紙芝居2 いちごちゃん時計を飛び出した日|エピソード2:いちご畑の出会いと、きえたネジ
「おやつ全部あげるっていったのにーーーー!」
なんといちごちゃん、食い意地を張って急ブレーキをかけた青い飛行機から、真っ逆さまに振り落とされちゃいました。
スポーーーーン!
雲を突き抜けて、空の散歩は一転して大パニック。
大事なおやつをぎゅっと抱えたまま、いちごちゃんは空へと投げ出されてしまいました。
びゅううううん!
強い風が耳元を通り抜けていきます。
「どうしよう! 私、 ケーキのイチゴみたいに、つぶれちゃうかも!」
ギュッと目をつぶろうとした時です。
いちごちゃんのはるか下の方に足元に真っ赤な世界が広がっていました。
ぽっすん。
ふかふかの緑の葉っぱが、いちごちゃんを優しく、やわらかく受け止めてくれました。
「あれ……。ケガ、してない!」
いちごちゃんがおそるおそる顔を上げると、そこは、地平線まで続く真っ赤な真っ赤ないちご畑。あまーい香りが、鼻先をくすぐります。
初めて見るまぶしい景色に感動していると、どこからか「ガサガサ……」と大きな葉っぱがこすれる音がします。
「おい。おい。おいしそうな でっかいいちごが落ちてきたぞ」
振り返ると、大きな葉っぱの影から小さな猫が二匹。
ひょっこりと顔を出しました。
誰だろう?
「私はいちごちゃん。あなたたちはだあれ?」
「僕、アポロ」 茶色の毛並みの猫が、得意げに胸を張りました。
「あたしはひめ」 白いふわふわの猫が、少し恥ずかしそうにアポロの後ろから覗いています。二人の猫は仲良しのようです。
「アポロ、ひめ、こんにちわ」
「すごい勢いで飛んできたな、お前、大丈夫か?」
いちごちゃんは、頭にいっぱいついた葉っぱを振り払っています。
「今日はよく、いろんなものが落ちてくるなぁ。さっきは古びた銀色のネジみたいなの。そして、お前だ」
古びた…銀色の…ねじ?
「それよ! それを探しに来たの!」
いちごちゃんはパッと身を乗り出しましたが、アポロはしっぽを振って、あっさりと言いました。
「あんなおんぼろの銀色のネジ。もう捨てちゃったよ」
捨てちゃった!?
いちごちゃんの心臓が、どきんと跳ねました。
それがないといちごちゃんは、大好きなお家、元の世界に戻れません。
困った、いちごちゃんどうする?
「お願い、一緒に探して!」
「いやだよ」 アポロは、めんどくさそうに顔をそむけました。
「私のおやつ、全部あげるから!」 「うんっ!」
アポロの返事は一瞬でした。
いちごちゃんはポケットの中から、真っ赤でつやつやのいちごを三つ取り出しました。 それは、宝石みたいにキラキラと光っていました。

アポロは我慢できずにガブリ。 ひめも、小さな口でぱくり。 そして最後の一つ、いちごちゃんも幸せそうに、ぱくり。
「おいしーーーー!」
三人は顔を見合わせて、にっこり笑顔になりました。
「しかたねーな、手伝ってやるよ。その代わり……」
アポロは、上空をぐるぐると回る機体を見上げました。
「あの青い飛行機に、俺たちも乗せてくれよ。空を飛ぶのが夢だったんだ」
ゆっくり旋回して、みんなの様子を心配そうに見守っている飛行機さん。ほんとは優しいのかも。
「わかった! みんなで探せばきっとすぐに見つかるよね!」
いちごちゃん、アポロ、ひめの三人は、銀色のネジを探して、緑の葉が生い茂る広いいちご畑の中を、元気に駆け回るのでした。
「こんな広いいちご畑で、ねじなんてみつかるのかーーーーーー!」
「手伝ってくれるって言ったじゃない!」

三人は、無事、ねじを見つけることはできるでしょうか?
つづく
次のお話は、ここから
エピソード3:赤いマントと、空とぶ練習|MeiMei
【MeiMeiの制作ノート:裏話】
エピソード2を最後まで読んでいただき、ありがとうございます! 今回の物語を形にする上で、私が特に大切にした「こだわりポイント」を少しだけご紹介します。
「間」と「リズム」の魔法: 「スポーーーーン!」から「ぽっすん」という、コミカルで軽快なリズムを大切にしました。
アポロとの「0秒交渉」: 彼の「いやだよ」から「うんっ!」までの切り替えの速さは、このエピソードの一番の笑いどころです。
あえての「引き算」: 最後に一点だけカラー挿絵を配置することで、三人がいちごを頬張る幸せな瞬間がより鮮明に伝わるように工夫しました。
書いていると思いますね。
どこかのお家でこの物語が、読み聞かせの一冊になると良いななんて。

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