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漫画家アシスタント物語 諦めま章〈18〉 連載地獄と地獄の人間国宝?

 
《上の写真: 50年以上前にジョージ先生と当時のスタッフが旅行した時の写真。中央手前の人物が超売れっ子だった頃のジョージ先生、背後の人物はアシスタントの一人。若いジョージ先生には、まだトレードマークの口ひげがない。この海が熱海の海‥‥連載を打ち切って逃げた海です。1970年夏 》
            < この諦めま章〈18〉は、文庫本約11ページ分 >

 
 
               その35

   《 漫画家アシスタントが・・・天才について書く!? 》

漫画を描いていて死にたくなる事が、一度や二度はあるものです‥‥‥‥ 特に連載を持っているような人ならそうした経験者が多いかと思います。

今回は、連載漫画を持っている‥‥ ある意味、漫画家志望者の「 勝ち組 」‥‥‥‥ そんな羨ましい方々についての話をしたいと思います。

毎週、ジャンジャン、預金通帳に100万円単位で現金が振り込まれる‥‥ といった「 勝ち組の中の勝ち組 」とも言うべきご奇特な方もおられます‥‥‥‥

私が勤める秋山プロの先輩の中にも、週刊誌で連載を持った事のある「勝ち組」( 一歩手前? )の方がおられたのですが‥‥‥‥

「 小池ちゃん、酒でも飲まなきゃやってられないよ~っ! 」

‥‥などと、ホトホト漫画を描く苦労に押しつぶされてしまったのかと思われるほど、苦しそうにこぼしていました。( 40年前、週刊連載の稿料は、月産80枚で月々手取りで40~50万 )

これは、「 愚痴 」というよりも‥‥‥‥ 「 叫び 」に近いものがありました‥‥‥‥

ただ‥‥ この苦しみばかりは、経験しないとわかかりません。

私は、いまだに「 連載 」の経験がないので、この「 連載の苦しみ 」というものがよく分かりません。

今週の分はギリギリ間に合ったが‥‥‥‥ 来週の分、何を描いたらよいのか全然カラッポの状態なのに、時間だけはどんどん過ぎていく‥‥‥‥ 「 締切り 」という時限爆弾を抱えているのに逃げ出す事も出来ない

「 センセ~、できましたか~? 」

という編集員からの電話におびえる毎日‥‥‥‥ それが、どれほどの苦しみなのかを察するのは難しいものです。

原稿を待つ編集員、そして、その背後には、本の出版を待っている100万人の読者が‥‥‥‥

「 小池ちゃん、大変なんだぜ~っ! 」

‥‥と、言われると‥‥‥‥

「 そうですかぁ‥‥ 」

‥‥と、答えながら‥‥ つい笑ってしまう。

毎回、ストーリーに苦しんで、アイデアを搾り出すのに四苦八苦する漫画家もいれば、絵を描くのに手間取って、まったく時間がなくなってしまう事で苦しむ漫画家もいます。( 両方同時に苦しむ人もいます )

私が知る先輩漫画家でエロ漫画を連載していた人がいるのですが‥‥

その人は、毎月一回の連載が2本、ですから毎月40ページほどの原稿を描いていました。

40年ほど前の話ですから、当時の手取り月収は20万円ちょっとだったかと思います‥‥‥‥ ただ、これでは、生活するだけでアップアップだったと思います。

数年間で体を悪くして漫画を止めてしまいました。

数年間の苦労で貯金でも出来ていたら良かったのですが‥‥‥‥

月々、40~60ページの原稿料だけで、単行本収入もない「 貧乏エロ漫画家 」にとって、「 貯蓄 」などは夢のまた夢だったのではないでしょうか‥‥‥‥

ところで、週刊誌の連載の場合ですと、漫画制作の過酷さは、月刊誌の比ではありません。

最初の1日で作品のストーリーを作って、翌日には絵コンテ( シナリオ )、次の日は、下書きやペン入れ、さらにその後は背景画と仕上げ作業‥‥‥‥

一週間のうちに「 休日 」が一日でも取れるならラッキーといったハードな日々が延々と続くわけです。

私が「ヤングジャンプ」でデビューした頃には、アシスタントをしながら漫画を制作するのに一本で2~3ヶ月かけていました。

それでも、寝不足になるほど毎日がハードでした‥‥‥‥ しかし、制作できた漫画量は、月々、たったの8枚~10枚!

まさに、漫画の「 力量 」とは‥‥‥‥ 画力や迫力ではなく、「 生産力 」そのものなのです!

私の師匠であるジョージ秋山は、30歳の頃には、少年マガジン、サンデー、キング、ジャンプ、チャンピオン、各紙に同時連載を持ち、月刊誌の連載さえ同時( ! )にこなしていたのです。

その生産力は、毎月、毎月、毎月、毎月、毎月‥‥‥‥400枚!( 並の漫画家なら月150枚でもダウン寸前 )
 

師匠と当時の思い出話( 週刊誌5誌同時連載の頃 )をしていた時でした‥‥‥‥ 問題作の「銭ゲバ」や「アシュラ」を連発した時代です‥‥‥‥

私の「5誌同時連載をしていた頃って、何を考えていたのですか?」
という質問に‥‥‥‥

「 何考えてたかって? 」

当時を思い出しながら‥‥‥‥ などと言ったのんびりした雰囲気ではなく、師匠は即座に回答!

「 何も考えてねぃ~~よっ! 」
‥‥とキッパリと言い切る。

‥‥‥‥私は、この人( ジョージ先生 )を、同じ人間だとは思っていません。

どう見ても、どう考えても‥‥‥‥

我々と同じ「 人類 」とは思えないのです!
 
 
「 何も考えてねぃ~~よっ! 」と、言った直後に、刀でバッサリと切り捨てるように‥‥‥‥
 
「 考えてるヒマなんか無ぃ~~~んだよっ!! 」
 
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥もはや‥‥‥‥‥‥
 
‥‥‥‥‥‥重要無形文化財である。 

いや、人間国宝かも‥‥‥‥


私なんか、何年も悩み続け‥‥ 考え続け‥‥ もがき続けても‥‥ 一本も売れる漫画が描けなかったのに‥‥‥‥

 
 

 


最近の仕事場を撮影したものです。私の使っているデスクのすぐ横の風景です。中央の人形は、先生の有名な漫画作品のキャラクターグッズです。携帯写真で撮影しました‥‥2013年7月、撮影

 
              その36

 《 漫画家アシスタントが・・・キャラクターに同情する!? 》

今回のブログのアップがすっかり遅くなってしまったのは‥‥ 最近のネタ不足が原因でして‥‥‥‥( 2013年のgooブログ時代の話です )

通常、ブログというものは‥‥ 皆さん、日記のように日々起きた出来事を書きつづっている様ですが‥‥ ( または、社会や映画の感想など )

私は、どうも‥‥ 今日、何を食べたとか、どんな映画を見たとか、こんな本を読んだとか、誰に会ったとか、そうした日常を日記風に書く事が出来ないというか‥‥‥‥ 書く気が起きないというか‥‥‥‥

何故なら‥‥

私自身は、人の書いたブログのそうした「 日記的 」な文章を読むのが苦手なのです。 面白い日記に出会うと、喜んじゃうんですが‥‥‥‥

ちなみに‥‥

私はいつも、ブログに何を書くのかで追い詰められているような気分で過ごしているのですが‥‥‥‥

過去の印象深い思い出も尽きてしまい‥‥‥‥ せめて月に一回あるかないかの面白い出来事でも書きたいものと思っていたのですが‥‥‥‥

その「 面白い出来事 」自体が年に何回も起きはしないし、また、仮に起こっても人様のプライバシーの問題やら何やら面倒が多くアップ出来ない事が多いのです。

例えば‥‥

学校( ※参照 )での出来事など‥‥ ユニークな学生の話や、他の先生方の話など、書きたくても書けない‥‥‥‥ もし、ブログに書こうものならただで済む訳もなく‥‥‥‥

せいぜい、アシスタントの仕事( ※参照 )の話などをクビになるのを覚悟でチョコチョコと書くのがやっと‥‥‥‥ といった有様です。

いかに私の生活がマンネリ化した退屈な日常であるかをお察しいただけたら‥‥ ありがたいのですが‥‥‥‥

‥‥このような言い訳記事で‥‥‥‥ いつまで誤魔化せるものでもありませんので‥‥‥‥ そろそろ本題に‥‥‥‥
 
 
今回も‥‥‥‥ 極々最近の話題を‥‥‥‥
 
でも、これ書いたら‥‥‥‥ 来週はどうなるんだろう( ネタが何にもない!)‥‥‥‥ 財布が空ッポになった時の気分に似ている‥‥‥‥ でも書くしかない‥‥‥‥
 
 
ここ数年のアシスタントの仕事といえば、小学館の「 ビッグコミック・オリジナル 」という雑誌に連載する「 浮浪雲 」( ※参照 )しかありません。

それを、私ともう一人の先輩アシスタントの二人で仕上げているわけです。

先日、仕上げた「 浮浪雲 」には、二人の中年男( 江戸の町人 )が登場しました。

その一見、風采の上がらない( バカそうな )男がなんだか私と先輩の事のように思われたのですが‥‥‥‥

ジョージ先生の漫画の背景を描いていると、時々、この登場人物は実在の誰々さんではないか‥‥‥‥ とか、私の事を描いているのではないか‥‥‥‥ とか、考えてしまうのですが‥‥‥‥

ほとんど、単なる「 憶測 」に過ぎず、作者の意図とはまったく違うものなのですが。

その日も、登場人物( 貧乏・怠惰・馬鹿 )である二人の救われない男たちが、私と先輩アシスタントのイメージと重なったりしました‥‥‥‥。

漫画の中で、この二人( アゴのデカイ男と、出っ歯の男 )が酒を飲みながら話し合っています‥‥
 
アゴ 「 おめぇ カカアとやってンのか? 」
出っ歯「 ん‥‥ 月に2、3回な 」
アゴ 「 月に2、3回もかよ!? 」
出っ歯「 酒を飲むか、カカアとやるか、他にやることなかんべ 」
 
私がこの原稿の背景を描くわけですが‥‥‥‥
 
この二人がいったいどんな場所で酒を飲んでいるのか分からないのです‥‥
 
『 たぶん、どちらかの男の自宅だと思うけど‥‥ どんな家だろう? 』

私は、原稿を持ってジョージ先生の個室へ向かいます‥‥‥‥

例の如く窓に向かってデスクを置く先生に、背後から緊張しつつ声をかけます‥‥‥‥

それにしても、私は、いつも( 40年近く! )先生に声をかける時に、まるで虎の尾を踏むような緊張を強いられるのです。
 
‥‥ただの一度だって気軽に声をかけた事がありません!( ホントなのです。涙 )
 
「 ‥‥センセ‥‥‥‥ 」
虎の尾をなでるようにしながら‥‥‥‥

「 ‥‥二人がいる‥‥ この部屋は‥‥ 長屋で良いのでしょうか? 」

虎は、ムックリと私にその浅黒い横顔を見せながら‥‥‥
「 ‥‥‥‥‥‥う‥‥‥‥ 長屋だな 」

静かに‥‥‥‥ 聞き取りにく低音が聞こえる‥‥‥‥ とりあえず噛み殺されなかった事を喜びつつ‥‥‥‥‥‥

「 キレイな長屋ですか、それともボロ長屋ですか? 」
「 ‥‥‥‥ン? 」

虎は、臭いゲップでも吐き出すように‥‥‥‥
「 こりゃ‥‥‥‥ ボロ 」
「 はい 」
「 こいつらなんかボロ長屋だよ! 」

「 ボロ長屋 」は、予想はしていたのですが‥‥‥‥‥‥‥‥
「 こいつらなんか 」という言い方に‥‥

私は何故か‥‥‥‥ この二人の登場人物が他人には思えないような‥‥‥‥なんだか二人がとても気の毒なような‥‥‥‥ 複雑な心境になったものです‥‥‥‥‥‥

天才的な作家にとっては、沢山の作品を量産することや、人気を取る事がそれほど難しい事だとは思っていない様子です。( ホームラン王がホームランを一本打つのや、首位打者がヒットを一本打つのと同じ様なものかも知れません )

面白い作品を作れるのが当たり前だと思っている。 そのため、作れない人間( 私は、極々普通の人々だと思うが )は「 牛 」「 バカ 」「 根性なし 」「 腐れ外道 」「こいつら」などと侮蔑されるわけです。
 
さて‥‥‥‥
 
今回の結論は‥‥‥‥‥‥
 
天才とは‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 人権侵害である!

 
  
 
 

      「 漫画家アシスタント物語 諦めま章〈19〉」へつづく・・・・

                  「諦めま章〈17〉」へもどる‥‥

                        「もくじ」 へ‥‥

  

 

 

~~~ 参照 ・ 諦めま章〈18〉 ~~~( 読んでも、読まなくても!)

 【その36】
・学校 : 私が非常勤講師として漫画背景を教えている東京の繁華街にある美術系大学。一見すると10階ほどの商業ビルにしか見えませんが、内部は、全階、教室や演習室、事務室などになっています。教授として漫画家松本零士先生が教えていました。
・仕事 : 1978年から続けている秋山プロでのアシスタント業。仕事場は東京目白にあり、スタッフは私を含めて現在2人。連載漫画は1誌のみ。
・「浮浪雲」 : 1973年~2017年、小学館「ビッグコミックオリジナル」に連載。第24回小学館漫画賞、二度のテレビドラマ化。舞台化、アニメ映画化。ニューファミリー娯楽時代劇。

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