漫画家アシスタント移住物語 先生との思い出4 吉原後始末
《写真上:私の自宅寝室より門扉の方を撮影した写真。大雨が降った後で、カラッと晴れたと思ったら大きな虹が出ていました・・・・・ 2021年5月撮影
お薦め:古いですが「漫画家アシスタント物語・エントランス」もどうぞ!
先生との思い出 4 吉原後始末
《 先生がヤバい・・・弟子の心配空回り!? 》
前回は、吉原にある風俗店を「 〇ープランド 」と表記しましたが、実際には当時「 トルコ 」と呼ばれていました。( 1980年前後 )
吉原では、右を見ても左を見ても「 トルコ 」の看板がいっぱいあって、初めて来た人は何処へ入ったら良いのか絶対に迷う「 トルコ 」の魔窟でした。 今回も一応「 〇ープ 」と表記させていただきます。


さて‥‥‥‥
明るい写真で気分を変えて( 健全なる精神に敬意を持ちつつ )、改めまして‥‥‥‥ 大人の夜の‥‥ お話のつづきを‥‥‥‥
師匠と先輩アシスタントの一人がボッタクリ店の「 P 」で、他のアシスタントたち( 小池以下4,5人 )の帰還を待っている話が前回までのお話でした。
さて、私たち湯上りのアシスタントが「 P 」の前で気合を入れてドアを開けるわけですが・・・・・・・・
とにかく一刻も早く師匠をこの店から出す事が第一・・・・・・・・ かなり緊張してドアを開けました。
ドアは安っぽい木製のドアで、店内は薄暗くカウンター内の洋酒棚だけが明るい。 そのカウンターは右手に伸びていて、師匠たちが奥の席で飲んでいる・・・・・・・・
私はきっと緊張からカチカチに固くなっていたと思いますが・・・・・・・・
師匠は・・・・・・・・・・
ニッコニコで・・・・・・・・
「 ど~だったんだぁ? 」なぜか、こんな時の先生、笑顔が可愛い
・・・・と、カウンターの一番奥の席で先輩アシスタントと笑っています。
「 良かったのか? 戦果を報告しろよ! 」
笑う先生と先輩・・・・・・・ カウンターの中にいる二人の店員も一緒に笑っている。
「 お帰りなさいませ~っ、さあ、どうぞどうぞ! 」
50 代で年かさの小太りの店員( いやらしい油のパンチパーマ男 )が私たちの席と飲物を準備しようとしている。
急いで先生の横に立つ私は、顔が引きつって来るのを自分でも感じつつ・・・・・・・
「 せ、先生、そろそろ食事にでも行きませんか? 」
「 ん・・・・そうだな、腹も減って来たしなぁ・・・・・・ 」
私は席をセッティングする店員を制しながら・・・・・・・・
「 じゃあ、早速出かけましょう 」
他のアシスタントが・・・・・・ 援護射撃してくれる‥‥‥‥
「 腹ペコですよ~先生! 」
「 さあ、行きましょう! 」
その時、油のパンチパーマのオヤジが・・・・・・
「 だったら、うちで出前を取りますから、こちらで食べて行ってはどうですか? 」
「 え? 何が注文できるの? 」
・・・・と先生。
「 先生、何でも大丈夫ですよ! 」パンチがニコニコ!
まずい展開になってくる・・・・・・・
「皆さんは何がよろしいですか~?」
「定食なんかもありますよ」
・・・・・と、もう一人の若い店員。
この展開は想定外・・・・・・・・こんな所で食事代まで加算されたらどんな金額になるか分からない!
「何にしますか~?」
‥‥若い店員が、電話機の受話器を持って先生の方を振り返る‥‥
私の頭は、限界を超えてレッドゾーン突入!( 実際には泣きそうだった )
「 え‥‥ と‥‥」私の声が震える
「 ‥‥‥‥? 」ニコニコのパンチ
「 さ‥‥‥‥ 」
「 ‥‥‥‥? 」受話器を持った店員
「 さっき‥‥ さっき、見たんですがぁ‥‥」
「 ‥‥‥‥? 」
「 お‥‥お‥‥‥‥ 美味しそうな寿司屋がありましたから‥‥‥‥ そっちの方が‥‥‥‥お落ち着いて食事できるかなぁ‥‥・・・・ 」
適当に「 寿司屋 」なんて言ってますが、この土地の食事情なんて、何も知らない私です‥‥‥‥
ところが、この時、油のパンチオヤジが意外にも助け船を出してくれます・・・・・・・・!
「 交差点にある寿司屋さんならとても美味しいですよ 」
先生はゆっくりとグラスを置きながら・・・・・・・・
「 んじゃ、行くかな 」
私は、心の底から‥‥ 油のパンチパーマに感謝した! 本当に感謝した!
店員が料金の精算を始める・・・・・・・・
問題の「 勘定書き 」・・・・・・・・いったい、いくらになるのか・・・・・・・・
先生はジッとそれを見ている・・・・・・・・ただ、先生の表情は何も変わらない・・・・・・・・
私は口の中がカラカラになっている・・・・・・・・
その時である・・・・・・・・
「 先生、サインをいただけませんか? 」
パンチのオヤジがニタニタ笑いながら先生に色紙を差し出してきた!
さっきは救世主に見えたオヤジを、今度は殺気のある目でにらんだ。
先生が危ない・・・・・・・私には先生が落とし穴へ落ち込んでいくイメージが・・・・・・・・
こんな店にサイン色紙なんか残して、後々、それを「 営業 」に利用されたのではたまったものではない!
私は何がなんでも阻止する覚悟で・・・・・・・・
「 き、今日は・・・・・・ 先生の・・・・・・・ そのぉ・・・・・・・・ お‥‥ お忍びでのお遊びですから・・・・・・・またの機会に! 」もうグダグダ‥‥
そう言って、その場を取り繕い、すぐに勘定を済ませて先生の背中を押す様にして店を出ます。
私は店員が渡した「勘定書き」を見ていないので正確な金額は分かりませんが・・・・・・・・
後で聞いたら8万円ほどで、少し高いのですが・・・・・・・・「 ボッタクリ 」と言うほどの値段でもなかっようです。
ちなみに、歌舞伎町辺りのボッタクリ店なら通常の値段の10倍以上が相場です。
その後‥‥‥‥
吉原の街の中ほどに「 〇野 」という寿司屋さんがあり、気さくな店主と映画の話などで盛り上がりました。
その時、私は先ほどの「P」について「 あそこはボッタクリ店 」だと先生と説明したのですが・・・・・・・
「 そうだったのかぁ・・・・・・・なら、もう一回行ってみるか! 」
「 はぁ・・・・?? 」
「 あいつら( パンチオヤジたち )、ビックリするだろうなぁ! 」
「 え~っ・・・・!?( 汗 ) 」
「 こいつらまた来やがった・・・・・・ってよ!」
‥‥私は愕然と言葉もない!
「 こいつら、何考ぇ~てるんだぁ・・・・・・なんてよぉ~! 」
・・・・・・この先生こそ、いったい何を考えているんだ・・・・・・・・!
呆れる私を見ながら先生はゲラゲラと一人で面白そうに笑っていました。
ここからは、漫画業界らしい、お真面目な話を‥‥
お寿司を食べて、腹ごしらえを済ませると、最後に吉原の深夜喫茶に行って漫画談義をした後で、「 初めての吉原珍遊団 」は解散。
ただ、この最後の「 吉原の深夜喫茶 」での会話が特に印象に残っているので記しておきます。
いかにも、漫画家とそのスタッフのやり取りって感じです・・・・・・・・
先生の冗談話でスタッフが大笑いして気分が盛り上がってきた時でした・・・・・・・・
先輩アシスタントの一人が深刻な表情で先生に質問を始めます・・・・・・・・
「 なんで、僕らは漫画家に成れないんでしょうか・・・・ どうすればいいんでしょうか? 」
先生の表情から笑顔が消え‥‥・・・・ 鋭い目つきの怖い表情に変わります。
私は、先輩が言った「 僕らは 」という言葉にひっかり・・・・・・・・
『 俺を一緒にして欲しくないよな~! 』
・・・・などと、斜に構える感じで二人の会話を聞いていました。
先輩は17歳の時に師匠に弟子入りして10年以上になります。
先生の原稿運びに雑用係、10年以上務めているのに、陽の目を見ずに30歳を超えてしまったのです。
映画ファンで、その大好きな映画を元にした「 映画少年 」がテーマの新作も没になって落ち込んでいたのです。
「 まだよ‥‥ 勉強がな‥‥ 足らねぃ~んだよ 」
先生は、ゆっくりと同情する様に・・・・・・・・ やさしく・・・・・・・・
しかし、この時、隣の席で興味津々先ほどからジッと私たちの会話を聞いていた女性が・・・・・・・・
「 何ンか~、とても面白そ~ですね~ 」( 上品な猫の様に )
・・・・と、横から話に加わり始めたのです!
この女性は、二人組の美人( 20代後半 )でロングヘアーが素敵な方々でした・・・・・・・・( たぶん、仕事上がりの〇ープ嬢? )
突然、喫茶店で美人が話しかけてくるなんて事が・・・・・・・・ この世の中にあるのでしょうか・・・・・・・・
私は、先輩と先生の話よりもこちらの女性に気がいってしまいそうでした・・・・・・・・
「 さっきからスゴイ話をしてらっしゃるんで・・・・・・ 」
「 話を聞かせてもらってもイイですか~? 」
女性の方から声をかけられるなんて経験がまったく無い私の様な人間にとっては、大事件なわけです・・・・・・・
酔っ払った風呂上りの男どもに、美人が二人、甘える猫の様に話しかけてくる!( 普通ありえない! )
先輩の話を忘れて、私は二人にウットリと見入るのですが・・・・・・・
「 うるせ~んだよっ! 」
女性たちは、ビックリした表情で固まります。
先生は、少しトーンを落として・・・・・・
「 今、マジな話、してるんだからよ、黙っててくれ‥‥ 」
「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」
先生の断ち切る様な言葉に全員沈黙。
先輩はうつむいていた顔をやっと上げて・・・・・・・
「 先生、勉強って言っても・・・・・・・・いったい何を・・・・・・・・ 」
‥‥先輩は、懇願する様な表情でジョージ先生を見つめます。
「 もっと本を読むんだな 」
「 先生、本は結構読んだんですが・・・・・ 」
「 徹底的に読むんだよっ!! 」
私にとっては、先生の言葉が「 核心 」の様に心に刻まれるわけです・・・・・・・・
「 俺ぃは一日に10冊読んだ事もあるんだぜぃ 」
「‥‥‥‥」
「 おめぃ~は、まだ全然足らなぃ~んだよっ! 」
私は、この日以降・・・・・・・・
徹底的に読書をする事に集中しました。( それまでにも本は読んでいましたが )
何を読むのか、何冊読むのか、お金がいくら必要になるのか・・・・・・・そんな事に気を使っている様ではダメなのです。
古本屋へ行って、棚にある本を片っ端から手に取って買ってしまう・・・・・・・・これが一番効果的です。( 100円コーナーなんてキロで買います )
三度の飯よりも大事な事かもしれませんので、お金の心配をした時点で脱落です。
「 徹底的な読書 」なんて、簡単に出来るものではないからです。
書店、古本店、図書館‥‥ 書棚に行って両手にドッサリと、本を抱えてレジ( 受付 )に行く‥‥ それだけ!
後は‥‥ 家に帰って黙々と読むだけ!
私がヤングジャンプの新人賞で準入選してデビューするまで、これから7年かかりました。
まったく、漫画家になるのは大変です。
私はデビューしても、結局30年間うだつが上がりませんでした。
でも・・・・・・それでも・・・・・・・「 まんが道 」って面白いのです‥‥‥‥
いや、ホントに!
《 2021年6月:ブログ公開 》
「こりゃタイ編 先生との思い出5」 へつづく・・・・
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