漫画家アシスタント物語 諦めま章〈19〉 原稿が時々消える秋山プロ?
《上の写真: 私が住むマンションからもさほど遠くない南浦和の夕焼けを撮影しました。京浜東北線沿い にある旨いラーメン屋で食事をした後、線路を超える高架橋の上から赤い空に感動しながらの撮影です。2013年、撮影 》
< この諦めま章〈19〉は、文庫本約10ページ分 >
その37
《 漫画家アシスタントが・・・俗説について論じる!? 》
風邪をひいて、今週は咳が止まらない‥‥‥‥( 2013年、夏のお話です )
タイピング中も、咳が出る‥‥ とりあえず‥‥ ゴホッ‥‥
今回の話は‥‥ ゴホッゴホッ‥‥
少し、短めに‥‥‥‥ すいませ‥‥ ゴホッ‥‥
先日、目白にある秋山プロへ出勤すると‥‥
ドアに「 本日休み 」の張り紙があり、クソ暑い目白通りを駅に戻ろうとした時‥‥ アシスタントの先輩氏と会ったので、一緒に目白駅まで歩きました‥‥‥‥
焼かれる様な日差しと、ダラダラと背中を流れる汗‥‥ 疲れ果てた中年二人が歩く15分ほどの間に、彼がこう訊いてきました。
「 小池君、学校の方は行ってんのケ? 」
仕事場でも会話の少ない先輩アシスタントですが、外へ出てもあまり話す事はなかったのですが‥‥( 年に1回か2回、喫茶店でちょっと話す程度 )
暑さをまぎらわすためか‥‥ 久しぶりに私に質問を投げかけてきました‥‥‥‥
「 はぁ‥‥ 行ってますよ‥‥ 」
私が仕事の始まるお昼の前に、一番早い1時間目の授業( ※参照 )を週に数回担当してる事は、彼も知っていたので、まだ続いているのか質問したのだと思います‥‥
「 漫画の学生って、男女の比率はどうなんじゃろ~の? 」
「 女子が‥‥ 7割くらい‥‥ ですね 」
「 えっ? 女の方がそんなに多いのケ? 」
「 圧倒的に多い‥‥ ですね 」
「 やっぱり、ブスばっかりなんじゃろ~か? 」
こうした一種の俗説( 偏見 )『 漫画を描く女に美人は少ない 』は、なぜか随分と昔から語り継がれている様ですが‥‥‥‥
『 漫画を描く事と、顔の造作は関係ね~だろ! 』
‥‥などと正論を先輩にぶっ叩く勇気のない私は‥‥
「 はぁ‥‥ まぁ‥‥ でもぉ‥‥ 可愛い子もいますよ 」
そんな返事をしながら‥‥
『 俺にとっては‥‥ 若い学生たちは皆、自分の子供みたいなもので‥‥ 男子も女子も可愛いくてしょうがないんだけどな‥‥ 』
‥‥そんな事も同時に頭に浮かんでいるのですが‥‥‥‥
目白駅からJR山手線で池袋へ‥‥ その車内の中でも会話が続きます‥‥
「 そうケ~ イイ女もおるんケ~ 」
「 はぁ‥‥ 」
私は、イ~加減な性格なので、問題を難しく考える事を避けるように黙っていました‥‥‥‥
「 ええなぁ‥‥ 皆、名前なんか覚えちょるんケ? 」
「 ダメですね‥‥ 一人か二人位しか‥‥ 覚えられなくて‥‥ 」
担当する学生の総数は60人( クラスは3つに分かれている )ほどで、週一回、半年間だけの授業では、なかなか全員の名前と顔は覚えられない。
私は、特に電話番号だの名前だのといった「 記憶する 」といった事がまるっきりダメな人間で、20人ほどのクラスの中で、4~5人ほどの名前と顔を覚えるのがやっとなのです。
電車のつり革につかまりながら先輩アシスタント氏は、ニヤリと笑って私に顔を向ける‥‥
「 そりゃ‥‥ いかんの~ 差別じゃの~! 」
「 ‥‥‥‥‥‥? 」
「 可愛い子だけ覚えよるんじゃろ~がぁ‥‥ 悪い奴じゃの~! 」
あまりに先輩アシスタント氏が嬉しそうなので、否定する事を躊躇していると‥‥ 電車が池袋に到着‥‥
「 じゃ‥‥ 明日 」
「 おう! 」
そう言って、元気に宇都宮線のホームへ向う先輩アシスタント。
大宮の先の先の先、随分と遠くから通っている彼は、もうすぐ60歳になる‥‥‥‥ 息子一人、奥さんは数年前に男と逃げたまま帰らない。

その38
《 漫画家アシスタントが・・・失くした原稿を発見する!? 》
さて‥‥ ゴホッ
すいません‥‥ 空咳だけが‥‥ まだ止まりません‥‥
もうひとつ仕事場のお話を‥‥ ゴホッ‥‥
実は、今日の出来事なのですが‥‥‥‥
仕事は、いつもの様に「 浮浪雲 」の話なのですが‥‥
物語は、モテない男が主人公の「 雲 」にどうやって女にモテるのか訊くというあっさりしたもの。
事件も、冒険も無い、アクションも、キャラクターの動きも無い‥‥ ただ会話劇が進んでいるだけのお話。
物語は変化に乏しいのですが、背景画を担当する身にとっては、単純で簡単な仕事です‥‥
今日は、仕事の2日目で、前日までに仕上げた9ページ以降( つまり、今日は10ページからラストまで )を仕上げる事になります‥‥‥‥
すでに今日の分の原稿( 6ページ )には、先生のキャラクターが入れられていました。
私は、その背景を描くために6枚の原稿の中から‥‥ 「 p11 」を手に取り、前のページとの繋がりを確認しようとして、「 p10 」を探したわけです‥‥‥‥
ところが‥‥‥‥
どこをどう探しても「 p10 」が‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥無い!
私の向かい側に座る先輩アシスタントに‥‥
「 10ページはそっちにありませんか? 」
「 ‥‥え? 10け~? 」
「 はい‥‥ 10ページです 」
「 んんん‥‥‥‥‥‥ ね~の~ 」机の上、引き出しの中を探し回る。
「 ヤバイですよ‥‥‥‥ 10ページが抜けてますよ! 」
「 そりゃヤバイの~! 」( あまり驚いた風でもない、年に一度はこんな事もあるからだ )
‥‥というわけで、私は前日に完成させている「 p9 」とまだ背景画を入れていない「 p11 」を持ってジョージ先生の部屋へ‥‥
最近は、すっかり薄くなった頭髪も真っ白くなり、後ろ姿も小さく見えるジョージ先生である‥‥
「 セ‥‥ ン‥‥ セ‥‥」
私は、いつもの様に細心の注意を払って静かに優しく声をかけると‥‥
「 ‥‥‥‥‥‥ん? 」
「 先生、この9ページと11ページなんですが‥‥‥‥ 」
私は、先生に「 p9 」と「 p11 」を並べて示す‥‥‥‥
「 話が続いている様なんですが‥‥‥‥ 間の10ページが無いんです 」
「 あり‥‥‥‥‥‥? 」2枚の原稿を見比べている。
少し間をおいて‥‥‥‥
「 これぃ‥‥ は‥‥‥‥ この9ページが10ページだな! 」
「 では、8ページが9ページになり、7ページが8ページになる‥‥と? 」
「 んん‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 」
なぜ、前日仕上げた9ページの原稿が、突然、10ページに増えるのか意味が分からないが‥‥‥‥
ジョージ先生と話していると、時々、わけが分からなくなる事があるのは、いつもの事。
私は、少し前頭部に熱を感じながら、先生の言葉に相槌をうっていると‥‥‥‥
「 ま‥‥‥‥ いいよ 」
「 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥? 」
「 いいんだよ 」
「 ‥‥‥‥はい 」
熱が出てきた私の頭はすでに思考が停止していて、ただ、納得するだけ‥‥‥‥ するとジョージ先生、目が覚めた様に‥‥‥‥
「 良くねぃ~な! 」
「 はい‥‥‥‥ 」
「 こりゃ、良くねぃ~よなぁ! 」
「 はい、良くないと思います‥‥‥‥ 」
結局、1ページ足らないという事で、明日、不足分の原稿を追加して仕上げるという事で決着。
こうした事は、初めてでない‥‥‥‥
実は、2年前には、もっと不思議な( イ~加減な! )事があったのです‥‥‥‥!
2011年の5月某日‥‥
この日、仕事場の空き机に置かれた古雑誌の間から、1ヶ月前( 2011年4月 )に描いた原稿の「 p16 」が出てきたのです‥‥‥‥!
編集部へ持って行かれてたはずの原稿が‥‥‥‥‥‥ 突然、出てきてしまった!
つまり、1ヶ月前に描いた連載漫画「 浮浪雲 」( 22ページ )には、「p16」が無かったという事になります!?
急いで、1ヶ月前に出版された「 ビッグコミック・オリジナル 」を確認すると‥‥‥‥ 確かに、16ページ目が抜けている‥‥‥‥ そのため、話が少し飛んでいる!
ただ、話が少し飛んでいるが‥‥‥‥ ストーリーに大きな欠陥が生じているわけではないので‥‥‥‥ 何ンとなく読めてしまう!
それにしても、アシスタントだけではなく、先生本人も、担当の編集員も、誰も気付かなかったのか!?
さらに‥‥‥‥ 「 p16 」が抜けているのに、ページ数はなぜか22ページ( 規定数 )ある!
つまり‥‥‥‥
偶然にもジョージ先生( アシスタントも )は、間違って23ページ描いていた事になるのだ!
古雑誌の間から出てきた「 p16 」は、キレイに仕上げられていて、サンプルに描かれたものや、コピーなどではなく本物の完成原稿である!
これを、ジョージ先生に見せると‥‥‥‥‥‥
「 ‥‥‥‥何ンじゃ~っ!? 」
作者本人にもわかからないのである!
ゴホゴホ‥‥‥‥‥‥ゴホゴホゴホゴホゴホッ!
‥‥‥‥思い出すと、また、咳が出始める!
さて‥‥
とりとめもなく、思いついた事を書いてきた「諦めま章」ですが‥‥
次回で一応、締めくくりたいと‥‥ その次からは、新章「 古い話で章 」を始めたいと思います。
有能なのか、無能なのか‥‥‥‥ どちらとも分からない私の先輩たちの若かりしアシスタント時代の逸話を紹介させていただきたいと思っております。
当然、師匠のジョージ先生も20歳代、30歳代の若さで登場する事になるかと思います‥‥‥‥
古い話で申し訳ありませんが‥‥‥‥
もうしばらく、「漫画家アシスタント物語」とお付き合いのほどを‥‥‥‥
では‥‥
次回、「諦めま章・最終話」をご期待ください‥‥ と、言いたいところですが‥‥ たいした話ではないかも知れません。
どうか‥‥ ほどほどのご期待を‥‥‥‥!
「 漫画家アシスタント物語 諦めま章〈20〉」へつづく・・・・
「諦めま章〈18〉」へもどる‥‥
「もくじ」 へ‥‥
~~~ 参照 ・ 諦めま章〈19〉 ~~~( 読んでも、読まなくても!)
【その37】
・授業 : 東京の繁華街にある美術系大学。マンガコース「漫画背景美術」の講義を担当。非常勤講師として水曜日の朝1時限。(2013年当時)
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