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【企画短編#noteでBL】夢のかたわれ

毎月恒例、BL祭りに今回も参加いたします。
なみさん、いつもありがとうございます!!

企画開始から今回で1年とのこと、一周年おめでとうございます(≧▽≦)

1年ずっと同じ企画を続けて、今では「これ1日で全部読んでまとめるの大変だな…」という人数が参加される人気企画に育てられたなみさん、本当にすごいです。
私が参加させていただいたのは2月投稿のバレンタイン企画からなので、半年でしょうか。あの時も特別企画だったな、懐かしい。
今では私にとって月に一度の楽しいお祭り、毎月待ち遠しくてなりません。
Xのスペース等、新しい試みも始まってこれからますます楽しみです。
これからもどうぞよろしくお願いします!

さて、こっちはいつもな感じの参加作第二弾です!
もう一作が重いので(※当社基準)、こっちはなるべくライトな感じを目指しました。
しっかり死別しててライト(これ)、死を拒否で激重(『月光』)ってどういうこと。
でもなみさんの↓の言葉が好きなんですよね。

私は「死」と言うのは、誰しもに訪れる平等な優しい摂理だと思います。

なみさん『BL作家やろうぜ!小説企画 第12弾!挑戦者求む!』

今回の企画のベースだと思うので、死のひとつの形としてこうなりました。
お読みいただけたら嬉しいです!

ちなみに(当社基準)激重暗闇死生観BLはこちらです(↓)。
全然テイスト違うので、この作品の雰囲気が好きな方にはおススメできない……

それでは、よろしくお願いいたします!!


本編

※※BL要素を含みますので、苦手な方はご注意ください※※
【テーマ】お題でBL(~10,000字)
【お題】 生きる時間(『死』をテーマにしたブロマンス~BL)
【タイトル】夢のかたわれ(スペース除き約4,400字)


 大きくなったら何になりたい?
 そんな定番の質問に、あいつは弾ける笑顔で答えた。
「ヤギになりたい!」

「………っ、………っっ」
「可愛いだろ?」
「か、かわい……むり、かわいすぎる……!」
 床に転がって悶えるたまきに、俺は追い討ちをかける。
「小2まで言ってた。ヤギにはなれないって知ってマジ泣き」
「やめ……かわいすぎて、くるしい……」
「可愛いよなー。どんな発想だよ。なんで動物、しかもヤギて。地味専にもほどがあるだろ」
 傍で涙を拭いながら、環は大きく息を吐く。
「地味専て。せめて渋いと言ってやれ」
「いや渋いのは馬とかだろ。ヤギだぞ?」
「………っ」
「あいつの可愛さはそこなんだよな。いやそれかよ?!っていう。ケーキもさぁ」
「ケーキ?」
「昔、ケーキ買ってきてもらってさ。選んでいいよって言われんじゃん。フルーツタルトとかチョコとか派手なのいくらでもあるなかで、あいつが選ぶのはいっつもチーズケーキ」
「チーズケーキ?」
「そう。フルーツも飾りもなんもない、いっちばん安いやつ。親も数合わせで買ってくるやつだよ。それがいいっつーの」
「気ぃ遣って?」
 環が腹ばいになって訊く。好奇心と愛しさに満ちた瞳。
「違うんだな。試しにフルーツタルトやってみたら泣きそうになってた。あ、マジでチーズケーキがいいんだ、ってようやくわかったよ」
「まじか……慎ましすぎるな……」
「だろ?」
 そう。慎ましいのだ、俺の可愛い弟は。
 環の片想いの相手は。


「なぁ、俺があおを好きだって言ったら、おまえ怒る?」
 環がそう言ったのは、たぶん去年の今頃。8月に入ってすぐだった。
 いつもどおり、俺の部屋でグダグダしていた午後。床に転がってスマホを眺めていた環は、不意にそんなことを言った。
「……なんて?」
 蒼は俺の弟だ。よくこの一人暮らしの部屋に来る。自然と、ここに入り浸る環とも親しくなっていた。
「俺、好きみたい。蒼のこと」
 好き。
 俺はポカンと環の言葉を反芻する。
 好き。環が、蒼を。
 俺の親友が、俺の弟を。
「………懐いてる、からな………?」
 無難に応えた俺に、環は一瞬で「ちがう」と否定した。
「蒼と恋人になりたい」
 マジか。ほんとに、そういう好き、なのか。
「怒る?」
 環はほんの少し気まずそうに、俺の顔を覗き込んだ。普段堂々とした、いわゆる陽キャだのチャラ男だのと言われるタイプの環が、こんなふうに自信なさげな表情をするのは珍しい。
 あ、本当に、蒼のことが好きなんだ。
「その、怒る?ってなに。なんで俺が怒るんだよ」
「いやだって、大事な弟を……」
「蒼は大事な弟だけど、あいつの恋愛関係に俺は関係ないだろ」
 環はえー、と首を傾げて天井を見た。
「そう言われてみれば、別におまえの許可はいらないんだけど……なんか、なんとなく?」
 うーん、と唸った環は、自分でも不思議そうに首を傾げた。
「俺が蒼を好きになったら、おまえは嫌かなって気がしてさ」
「なんでだよ」
「だからなんとなく」
 変なこと言ったな、と苦笑して、環はすっきりしたように笑った。
「とりあえず、俺、蒼が好きなんだ。恋人になれるよう頑張るわ」
 マジか。
 そんなことある?
 晴れやかに笑う親友に、俺の心はじんわりと重くなった。
 よりによって弟とか。
 そんなこと、ある?
 
「あ、環さんこんにちは」
 部屋に蒼が入ってきて、環がよぉ、と手を上げる。
「お疲れ。バイト?」
 環の手が蒼の髪を掻き回す。蒼は目を細めてされるがままだ。
 さわられるのはあまり好きじゃないはずなのに、環ならいいのだろうか。
「環さんほんとによくいるね。自分の部屋、もったいなくない?」
「まぁなー、解約してここに住みたいくらいかも」
 イタズラげに笑って、環は俺に目線を送る。蒼はそれには気づかない。
 ポヤポヤしたこいつはいまだに、環の片想いにも気づいていないのだ。
「住めば?家賃もったいないし」
「え。いやでも、ふたりで住むには狭いだろ」
「そう?大丈夫そうだけど……」
 兄ちゃんあんまりいないみたいだし、と言うその顔があまりに無邪気で、環が内心本気で焦るのがわかった。
 いつも自信満々で余裕で、俺を振り回してばかりだった環は、蒼のことになるとてんでダメだ。中学生か、と思うようなピュアな反応に、中学生でも気づくだろ、と思うことに気づかない蒼。
 相性がいいのか悪いのか。俺はそんなことを思いながら、ふたりの様子を眺めている。
「この部屋にいつも環さんがいてくれたら、俺はけっこう嬉しいけど」
 待て蒼、それはまずい。俺は思わず天を仰ぐ。
 俺の予想どおり、一瞬ポカンとした環は、両手で顔を覆って床に倒れた。
「え、環さん?」
「いやほんと今のは無理……やばい、頑張れ俺の理性」
「環さん?」
「なんでもない。蒼、そういうのよそで言っちゃダメだぞ、危ない」
「危ない……?」
 噛み合わないふたりに俺が再び天を仰いだ時、蒼のスマホが鳴り出した。
 救世主だ。こんなものを見せられ続けたら、俺が爆発霧散する。
「あ、お母さんだ」
 ちょっと出てくる、と言って、蒼はスマホを掴んで部屋を出た。
「おい蒼の教育どうなってんだ、タラシか!」
「意味わからん、さっさと告れよ見てられん!」
 叫ぶと、環はう、と詰まって気まずそうに目を逸らした。
「さすがに今はまだダメだろ。そんな、つけ込むみたいなこと」
「は?」
「あいつがちゃんと、受け入れてからにしようと思って。待ってんだよ」
 え。
 固まる俺に、環はむっとしたような、悔しそうな顔で、俺を叩くマネをした。
「おまえが急に、いなくなるから」

 俺が事故ったのは1年近く前。8月が終わる頃だった。
 暑さにやられて立ち眩み、階段から落ちた。ウソみたいな事故。
 打ちどころってあるんだな、と思う。こんなにも簡単に、誰のせいでもなく、人生は急に終わることがあるのだ。知っていたような知らないような、そんなことを考えてみたりもする。
 とにかく俺は死んでしまった。環に俺が見えるのは、びっくりするような偶然だ。
 環にとっては。
「え?空?」
 葬式等も終わったある日。俺はこの部屋で、忘れ物を取りに来た環と会った。
「え、見えんのか」
 そうだった、忘れてた。焦る俺に、環はわかりやすく混乱した。
「え?え?幻覚?幽霊?え、幽霊??」
 幽霊なのおまえ、マジで??と、深刻とは言い難いテンションで俺の存在を認めた環は言った。
「何死んでんだよマジで。ありえん」
「おまえのその冷静さもだいぶありえんが、とりあえずごめん」
 好きで死んだわけではないが、まぁ謝るのは妥当だろう。
 俺の返事に、環の顔がくしゃりと崩れた。
「マジか。幽霊て。マジで死んだのかおまえ」
 泣き笑いの顔で俺を小突こうとした環は、うわマジでさわれないのか、と感心するように言った後、ぽつりと呟いた。
「マジか。ほんとに、死んだんだ」

 それ以来、環は今までどおり俺の部屋に入り浸っている。最初は部屋を解約するつもりだった両親も、環の行動を黙認していた。
 ある意味、両親にとっても好都合だったのだ。
「あ、蒼。お母さんなんだった?」
 戻ってきた蒼に、環は軽く問いかける。蒼はこくんと首を傾げた。
「よくわかんなかった。兄ちゃんがどうとか、言ってたんだけど」
「ああ……空が、なんて?」
 環の口調はあくまで軽い。当たり前のように俺の名前を出す環に、蒼の表情がやわらぐ。
「兄ちゃんの法事、とか言ってたんだけど。変だよね、兄ちゃんが死んだみたいじゃん。今度の法事には兄ちゃんも来るってことかな?」
 どうだろ、と曖昧に流して、環がちらりと視線を流す。ふー、と思わず息が漏れた。
 まだ受け入れられないのだ、蒼は。俺が死んだことを。
「環さん、兄ちゃんに会ってる?俺が来るといつもいないんだけど」
 蒼の言葉をうーん、と流して、環はその頭をわしゃわしゃと掻き回す。
「……なんか、言いたいことあんの、空に」
 やわらかな、愛しさに溢れた声。
 弟に向けられる優しさに、俺の心はぎゅっと痛む。
 そんなことある?
 よりによって、弟とおまえなんて。
「うーん。どうだろう……」
 唸った蒼は、不意に照れたように笑った。
「とりあえず、会いたいな。それだけでいい」
 蒼の頭を掻き回す環の手が止まる。瞬きの後、彼はきゅっと唇を噛んで、「会ったら伝えとく」と言った。
 な。
 慎ましいだろ、俺の可愛い弟は。
 おまえの愛しい、片想いの相手は。


「まだ行かないの」
 俺の隣にふわりと座って、そいつは一緒に星を見上げる。
 名前も性別も知らない。ただ、ずっと俺を担当している。
「急いだって意味ないだろ。年代ズレたらまた面倒じゃん」
「それは確かに」
 そいつはやわらかく苦笑する。
「今回はまじでいい感じだったのになぁ。種族も年齢も関係性も、今までで一番近かったのに。弟だぜ?そんなことあるかよ」
「びっくりだよね」
「なんとかなんないのかこのシステム。あいつが覚えてれば一発じゃん」
「そうなんだけどね。なんでか、覚えてないんだよねぇ、どっちかが」
「他のペアはどうやって結ばれてんだよ。何回目だよ俺がやり直すの」
 魂のかたわれ。
 何度生まれ変わっても出会い、惹かれ合うと言うけれど、絶対にウソだと俺は思う。
「君は絶対に惹かれるじゃん」
「そうだけど。あいつは全然惚れないじゃん……」
 もしかして俺は、未来永劫、こうして片想いを続けるのだろうか。
 何度生まれ変わっても、俺を覚えていないあいつに惹かれて、目の前で別の誰かを選ぶのを見続けて。
「いやなんの罰ゲームだよ」
「ちゃんと君のこと見えてるから、かたわれなのは間違いないと思うけど」
 心霊現象に遭遇したことのない環が俺の幽霊だけは見られる、というのも、かたわれの証拠らしい。正直それも怪しいと思う。
「まぁ通説ってやつ?見えないペアもいるみたいだし」
「なんだそれ、ほんとにあるのかよかたわれなんて」
 疑う俺に、そいつはふふ、と微笑んだ。
「夢みたいなものかもね。離ればなれになる苦しさに耐えるために、いつかきっと、って」
「え……マジで」
「さぁ?」
 どうだろうね。星を見ながらそいつは言う。
「いつ、次に行く?」
「いつでもいいだろ。あいつはまだまだ来ないんだし」
 それに、と呟くと、そいつは一瞬きょとんとして、すぐにああ、と眉を下げた。
「心配だよね」
「……まぁな」
「まだ、少しかかりそうだ」
 そうかもしれない。でもきっと。いつか、きっと。
「あいつが傍にいれば、大丈夫だろ……」
 損な性格だね、と微笑んで、そいつはさてと腰を上げた。
「行く時は呼んでね」
 笑顔を残して、そいつはすっと夜に溶ける。チェシャ猫みたいだ。
 ひとりになった俺は、ぼんやりと星を眺めながら考える。
 魂のかたわれ。
 そんなものがあってもなくても。
 たとえどんな結末でも。
 ただもう一度、あいつに会いたい。


あとがき

こっちは死別カプだぞ!と思ってましたが、もしかしてカップルになれたことないんじゃない……?って気がしてきました。
死別カプとは。
あと花のうてなっぷるでもない……環来ないじゃん……!(今さら)

これの転生観は以前書いた↓に近いかもしれません。
そもそもこれも、今回のテーマの元である四四田 鹿辰(ヨシダ ナレシカ)さんの作品のオマージュでした。
四四田さん好きすぎ問題。


そしてやっぱり三角関係が好きなのか?
構図がまんま前々回の『秘密』(↓)と同じ……

個人的には蒼がお気に入りなので、環に支えられて幸せになるといいな、と思っている。
空、切ないね。
空のためにも頑張ってくれ環……


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