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定時で帰るだけで、謝罪メールが流れる会社にいた

定時で帰るだけで、謝罪メールが流れた。
しかも、本人は菓子を配って謝っていた。
うーん、地獄。
定時退社だぞ。 不祥事じゃない。
でもその会社では、17時に帰る人が「迷惑をかける人」扱いだった。

「〇〇さんは、しばらく定時で帰ります」
「皆さん、ご協力お願いします」

いや、何の協力?
定時で帰るだけ。 ただ、それだけ。
なのに社内では、ちょっとした緊急事態みたいに扱われていた。
一番怖かったのは、会社がヤバいことじゃない。
誰もそれをおかしいと思っていなかったことだ。
これ、かなり危ない。
人はおかしい環境に長くいると、会社ではなく自分を疑い始める。

「自分が甘いのかな」
「迷惑をかけてるのかな」
「みんな耐えてるのに、自分だけ弱いのかな」

そうやって、少しずつ感覚が死んでいく。
これはブラック企業の笑い話じゃない。
自分のキャリアを、会社の空気に奪われないための話だ。


20時まで働くのが“実質の定時”だった

僕が昔いた会社は、正式な定時が17時だった。

でも、17時に帰る人はいない。
マジで誰もいない。

17時になる。 PCを閉じる。 帰ろうとする。
その瞬間、空気が変わる。

「あれ、帰るの?」

声に出して責められるわけじゃない。 でも、空気が責めてくる。
たとえば、こんな感じ。

僕「お疲れさまです」

上司「……ん?」

僕「今日はこれで……」

上司「……あぁ、そういう感じね」

周り「カタカタカタ……」

僕「……お疲れさまです」

上司「……お疲れ」

あっ……。 帰りづらいやつ。
定時なのに、なぜか悪いことをしている気分になる。
これがもうズレてる。

17時が定時なら、17時に帰っていい。 当たり前の話だ。
でもその会社では、17時退社は「早い人」扱いだった。
社内の感覚はこう。

17時〜20時。 実質定時。
20時〜22時。 普通の残業。
月80時間残業。 まあ普通。

いや、普通じゃない。
完全にバグってる。
でも、その中にいると怖いもので、だんだん自分のほうがおかしい気がしてくる。

「え、自分だけ帰るの?」
「みんな残ってるしな」
「今日くらい残ったほうがいいか」

そうやって、感覚がズレていく。
会社の時計が狂っているのに、自分の感覚を責め始める。
これが一番危ない。


「残業計画表」という地獄

さらにヤバかったのが、毎月1日に書かされる資料。
その名も、

残業計画表。

うーん、名前からして終わってる。
内容はシンプル。

今月、何時間残業するか。 何日に何時間残業するか。 それを先に書く。
しかも、合計がだいたい80時間になるように調整する。



いや、何してんねん。



残業って、先に予定するものじゃない。 仕事が終わらない時に、仕方なく発生するものだ。

でもその会社では違った。
残業は、最初から予定に入っている。

仕事が多いから残業するんじゃない。 残業する前提で仕事を組む。

順番が逆。

しかも、折れ線グラフまであった。
残業時間の推移を見える化。 残業の伸び率をチェック。

いや、そこ伸ばすな。

筋トレの記録じゃないんだから。
会社の考え方はこうだった。

「月80時間までは法的にギリギリいける」
「80時間の月と40時間の月を混ぜれば、年間上限も使える」
「だから、うまく調整しよう」

あっ……。
そういう会社か。

人を守る発想じゃない。 人を削る発想。

普通は、残業を減らす方向で考える。 でもその会社は、残業を「どこまで使えるか」で見ていた。

これ、かなり危ない。

法律の内側ならセーフ、という会社はだいたい人を大事にしていない。
ギリギリを攻める場所がズレてる。


定時で帰るだけで、謝罪メールが流れた

そして、この会社で一番キツかった出来事。
ある先輩が、家庭の事情で保育園のお迎えに行くことになった。

定時は17時。 お迎えは18時。
普通に考えれば、何も問題ない。
17時に帰る。 18時に迎えに行く。

それだけ。

でも、その会社では違った。
翌日、社内に一斉メールが流れた。

「〇〇さんは、しばらく定時で帰ります」
「皆さん、ご協力お願いします」

いやいやいや。
何の発表?
異動? 休職? 緊急対応?

違う。

ただの定時退社。

それなのに、全社員に共有される。

しかも「ご協力お願いします」付き。

協力って何。 定時で帰る人を支えるプロジェクトでも始まるんか。

さらにキツかったのは、本人の反応だった。
その先輩は、すごく申し訳なさそうにしていた。

「すみません……」
「明日から定時で帰りますので……」
「よろしくお願いします……」

そう言いながら、周りに菓子を配っていた。

いや、違う。
謝る側が逆。

定時で帰る人が頭を下げるんじゃない。 定時で帰るだけで謝罪が発生する空気のほうが壊れている。

でも、誰も突っ込まない。

誰も笑わない。 誰も怒らない。 誰も「いや、おかしいでしょ」と言わない。

みんな普通に受け入れていた。

ここで、ちょっと背中が冷えた。
人は異常に慣れると、異常を守る側に回る。
マジでこれ。


怖いのは、誰も疑問に思っていなかったこと

僕は先輩に聞いた。

「これ、普通じゃないですよね?」

すると、返ってきたのはこれ。

「いや、昔はもっとひどかったよ」
「22時に帰れるなら早いほうだったし」

あっ……。 感覚が完全に持っていかれてる。

今がまともかどうかの話をしているのに、昔よりマシかどうかで判断している。

これ、けっこう危ない。
「昔よりマシ」は、まともな理由にならない。
地獄の温度が少し下がっても、地獄は地獄。

でも、長くいる人ほど気づけない。
最初はおかしいと思う。 でも、周りが全員それを普通にしている。 誰も疑問を持たない。 むしろ、疑問を持つ人のほうが浮く。
すると、人は自分の感覚を疑い始める。

「自分が世間知らずなのかな」
「これくらい普通なのかな」
「みんな我慢してるしな」

こうなるとキツい。
会社の異常を、自分の弱さに変換してしまう。
おかしい場所にいると、おかしい自分を作らされる。
これが環境の怖さだ。


その会社で頑張るほど、感覚は壊れる

ブラックな環境の怖さは、長時間労働だけじゃない。
体力も削られる。 睡眠も減る。 休日も消える。
でも、それ以上にヤバいのは判断力が削られること。

定時で帰りたい。 でも言えない。
休みたい。 でも罪悪感がある。
辞めたい。 でも逃げだと思ってしまう。

本当は会社がおかしいのに、自分のほうを責め始める。

「自分が甘い」
「自分が弱い」
「自分が迷惑をかけている」

この思考になったら、かなり危ない。
もう会社の目線で自分を見ているから。

会社にとって都合のいい自分。 周りに迷惑をかけない自分。 文句を言わずに耐える自分。

そんなものを目指しても、たぶん幸せにはならない。
むしろ詰む。

仕事は人生の一部だ。 人生そのものじゃない。
なのに会社の空気に飲まれると、仕事が人生の全部みたいになる。
そして最後には、こう思う。

「ここで耐えられない自分はダメだ」

違う。
ダメなのは、あなたじゃない。
人を壊してから“根性がない”と言う環境がダメなんだ。
そこは間違えないほうがいい。

異常な会社は、改善より離脱が早い

正直、こういう会社を中から変えるのはかなり難しい。
もちろん、声を上げることに意味がないとは言わない。 制度を変えようとする人も必要だ。

でも、ひとりの社員が自分を削りながら戦うには重すぎることがある。
なぜなら、異常な文化は会社のOSに入っているから。

新人が入っても染まる。 先輩は昔の苦労を語る。 上司は「みんなやってきた」と言う。 会社は数字のために人を使う。
この状態になると、個人の努力ではキツい。

「自分が変わればいい」
「もっと効率よくやればいい」
「評価されれば楽になる」

そう思うかもしれない。

でも、環境そのものがズレているなら、努力の方向が違う。
泥水の中で、きれいに泳ごうとしても無理がある。
必要なのは泳ぎ方の改善じゃない。 水から出ること。

環境に問題があるなら、あなたが変わるより、環境を変えたほうが早い。
これは逃げじゃない。 かなり現実的な判断だ。

求人を見る。 人に相談する。 転職サイトに登録する。 貯金を確認する。
今すぐ辞める必要はない。 でも、逃げ道は作っておいたほうがいい。

逃げ道があるだけで、人はかなり強くなる。
壊れる前に離れるのは、負けじゃない。
防衛だ。


定時で帰るのは悪じゃない

定時で帰るのは悪じゃない。
家庭を優先するのも、休むのも、自分の人生を守るのも悪じゃない。
悪いのは、それを悪にする会社だ。
もし今の職場で、

「自分が甘いのかな」
「自分だけ弱いのかな」
「辞めたいなんて逃げかな」

と思っているなら、一度疑ったほうがいい。
その考え、本当に自分の本音だろうか。
会社の空気に言わされているだけじゃないか。
キャリアに悩む人ほど、会社の普通に飲まれやすい。

「みんなそうしてる」
「昔からこうだから」
「ここで逃げたら終わり」

うーん、そんなことはない。
会社の普通が、あなたの人生の正解とは限らない。
むしろ、その普通に合わせ続けた結果、自分の感覚が死ぬこともある。
だから、違和感をなかったことにしないでほしい。

「この会社、なんかおかしい」
「この働き方、ずっと続けるのは無理」
「このままだと自分が壊れる」

そう思えているなら、まだ大丈夫。
その感覚は、弱さじゃない。
自分を守るためのセンサーだ。

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定時で帰るのは悪じゃない。
悪いのは、それを悪にする会社だ。

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