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石倉三郎的人生③けんか  いいねー、波風のある人生。

石倉三郎的人生③けんか

いいねー、波風のある人生。


 キリがないんだなあ。本人は認めないが年中「けんか」をしている。
 切れ目なき純情だ。
 編年体「けんかの歴史」を作ろうと思ったのだが、いつどうゆう「けんか」をしてきたのかわかんなくなっているらしく、どーにもきれいに並ばない。
 流石になぁ芸能界最強は、奥の深いものだと感心してしまった。
(というわけで整理が付かない。時系列などで混乱がありますが、大雑把なとこでよろしくです)

 ユアーズの閉店後、毎晩「けんか」になっていたのは①で書いた。
「サブちゃん、おもしれぇなあ、毎日、赤タン青タンふかして」
 これが健さんからの褒め言葉となると、いたってうらやましい。

 東映に入る。3年を過ぎた頃「網走番外地」が入る。
「あ、健さんに会えるのかなあ」
と思っていると、クセの悪い演技事務の担当がロケに一緒に来ることになる。
 この野郎、大部屋をいじめるのだけが楽しみで生きている。付け届けをすると、ころっと変わるから余計、タチが悪いや。体をかわしていたんだが、もう寒い日が続いてね、夜中、目を覚ますと…。
 ボコン、ボコン、と音がする。大部屋の連中を起こして次々殴るんだ。
「俺は正義だよ」
 我慢できないから、ちょっとシメちゃった。

「健さん、すいません。(もうすぐ社員になるとこなんですが)やめようと思うんです」
「サブちゃん、わけは聞いた。でもなあ役者が、暴力はいけないよなあ…うーん、やめるのか」
「…すいません」
「サブちゃん、泥水つかるつもりで生きていく覚悟はあるか」
「つかるどころか、首までだって」
「そーか、それなら、続けろ。やってみろ。でもなあ、ここからが、辛いぞ」

 食えなくてなあ、石和温泉でルーレットのディラーをやったんだ。そしたら、地元のワルにさらわれて
「おい、お前、これで掘れ」
 スコップを放りやがんのよ。掘ったねぇ、自分の穴だ。ちょうど疲れ切ったとこで、俺を石和に連れてきたヤツが
「実は俺はどこどこの…」
と名乗り合いだ。そうしたら、兄弟の、オジキの、そのまたオジサンの、どうのこうであっさり仲良しチーム。こっちはたまったもんじゃねぇ、
「バカヤロー、冗談じゃないぞ」
 今度は相手の事務所でスコップ野郎を叩いたよ。

 クリスマスの夜なんだよ。変な顔の笑い顔、あるだろ、あのお面をかぶって歩いていると、前から歩いて来た若いやつらとよくあるやつ、
「ぶつかったの、ぶつかんないの」
で、はじまっちゃった。
 そしたらさあ、やっつけてもやっつけても、続くんだよねぇ。地元の方なんだねぇ。
 終(しま)いに、お面の裏に血がたまって、液体糊。映画みたいだよ。言っていいかなー、たけちゃんも小突きながら笑うんだ。お面の笑い顔から赤い血がはみ出てきて、
「おじさん、だめ、おかしくて止まらない」
と言いながら、やつの手は止まらない。

 金玉はねぇ、たけちゃんが誘ってくれたんだ、映画に。そこでのこと。
「おじさん、俺のマネージャーの役だけど出てよ」
「ああいいよ、やらしてもらうよ」
とは言うものの大よろこびだよ。だってセリフがあるんだよ。こっちは大部屋出身だよ、セリフがあるとこまでこぎつけるために生きてんだ。

 前の日、当時、十二社に住んでてね、歌舞伎町で飲ったんだ。自分祝い。いい気分でタクシーに乗ろうとしたら2人組が割り込みやがってさ。
「俺が止めたんじゃあねぇか、いい加減にしろよ」
 もう案の定はじまっちゃった。ひとりを踏ん付けておいて、始末していたら、下の方でピカッと光ったね。
「アレー」
と思ったけど片付けて。
「しょうがねぇなあ、さっぱりしねえからもう一杯か」
知ってる店に入ると、女の子が大騒ぎ。腰から下が血だらけだ。袋をスパッと切られてる、らしい。
 俺もねぇ、そこでガクッてきて救急車。
「7針も塗ったかなあ」
 忙しくて、治り切らないうちに子供ショーにも行ったなあ。

 もうひとつ。
 撮影の前日にちょんちょんしちゃって肩が骨折、鎖骨がやられてるんだあ、左のホホ、骸骨は3枚になってるらしいけどこれもやられていてブワーって腫れている。
「たけちゃんよー、なんとかなんねぇか」
「おじさん、なにやってんのよ」
 しょうがねぇんで、脇にセカンドバックを差し込んでまず肩を固めたね。次、顔はサングラスで、右からの撮り。
 撮影終わりに慶應病院に飛んでいくと、ま、ま、そういうわけだ。どっちも骨折だ。
「俳優をやっているんで、なんとかこのままで」
「知りませんよ、わたし」
 では…
「知りませんよー、どうなってもー」

 ほーら、切れ目ないでしょう。
 小豆島から出てきて、(幾分褒めすぎになるかもしれないが)卑屈にならず生きていくには多少の荒事も必要なんだろうなあ。というのが正直な感想だなあ。
 まず金はない、係累もなくて、学歴もない。
 ないものネダリの子守唄のドラムスはボコン、ボコンという音がした。

 良い子のみなさーん、元気ですかー。
(おじさんは金玉袋が切れていて、痛いんですよー)
 お父さん、お母さんのいうことをよーく聞きましょうー。
(おじさんのようにねぇ、あっ、痛ぇーなあ、袋でよかったなあ)

 千葉県鴨川の「子供ショー」で出会った子供たち、いま何歳(いくつ)になったー。
 50歳になったのかあー。
 おじさんを覚えて、いるかー。人生に波風はつきものだぞー。

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