はぐき先生の現場案内①🟢『ネーザルハイフローをつけながら食べる支援はできる?』嚥下内視鏡・食形態調整・口腔ケア...小児在宅歯科の現場をのぞいてみよう
※この記事に登場する場面・人物は、プライバシーに配慮し実際の診療をもとに再構成したものです。
🌱 今回の現場
先天性心疾患のある1歳のお子さんのご自宅に、歯科医師・歯科衛生士・管理栄養士の3人でうかがいました。新生児科の主治医から依頼を受けての訪問です。
ご自宅には在宅医療を支えるさまざまな機器が置かれており、生活の場と医療の場が自然に重なり合っています。歯科と栄養が連携して「食べる支援」をご自宅に届けられる——それが小児在宅歯科のひとつの形です。
🔵 ネーザルハイフローとは?
このお子さんの鼻には、ネーザルハイフローと呼ばれる機器のチューブがつながっています。
ネーザルハイフローは、鼻から温めた酸素を一定の流量で送り続ける呼吸補助の装置です。通常の酸素吸入よりも高流量で安定して酸素を届けられるため、呼吸の状態が不安定な子どもに用いられることがあります。
「機器をつけているから食支援はまだ先」ではありません。状態を丁寧に確認しながら、その子のペースで「食べること」へのアプローチを進めることができます。

🔵 先天性心疾患と「食べること」のつながり
先天性心疾患のある子どもは、心臓や呼吸の状態が「食べること」に影響することがあります。水分摂取量への配慮が必要だったり、呼吸と飲み込みのタイミングを合わせることがむずかしく、嚥下の課題につながることもあります。
呼吸状態が安定していないと、食へのアプローチをなかなか始めにくかったり、「始めようと思っても、どんなリスクがあるのか」と不安が大きくなることもあります。そうした不安に寄り添いながら、今このお子さんに何ができるかを一緒に考えていくことが、在宅での食支援の出発点です。
🔵 3つのフェーズで現状を整理する
「食べること」を支えるとき、わたしたちは「3つのフェーズ」の視点で現状を整理します(知識ノート①)。
口の入り口の感覚・機能はどうか(フェーズ1)、口の内側での食べものの処理はどうか(フェーズ2)、飲み込む機能に課題はないか(フェーズ3)——この流れを頭に置きながら、今このお子さんがどの段階にいるかを見ていきます。
このお子さんの場合、以前の関わりの中でまずフェーズ1——口の入り口の感覚の課題への取り組みからはじめました(知識ノート②)。口が少しずつ育ってきた今、「飲み込みの状態を確認できるタイミングに来た」と判断し、今回の訪問につながりました。
🟢 嚥下内視鏡検査——飲み込みを「見る」

今回の訪問では、嚥下内視鏡検査を行いました。細い内視鏡カメラを鼻から入れ、実際に食べてもらいながら喉の動きをリアルタイムで観察する検査です(知識ノート⑤)。
食べたものが気道に入っていないか(誤嚥)、喉に残ってしまっていないか(咽頭残留)——こうした状態を直接目視で確認することで、「今このお子さんにとって安全な食形態はなにか」を根拠をもって判断できます。
ネーザルハイフローを使用したままでも、この検査は実施できます。
🟢 管理栄養士と一緒に——とろみと食形態の話

検査の結果をもとに、管理栄養士がご家族へとろみ調整の方法をお伝えしました。
とろみ剤の種類・水分へのつけ方・量の目安を、図を使いながら丁寧に伝えていきます。心疾患がある場合、水分量の管理も大切な視点です。とろみで飲み込みの安全性を高めながら、必要な水分・栄養をどう確保するか——歯科と栄養の視点を合わせて、ご家族と一緒に考えていきます。
在宅での食支援は、ご家族が日々の生活の中で続けていくものです。「続けられる方法」を一緒に見つけていくことを大切にしています。
🟢 口腔ケアも、「食べること」の大切な一歩

口から食べることへのアプローチを進めるとき、口腔ケアの重要性もいっそう高まります。
医療的ケアが必要な子どもは、口の中が乾燥しやすかったり、細菌が増えやすい環境になりやすかったりすることがあります。口腔内を清潔に保つことは、誤嚥性肺炎のリスクを下げることにもつながります。
今回の訪問では、歯科衛生士がご家族に口腔ケアの方法についてアドバイスをお伝えしました。どんな道具を使うか、どのように口の中を清潔にするか——日々のケアをご家族が無理なく続けられるよう、一緒に確認していきます。
🌱 おわりに——ご自宅に届く食の支援
今回の訪問でできたこと:
嚥下内視鏡検査による飲み込みの評価(歯科医師)
安全な食形態・とろみの提案とアドバイス(管理栄養士)
口腔ケアについてのアドバイス(歯科衛生士)
病院での治療と並行して、ご自宅でもこうした「食べる支援」を受けられる仕組みがあります。「うちの子にも必要かも」と感じたご家族は、まずかかりつけの医師や地域の支援者に相談してみてください。
📝 この記事について
この記事に登場する場面・人物は、実際の診療をもとにプライバシーに配慮して再構成したものです。お子さんの摂食・嚥下の状態は一人ひとり異なります。気になることがある場合は、かかりつけの医師や摂食嚥下を専門とするスタッフにご相談ください。
