
でも、会社を辞めることと、転職活動を始めることは別だ。

  • 求人を見る。

  • 転職サービスに登録する。

  • 職務経歴書を作る。

  • エージェントと話してみる。

  • 興味のある会社の面接を受ける。

ここまでは、今の会社に在籍しながらできる。

転職活動を始めたからといって、必ず転職しなければならないわけでもない。

外を見た結果、今の会社のよさに気づくこともある。

反対に、自分が思っていた以上に選択肢があると分かることもある。人が追い詰められるのは、今の会社がつらいからだけではない。「ここにいるしかない」と思っているからだ。

選択肢が一つしかない状態では、人は会社に人生を握られているように感じる。しかし、転職するかどうかにかかわらず、外の世界を知れば、

「自分はいつでも動ける」

という感覚が生まれる。
その感覚だけでも、会社との距離は変わる。


怖いまま、選択肢を増やせばいい

転職が怖いのは、弱いからではない。生活があるからだ。
家賃がある。家族がいる。年齢も気になる。経歴に傷がつくことも怖い。
勇気だけで飛び出せないのは、むしろ現実を真剣に考えている証拠でもある。

だから、無理に恐怖を消す必要はない。

「絶対に次はうまくいく」と、自分に言い聞かせなくてもいい。未来は分からない。次の会社が合わない可能性も、実際にある。

それでも、今の会社に居続けることにもリスクがある。

体力が削られる。 自信を失う。 新しい仕事に挑戦する気力がなくなる。 年齢を重ね、さらに動きづらくなる。
残ることは、何もしないことではない。今の環境を選び続けるという、一つの決断だ。

辞めても詰むかもしれない。でも、残っていれば安全だとも限らない。だから必要なのは、人生を一度で正解にすることではない。間違えたら、また修正できる自分でいることだ。

転職とは、完璧な会社を探すことではない。

「自分は何を大切にしたいのか?」

を、働きながら少しずつ知っていくことなのだと思う。

怖いままでいい。今日、会社を辞めなくてもいい。ただ、「ここにいるしかない」という思い込みから抜けるために、外の選択肢を一つだけ見てみる。
人生が動き始めるのは、退職届を出した日ではない。自分には別の道もあると、思い出した日なのかもしれない。

僕はこれまで、8回の転職を通して、仕事やキャリアについて何度も考えてきました。

きれいな成功談ではなく、実際に働いて分かったことや、会社員がうまく言葉にできない感情を、これからも書いていきます。
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