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マネージャーの仕事は責任を取ることである

副題

プレイヤーが安心して仕事に専念出来るチームの条件

はじめに


プレイヤーとマネージャーは職種が違う

それは誰でもわかっている

けれど本当に違うのは
仕事内容ではない

判断基準である

プレイヤーは
目の前の仕事をどう終わらせるかを見る

マネージャーは
その仕事が誰か一人に偏りすぎていないかを見る

プレイヤーは
自分の持ち場を守る

マネージャーは
持ち場が崩れない構造を作る

プレイヤーは
今日の作業を見る

マネージャーは
今日の無理が明日の崩壊にならないかを見る

ここに大きな違いがある

だからマネージャーの仕事は
現場で一番手を動かすことではない

もちろん必要なら手伝う

だがそれは本質ではない

マネージャーの本質は
プレイヤーが安心して必死になれる状態を作ること

そして
どう頑張っても駄目だった時に
最後に逃げないことである


プレイヤーの責任


プレイヤーの責任は
まず目の前の仕事をこなすことだ

品質を守る

納期を守る

手順を守る

自分の工程でミスを出さないようにする

与えられた仕事に対して
誠実に向き合う

これは決して軽いことではない

むしろ現場では
この当たり前が一番重い

体調が悪い日もある

気分が乗らない日もある

作業量が多い日もある

周囲との連携がうまくいかない日もある

それでもプレイヤーは
自分の持ち場で踏ん張る

だからプレイヤーに求められるのは
まず必死に仕事をすることだと思う

ただし
必死に仕事をすることと
無限に耐えることは違う

プレイヤーは
自分の持ち場で全力を尽くす存在であって
壊れるまで使われる存在ではない

ここを間違えると
現場は根性論になる

努力という言葉で
構造の失敗が隠される

頑張れという言葉で
作業量の偏りがごまかされる

現場が潰れる時は
たいてい誰かが弱かったからではない

弱さを言い出せない構造になっていたからだ


マネージャーの責任


マネージャーの責任とは
現場のすべてを代わりにやることではない

現場のボトルネックを見つけることだ

誰に負荷が偏っているのか

どの工程で流れが止まっているのか

誰がまだ慣れていないのか

誰なら次の仕事を任せられるのか

誰が声を出せずに無理をしているのか

誰の不満がただの甘えで
誰の不満が構造の悲鳴なのか

それを見分けることだ

マネージャーが雑用を拾う場面はある

人が足りない時
急なトラブルが起きた時
放置すれば全体が止まる時

その時に手を動かすのは悪いことではない

だが
マネージャーが毎回穴を埋めているだけなら
それはマネジメントではなく火消しである

穴を埋めることと
穴が空く構造を直すことは違う

マネージャーの仕事は
自分が頑張って現場を支えることではない

自分が頑張らなくても
現場が崩れない状態を作ることだ


マネージャーは偉いわけではない


マネージャーが偉いわけではない

マネージャーには
現場の指揮権が与えられているだけだ

指揮権とは
好きに命令できる権利ではない

結果に責任を持つために
判断権を預けられている状態である

年収が高いケースが多いのも
人間として上だからではない

責任範囲が広いからだ

見なければならない範囲が広いからだ

逃げられない位置に立つからだ

プレイヤーとして優秀だった人物が
マネージャーとしても優秀とは限らない

プレイヤーのすごさは
自分の処理能力に出る

早い

正確

ミスが少ない

難しい仕事を任せられる

これは確かにすごい

だがマネージャーが
自分で仕事を早く正確にこなしても
それだけではすごくない

それはまだ
優秀なプレイヤーの能力を使っているだけだからだ

マネージャーが本当にすごいと言われるのは
自分より仕事が早い人間を育てた時である

自分がいなくても判断できる人間を増やした時である

自分が手を出さなくても
現場が回る状態を作った時である

マネージャーの能力は
自分の手元ではなく
他人の成長として現れる

ここがプレイヤーとの決定的な違いだ


マネージャーもまた、責任を託された存在である


マネージャーは、人に仕事を任せる立場である。

けれど同時に、マネージャー自身もまた、責任を託された存在である。

会社から託されている。

現場から託されている。

プレイヤーから託されている。

チームが壊れないようにする責任。

人の努力が無駄死にしないようにする責任。

無理が一人に偏らないように見る責任。

失敗が起きた時に、誰か一人を犠牲にして終わらせない責任。

それらを預けられているからこそ、マネージャーには判断権がある。

指揮権とは、命令するための権利ではない。

責任を果たすために、一時的に預けられた権限である。

だから、マネージャーが責任から逃げた瞬間、その権限はただの支配になる。

任せることと、押し付けることは違う。

プレイヤーに仕事を任せるなら、任せた責任はマネージャーに残る。

一方で、仕事も責任もまとめて現場へ投げるなら、それは任せたのではない。

押し付けただけである。

マネージャーの仕事とは、現場に仕事を押し付けることではない。

責任を引き受けたうえで、プレイヤーに裁量を渡すことだ。

そして、どう頑張っても駄目だった時に、最後に逃げないことだ。

その意味で、マネージャーとは、責任を取る人間である以前に、責任を託された人間である。


厳しさと優しさの境界


人を育てるには
優しさだけでは足りない

しかし
厳しさだけでも足りない

ここが難しい

厳しくできないマネージャーは
一見すると優しく見える

だが本当に優しいのか

部下を傷つけたくないのか

それとも
自分が嫌われたくないだけなのか

この二つは似ているようで違う

前者は相手を見ている

後者は自分を見ている

マネージャーには
必要な時に言う勇気がいる

できていないことを
できていないと言う

危ない作業を
危ないと止める

報告が遅いなら
遅いと伝える

甘えが出ているなら
そこに境界を引く

ただし
これは怒鳴ることではない

相手を支配することでもない

厳しさとは
相手を従わせる力ではない

相手が未来で自分を恥じずに済むように
今の関係が傷つくことを引き受ける行為である

そして
厳しさの目的は
厳しさに従う人間を作ることではない

厳しさがなくても
自分で自分を律する人間を育てることだ


優しさは利用されてはいけない


マネージャーの優しさは
部下に消費されるための資源ではない

作業量を調整する

新人に猶予を与える

一度のミスを受け止める

成長を待つ

こうした配慮は
マネージャーの弱さではない

けれど
受け取る側がそれを当然だと思った瞬間
優しさは壊れる

厳しくされなかったから許された

強く言えば通る

配慮されて当然だ

助けられるのが当たり前だ

そう処理された時
優しさは贈与ではなく
支配の材料になる

だからプレイヤーにも責任がある

助けられた時に
当然だと思わないこと

配慮された時に
勝ったと思わないこと

厳しくされなかった時に
自分が正しかったと勘違いしないこと

マネージャーの沈黙や猶予を
自分の正しさの証明に変換しないこと

これができないと
人は育たない

優しさを食い潰す人間になる


マネージャー不在でも回るチーム


チームが上手く回っているなら
マネージャーが休暇を取っても問題はない

むしろ
それはチームが機能している証拠でもある

マネージャーがいないと何も決まらない

マネージャーがいないと誰も動けない

マネージャーがいないと現場が止まる

そういう状態は
一見するとマネージャーの存在感が強いように見える

けれど実際には危うい

そのチームは
人に依存していて
構造で回っていない

本当に強いチームは
マネージャー不在の時にこそ強さを発揮する

誰が何をすればいいか
ある程度わかっている

困った時に誰へ確認すればいいか
流れが共有されている

自分の仕事だけでなく
周囲の状況も少し見えている

だから
マネージャーがその場にいなくても
大きく崩れない

これはマネージャーが不要という意味ではない

むしろ逆である

マネージャーの仕事が
チームの中に浸透しているということだ


ただし責任の気配は必要である


マネージャー不在でも回るチームは強い

だが
マネージャー不在が続くチームは弱っていく

なぜなら現場は
作業だけで回っているわけではないからだ

士気がある

納得感がある

緊張感がある

安心感がある

責任の所在がある

誰かが見てくれているという感覚がある

これらは数字には出にくい

けれど
現場の空気を支えている

マネージャーがいつも手を動かす必要はない

しかし
責任の気配としては存在していなければならない

困った時に逃げない

無理が出た時に見ている

偏りが出た時に調整する

問題が起きた時に
現場だけのせいにしない

その感覚があるから
プレイヤーは安心して仕事に踏み込める


出世とは少数派になること


マネージャーになるということは
少数派になることでもある

プレイヤーの頃は
現場の不満を同じ温度で共有できる

あの作業はきつい

あの指示はおかしい

今日は人が足りない

そう言い合うことで
気持ちは少し軽くなる

だがマネージャーになると
それだけでは済まない

不満はわかる

しかし
全てを通すわけにはいかない

苦しさはわかる

しかし
甘やかしすぎれば本人の成長を止めてしまう

現場の声は聞く

しかし
声の大きさだけで判断してはいけない

ここにマネージャーの孤独がある

マネージャーとは
現場を捨てた人間ではない

現場の感情を理解しながら
その感情と同じ場所には留まれなくなった人間である

だから出世とは
偉くなることではない

同じ温度で群れられなくなることだ

そして
それでも現場を見捨てないことだ


マネージャーを現場に引きずり出すということ


それは例えるのなら、スラムダンクの山王戦で
安西先生がコートに立つようなものだ

もちろんバスケのルール的には不可能だが、

監督が選手の代わりに走り出したら
それはもうチームとして危うい

監督は
選手の代わりに走るためにいるのではない

選手が走れる状態を作るためにいる

選手が迷った時に
必要な一言を置くためにいる

流れが崩れそうな時に
全体を見て判断するためにいる

だから
マネージャーを現場に引きずり出すことは

仙道に恥と言われるかもしれない

ただし
その恥はプレイヤーだけのものではない

チーム設計の恥である

マネージャーが出なければ回らない状態を
放置してきたことの結果でもある

一時的な応援と
構造的な破綻は違う

ここを見誤ると
現場はいつまでも火消しで回る


責任とは怒られることではない


マネージャーの仕事は責任を取ること

この言葉は単純に聞こえる

けれど
責任を取るとは
ただ怒られることではない

もちろん、怒られることもあるだろう

ただ謝ることでもない

もちろん、謝ることもあるだろう

そして、誰かを叱って終わりにすることでもない

本当の責任とは
失敗を個人の根性不足に還元しないことだ

なぜ回らなかったのか

なぜ遅れたのか

なぜ品質が落ちたのか

なぜ一人に負荷が偏ったのか

なぜ声が上がる前に気づけなかったのか

なぜ同じ問題が繰り返されたのか

そこまで引き受けることが
責任を取るということだ

責任とは
失敗した人間を探すことではない

失敗が起きた構造を引き受けることだ

そして
構造を引き受けるとは
次に同じ失敗を起こさないために
現場を作り替えることである


プレイヤーが安心して仕事に専念出来る条件


プレイヤーは必死に仕事をする

けれど
人は安心がなければ本気になれない

どれだけ頑張っても
最後は自分のせいにされる

無理な作業量でも
できなかった人間が悪いことにされる

教育が足りなくても
覚えが悪いと言われる

手順が曖昧でも
確認しなかった方が悪いと言われる

そんな現場では
人は本気で踏み込まなくなる

本気になるほど損をするからだ

強いチームには
暗黙の信頼がある

プレイヤーは全力でやる

マネージャーは最後に逃げない

田岡監督のように

「敗因はこの私!!」

と認められるようになること

この信頼があるから
プレイヤーは自分の仕事に集中できる

どう頑張っても駄目だった時
マネージャーが前に出る

現場だけの責任にしない

個人の失敗だけにしない

構造として何が悪かったのかを見る

その安心感があるから
プレイヤーは必死になれる


弱いチームと強いチーム


弱いチームは
マネージャーがいないと崩れる

普通のチームは
マネージャーがいれば回る

強いチームは
マネージャー不在でも回る

そして本当に強いチームは
マネージャーが戻ってきた時に
さらに強くなる

なぜなら
マネージャーは現場を支配する存在ではなく
現場の力を引き出す存在だからだ

現場に依存させるのではなく
現場が自走できるようにする

自分がいないと回らない状態を誇るのではなく
自分がいなくても回る状態を作る

そのうえで
問題が起きた時には前に出る

これがマネージャーの強さだと思う


おわりに


プレイヤーの仕事は
目の前の仕事に誠実に向き合うこと

マネージャーの仕事は
その誠実さが無駄死にしない構造を作ること

そして
どう頑張っても駄目だった時に
最後に逃げないこと

マネージャーは偉いのではない

責任を預けられているだけだ

プレイヤーは下なのではない

現場を成立させているだけだ

この二つが噛み合った時
チームは強くなる

優しさだけでは
人は育たない

厳しさだけでは
人は自律しない

必要なのは
優しさが搾取されず
厳しさが支配にならず
プレイヤーが自分の足で立てる場を作ることだ

マネージャーの仕事は
現場で一番働くことではない

現場が最後まで働けるようにすることだ

そして

最後に逃げないことだ

責任を取る人間がいるから
人は安心して必死になれる

チームの強さとは
そこにあるのだと思う


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