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食育は“だれやめ”のついでに。晩酌パパの味見は、世界一の食育教室|だれやめ語り

今夜も台所で、氷の音を響かせて。

「お疲れさん、自分」

カラン、とグラスの中で氷が踊る音。
これが、おいちゃんの一日の「句読点」です。
外で仕事をしていると、どうしても「誰かのための自分」でいなきゃいけない時間ばかりになります。
中間管理職なんてやってると、上からは数字を詰められ、下からは不満を吸い上げられ。家に帰り着く頃には、心はもうカラカラに乾いた干物状態ですよ。

そんな時、一番の特効薬になるのが、晩酌。
鹿児島弁で言うところの「だれやめ」。
「だれ(疲れ)」を「やめ(止める)」るための、魔法の時間。

おいちゃんは、この時間が何よりも大好きです。
で、ただ座って飲むだけじゃもったいない。
台所に立って、お気に入りの包丁を握り、トントントンとまな板を叩く。
自分のためのつまみを作りながら、ついでにストック用の副菜なんかも作ってみる。

そんな時、ふと思うんです。
「あぁ、この匂い、どこかで嗅いだことあるなぁ」って。


「母の味」という名の、無意識の英才教育。

おいちゃんの母は、とにかく「外に食べに行く」のではなく「自分で作る」人でした。

テレビで見かけた珍しい料理も、家族がふと口にした「あれが食べたい」という一言も。普通なら「じゃあ、どこかのお店に食べに行こうか!」となるような場面でも、母は当たり前のように台所に立ち、驚くほど美味しい一皿に変えてしまうんです。

今の流行りのような効率やコスパではなく、「自分の手で美味しく作る」ことに情熱を注いでいた母。家の中に満ちていたのは、そんな母の魔法のような手料理から漂う、幸せな匂いの記憶でした。

「ちょっと味見する?」

そう言って、母がくれる料理中の一口がなんともまぁ特別で美味しかった。あの時の「旨い!」という原体験が、今の食いしん坊なおいちゃんを作ったんだと思います。

今思えば、あれが最高の食育だったんだよね。
教科書を読まされたわけじゃないし、五大栄養素の表を暗記させられたわけでもない。ただ、作る人の楽しそうな背中と、部屋いっぱいに広がる出来立ての匂い、そして味見をさせてもらう時のワクワク感。

レシピなんて教わらなくても、その「匂いの記憶」さえあれば、大人になった時に自分の心を満たす料理が作れるようになる。母は、言葉ではなく背中で、おいちゃんの食の土壌を耕してくれていたんだなぁと、今になって染みじみ感じるわけです。


「パパ、味見!」は、世界一優しい食育の教室。

さて、今のおいちゃん家の話。
台所で焼酎を舐めながら、揚げ出し豆腐なんかを揚げていると、リビングのほうから「トコトコトコ……」という小さな足音が聞こえてきます。

「パパ、なにつくってるのー?」
「あ、それ、美味しそう!味見する!」

やってきました、小さなハイエナたち。
おいちゃんの晩酌のつまみは、基本、酒が進むように味がしっかりしています。それなのに、子供たちはなぜかそれを一番欲しがる。

「これ、ちょっと辛いけど、美味しい!」
「パパの作るの美味しい!」

なんて言いながら、パパ専用のはずの皿を半分以上空にしていく。
そんな姿を見ると、親としてはやっぱり鼻が高い。
でもね、ここで少しだけ、心の片隅でチクッとするんです。

「……これ、子供にはちょっと塩分が多すぎないか?」
「呑兵衛が好むようなもんばかり食べさせて、健康教育としてどうなんだ?」

そんな葛藤。
真面目なパパさんなら、一度は感じたことがあるんじゃないでしょうか。

おいちゃん「食育」について少し調べてみました。
農林水産省が掲げる定義の中には、栄養バランスだけじゃなく
「食に対する感謝の念」や「食を通じたコミュニケーション」という言葉が並んでいます。

つまり、塩分計を持ち出して「ダメ!」と遠ざけることだけが正解じゃない。 パパが一生懸命(そして自分も楽しそうに)作っているものに子供が興味を持ち、一緒に「美味しいね」と笑うこと。
それ自体が、子供の感性を育てる立派なメリットなんですよ。


知識よりも「おいしい」という記憶を届けたい。

もちろん、子供たちの健康は大事です。
おいちゃんも、子供に分ける時は少し薄めたり、野菜を多めにしたりと、裏でこっそり「てげてげ(適当)」なりに調整はしています。

でも、それ以上に大事にしたいのは
「食べることって、こんなに楽しくて、幸せなことなんだ」という記憶を、彼らの心に刻むことです。

世の中には、食にまつわる難しい知識が溢れています。
これが体に良い、あれは悪い。
オーガニックじゃなきゃいけない、添加物は毒だ。
もちろんそれらを知ることも大切だけど、知識で頭をでっかちにする前に、「誰かが自分のために作ってくれた料理の温かさ」を知っている子のほうが、きっと人生を強く歩んでいける。

将来、彼らが大人になって、仕事で大きな壁にぶつかった時。
ふと、台所で酒を飲みながら笑っていたパパの姿と、あの出汁の匂いを思い出して、「よし、帰って何か旨いもんでも食べて、明日も頑張るか」と思ってもらえたら……。

それこそが、おいちゃんが今の「だれやめ」を通じて、子供たちに伝えられる最大のギフトなんじゃないかな、なんて。
焼酎のグラスを傾けながら、大真面目に考えちゃうわけです。


明日もまた、笑って食卓を囲めるように。

今日も、我が家の台所は賑やかでした。
最後にはおいちゃんのつまみがほとんど子供たちの胃袋に消えていき、おいちゃんは結局、漬物だけで酒を飲むことになりましたけどね。
まあ、それもまた良し。

もし、今これを読んでいるパパさんが
「自分は料理も苦手だし、食育なんて大層なことはできない」なんて悩んでいるなら、こう伝えたい。

大丈夫、安心してください。
コンビニのお惣菜を皿に盛り付けるだけでもいいんです。
それを「これ、パパが選んだ最高に旨い唐揚げだぞ!」って言いながら、家族で笑って食べる。

それだけで、立派な食育ですから。

「てげてげ」でいいんです。
完璧な栄養バランスを目指して親がイライラするより、少しぐらい味が濃くても、笑顔で「美味しいね」と言い合える食卓のほうが、よっぽど子供の栄養になります。

さあ、おいちゃんも今夜は、残った煮汁で最後の一杯。
明日は、子供たちがもっと驚くような、最高に旨い隠し味を仕込んでやろうかな。

今日一日、本当におやっとさぁ(お疲れ様)。
明日が、いい日になりますように。

かんぱーい。

Instagram(@oichan_dareyame)で「晩酌レシピ」新中

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