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【#66】映画memo『役者になったスパイ』

スキマからこんばんは。
「やばい、来週から会社が始まる! “モラトリアム最終★平日★映画満喫タイム(無理やり一言にまとめようとするなよ)”にふさわしい作品は何だろうか……」と必死で探したところ、己の運の良さに驚かされる結果になりましたw 
超おすすめ、スイス映画を発見!
 
ミヒャ・レビンスキー監督最新作
『役者になったスパイ』
 
※少しでも展開がわかることが嫌な方は、鑑賞後にお読みいただけるとうれしいです。

あらすじ

冷戦下のスイスを舞台に、潜入捜査のため劇団に送り込まれた警察官と舞台女優の恋を描くポリティカルロマンスコメディ。

1989年、冷戦の緊張が続く中、スイスではソ連の共産主義に対する恐れが社会を覆っていた。反体制派の監視と情報収集を目的に、警察官のヴィクトール・シュエラーはデモ活動を行うシャウシュピールハウス劇場への潜入を命じられる。しかし、シュエラーは監視対象の女優オディール・ヨーラと恋に落ちてしまう。さらに劇団員たちとも交流を重ねるうちに、シュエラーは自らの任務に疑問を抱き始める。ウィリアム・シェイクスピア「十二夜」の稽古と現実が交錯しながら、シュエラーの心は任務と恋の狭間で揺れ動いていく。

監督は、2008年の長編デビュー作「Der Freund」がスイス映画賞の最優秀長編映画賞を受賞したミヒャ・レビンスキー。

映画.comより

政治も恋も、肩の力を抜いて眺めよう

私の大好きなミックスジャンルもの。表向きは見出しの通り、ポリティカルロマコメなんだけど、深い人間ドラマでもあり、正直に生きることの尊さが、じわじわ沁みてくる一本でした。
 
舞台となったのは、冷戦下に揺れる80年代のスイス。中立を掲げながらも強い反共意識に覆われたスイスで、市民が監視対象となった異例のスキャンダルを取り上げています。シリアスに寄りすぎず、絶妙な笑いを散りばめながら描くミヒャ・レビンスキー監督が、極めて優れたバランス感覚の持ち主であることを感じる作品です。
 
主役のフィリップ・グラバーのお芝居はとにかく繊細で、いちいち楽しく、じっと見つめてしまう。ヒロインのミリアム・シュタインはきれいで、でも何をやらかすやら……のハラハラ感もあって、ずっとワクワクしてました。

不器用すぎるスパイ、恋に落ちるの巻

フィリップ・グラバー演じるヴィクトール(ヴァロ)は真面目だけど、なんだか生きにくそうな独身警察官。
 
上司の命令に納得がいかなかったり、“ちょうどいい加減”がわからなかったりする、ややADHD味もある小心者の男です。自分が集中して調べ上げた情報について、真夜中に上司に電話で報告しちゃう様子は、大真面目なのに馬鹿げていてかなり笑えましたが、「あれれ、でも他人事じゃないぞ」って身につまされたりも(私もそんなタイプなので)。
 
そんな愛すべき男、ヴィクトールが真剣に任務に取り組みながら、気付けば調査対象者であるオディール(ミリアム・シュタイン)に恋しちゃいます。
ヴィクトールとオディールが恋仲になる理由が浅薄だと指摘している意見を目にしましたが、恋ってそんなもの。理由なんて、多分最初から存在しない。出会ったときに一瞬で「あなたって特別ね」を感じてしまうのが恋だと思います。
正直者の男と、自分の軸がしっかりしている女が恋に落ちるのも腑に落ちる気がするし。
 
ヴィクトールが潜入捜査官であることがバレて(劇団のみんな側からすれば裏切り行為)からの描写も丁寧。だから、オディールの心のうつろいも自然に理解でき、共感できるものになっていました。

芝居が暴く、人間の正直さと聡明さ

シェークスピア劇「十二夜」の本番に向け、協力し合いながら稽古を続ける舞台下の人々。彼らにスポットをあてることで、人間の魅力が見事に浮かび上がっています。
 
『生きるべきか死ぬべきか』『イングロリアス・バスターズ』『善き人のためのソナタ』など、舞台芸術を通して人間の意外な側面を引き出す作品は多く、これらがヒントになっているのは間違いなさそうですが、劇中劇に「十二夜」を選び、ヴィクトールに“あの状況”(全部話すと面白くなくなるから内緒にしとくYO)を強いる脚本は、本当に秀逸。
 
一人だけで頑張らず、プリニオ・バッハマンやバルバラ・ゾマーの協力を得て脚本を書き上げたレビンスキー監督の判断は正しかったと言えそうです。
 
役者たちの姿を少しだけ知っている私にとっては、演劇人たちのことを「みんないい人で自惚れ屋」と発するヴィクトールの台詞がちょっぴり可笑しかった。終盤、舞台上のヴィクトールや彼を見つめる人たちの姿を通して、本来あるべき人間の「正直さ」や「聡明さ」がストレートに伝わるところが実によかったと思います。
 
普段から映画をよく観る映画好きにはもちろん、あたたかい人間ドラマが好きな人には間違いなく刺さる一本。
右とか左とかよくわからなくても(もちろん、わかるに越したことはないが)、この映画のチャーミングさは伝わるに違いありません。
 
「皆さんにも観てほしい!」と思って、がんばって書いたつもりだけど、魅力が伝わったかしらん。
未鑑賞の人には本当に観てほしい!
頼む! 地味ではあるものの、楽しいから!(懇願?w)
 
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