育児が難しいと感じる夜に。食べ物を粗末にした娘を叱りすぎた僕の「だれやめ」|だれやめ語り
プシュッ、という小さな音が、静まりかえったリビングに響く。
今、おいちゃんの手元にあるのは、いつもの第3のビール。
だけど、今夜のこれは、なんだか喉越しが重たいんだ。
妻も、5歳の娘も、ようやく深い眠りについた。
家の中はしんと静まり返っているけれど、おいちゃんの心の中だけは、まだざわざわと波立っている。
理由は、わかっている。
さっき、娘をひどく怒鳴りつけてしまったからだ。
「正論」という名の武器で、小さな背中を追い詰めた
きっかけは、夕飯の野菜だった。
「ママが作ったごはんでしょ。残さず食べなさい」
「やだ! これ、にがいもん!」
そんな、どこの家庭にでもあるような、ありふれた押し問答。
だけど今夜は、娘の態度が少しだけ度が過ぎた。
お皿の端っこに野菜を追いやって、最後にはわざと床に落とすような仕草を見せたんだ。
おいちゃんは、食べ物を粗末にするのが大嫌いだ。
それだけは、親として、一人の人間として譲れない「正義」だと思っている。
「いい加減にしなさい!」
自分でも驚くような怒鳴り声が出た。
いつもなら、娘が「ごめんなさい」と涙を浮かべれば、「次は気をつけるんだよ」って抱きしめて終わる。
それが、おいちゃんの「てげてげ(適当)」な教育方針だったはずなのに。
どうしてだろう。
今夜は、どうしても許せなかった。
「虫の居所が悪かった」なんて、大人の勝手な言い訳だ。
仕事の疲れか、ストレスか。
娘が泣きながら「ごめんなさい、パパ……」と小さな手を伸ばしてきても、おいちゃんはその手を跳ね除けて、寝るまで冷たい態度を貫いてしまった。
寝息に混じる、消えない「ヒック」という音
一息ついて、さっき、こっそり寝室を覗いてきたんだ。
娘はもう、夢の中にいた。
だけど、その小さな肩が、ときどき「ヒック、ヒック」と不規則に揺れている。
寝ているのに、まだ嗚咽(おえつ)が残っている。
泣き疲れて、パパに拒絶されたまま、逃げるように眠りについたんだな。
その姿を見た瞬間、胸の奥をぎゅーっと雑巾絞りにされたような、ひどい自己嫌悪が襲ってきた。
「おいちゃん、何やってんだよ……」
5歳の子どもに、大人の正論を全力でぶつけてどうする。
教育という名目で、ただ自分のイライラをぶつけていただけじゃないか。
暗い部屋で、娘の寝顔を眺めながら、ただただ申し訳なくて、情けなくて。
本当は、あの時抱きしめてあげればよかった。
「野菜、嫌いだったね。でも、一生懸命作ったんだよ」って
目線を合わせて、同じ高さで話せばよかったんだ。
ビールの苦味は、明日の「優しさ」に変えればいい
今、グラスに残ったビールを見つめている。
この苦味は、間違いなく「後悔」の味だ。
だけどね。
こうして一人で反省文を綴りながら思うんだ。
僕らは神様じゃない。完璧な「理想のパパ」なんて、そうそうなれるもんじゃない。
明日になればまた仕事で理不尽なことに頭を下げ、家ではパパとして振る舞い、板挟みの毎日を必死に生きている。
たまには、感情が溢れてしまう夜だってある。
大切なのは、その「溢れたもの」をそのままにしないこと。
こうして一人でビールを飲みながら、「自分は最低だ」って思えるのは、君がそれだけ娘を愛している証拠なんだよ。
今夜のビールの苦味は、そのまま飲み込もう。
この苦さを忘れないようにして、明日の朝、娘が起きてきたら、世界で一番優しい声で「おはよう」と言おう。
もし娘がまだ少し怖がっていたら、思いっきり抱きしめて
「昨日はごめんね。パパが悪かった」 って、おいちゃんの不器用な正論を、特大の愛情で上書きしてあげればいい。
今夜も一日、お疲れ様。不器用な仲間たちへ
さて、ビールも空いた。
そろそろ、おいちゃんも眠ることにするよ。
世の中のパパさんたち。
君も、もし今夜、何かを後悔して一人で飲んでいるなら。
その一杯を飲み干したら、自分を少しだけ許してあげておくれ。
反省できるパパは、きっといいパパだ。
明日は、今日より少しだけ「てげてげ」に。
優しい風が吹く一日になりますように。
それじゃあ、おやすみなさい。
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