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漫画家アシスタント移住物語 先生との思い出1「おめぃ~」

 
《写真上:アシスタントの仕事場から、ジョージ先生の暗い個室への入口》
 
お薦め:古いですが「漫画家アシスタント物語・エントランス」もどうぞ!
 

             

           先生との思い出1

 
     《 貧乏臭いみじめな夢、起きればみじめな大遅刻 》
 

皆さんは貧乏人がどんな夢を見るかご存知でしょうか?

裕福な暮らしをされている拙ブログの読者皆様方には、お分かりにならないやも知れませんが・・・・・・・

実は、いたってその内容はシンプルなのです。

貧乏人の夢は、ただ「 貧乏 」そのものなのです・・・・・・・・

私が漫画家アシスタントをしていた20代( 1980年頃、ジョージ秋山プロ勤務 )に見た夢はだいたい以下の様なパターンばかり・・・・・・・・・・

夢の舞台は、商店街によくあるベーカリーや、スーパーマーケットのパン売り場など・・・・・・・・・・

そこには、美味しそうに菓子パンや食パンが並んでいるのです・・・・・・・・

「 メロンパンかコロネが食べたいなぁ 」

どのパンも美味しそうです・・・・・・・・

「 レーズンパンも美味そ~ 」

・・・・・などと思っているのですが、財布の中には十円玉が2,3枚しかない。

たった20円か30円で買える菓子パンがあるのだろうか・・・・・・・・

私はどうしたらよいのか夢の中で真剣に悩むわけです・・・・・・・・・・そして、お金が無いんだから諦めるしかない・・・・・・・・・・と・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・落ち込んだところで目が覚めるのです・・・・・・・・・ グッショリと寝汗をかいて・・・・・・・・・・

『 どうせ夢なんだから、好きな物を好きなだけ食えばいいのに! 』

なんだか訳の分からない怒りで不快な汗が、さらにどっと噴き出す出すわけです。

しかし、時計を見れば午後の1時手前だ・・・・・・・・・・!

12時からの仕事に完全に遅刻しているわけです。

1980年代のいつもの「 某日 」です‥‥‥‥


秋山プロに入って9年目、すっかりアシスタント暮らしに慣れた頃。私の右側にいる人物にはブログ掲載の許可を得ていません。どうか、見なかった事にしておいて下さい。1987年某月撮影

 

場所は秋山プロのドア前、ヤングジャンプなどで賞を受賞したり、単発の仕事など自分の漫画作品を発表できる様になった頃の写真です。服装にも余裕がありますが・・・・本来なら、連載漫画を得るために必死になっているはずの時期なのに・・・・外見なんか気にしてる場合じゃなかったのに!

 

2011年11月、秋山プロのドアにジョージ先生が張った紙。出勤するアシスタントに「本日休み」を知らせるためのメモ。木札は常時張られている「まことに勝手ながら本日は遊んで‥‥」判読不可

 

仕事場( 目白にあるジョージ秋山プロ )へ着くとすぐに先輩アシスタントに声をかけられます。

「 先生が呼んでるよ 」
「 は・・・・はい 」

私は処刑場へ呼び出される囚人の心境で先生の部屋へ向かいます・・・・・・・・

「 おめィ~は何考えてっだよ! 」
「 おめィ~のせいで、皆の仕事のペースが乱れるんだよ! 」

普通なら、ここで「 明日から来なくていいからな! 」で終わり( クビ )だと思います。

ところが・・・・・・・・

茫然と立ち尽くす私のダメージをしっかりと確認する様に、少し間をおいてから・・・・・・・・

「 いいから、もう行け 」

先生はそのまま、デスクに向かい、私はションボリと仕事場へ‥‥

ダメージは大きいのですが、私は慣れているのでシラ~とした顔をしてアシスタントの仕事場へ戻って作業を始めます・・・・・・・・

そして、また次の日も遅刻するわけです。

実は・・・・・・・・・・

今回のサブタイトルにある「 先生の思い出 」ですが・・・・・・・・・

真っ先に思い浮かぶのは、上記の様に怒られている思い出ばかりなのです。

スタッフの中には先生から怒られた事なんて一度もない・・・・・・・という人もいます。

でも、私はそんな真面目なアシスタントではありませんでした。

ただ、幸いな事に数本の漫画作品を発表出来ているので、その点( 作品の質や絵柄 )について褒めてもらった記憶があるにはあるのですが・・・・・・・・・

でも、やっぱり・・・・・・・・・・

ホントによく怒られました。

私が、まったく非常識な弟子だったからなので、仕方がないのですが・・・・・・・・・・・

普通の会社なら、100回以上はクビになっていると思います・・・・・・ まったく、ど~~仕様もないダメ弟子でした。

お昼に仕事が始まるのに、私は2時間近く遅れて出社する・・・・・・

上記の様な貧乏臭い夢を見て毎日の様に遅刻するわけです。

しかし、毎日怒られるわけではなく、2,3ヵ月に一回位にピシャリと怒られるのです・・・・・・

「 もう、陽が傾いてるじゃねぃ~かよぉ! 」

先生は声は小さいが、何故か迫力があります・・・・ 日焼けしているその顔を赤くしながら・・・・・・・・・・

「 遅刻ばかりしやがってよぉ~、何考えてンだよっ! 」

私の怠惰を先生は、本気で怒ってくれました・・・・・・・・・・( 当時は本当に怖かったです )

完全に遅刻をしなくなる様になるまで10年以上かかりました・・・・・・・・こんな弟子をよく我慢したもんです。
 

ところで・・・・・・

誰でも、「 いったい何故遅刻するのか? 」とお思いになるでしょう‥‥ 当然です。

それは、漫画家アシスタントの仕事が「 仕事 」の様な気がしなかったからです。

普通の仕事( 他のアルバイト、ビル掃除や皿洗いなど )では遅刻なんてしないのですが、何故か漫画の仕事となると緊張感が切れる・・・・・・・・「 趣味の延長 」みたいにしか感じられなかったのです。

漫画をバカにしているつもりはないのですが・・・・・・・・・・・・

いや‥‥ 少しはバカにしているかもですが・・・・・・・・・・・

単純に‥‥ 適当な人間なんだと思います。

それから、私はお金に関してもルーズでした・・・・・・・・・

秋山プロに勤め始めた当初( 2,3年 )は、月末になると先生に「 前借 」( いつも1万円 )をお願いしたものです。( 毎日、遅刻ばかりしているくせに! )

「 また前借ぃ~?・・・・・・毎月じゃねぃ~かよ! 」
「‥‥‥‥は‥‥‥‥ すいませ‥‥‥‥」
「 おめぃのは『 前借 』じゃねぃ~だろ、ただの一度も返さねぃ~んだからよ~! 」

確かに、「 前借 」と言っても一度もお金を返しませんでした!

それから27年後、単行本で印税が入った時に( なんとこのブログの本! 皆さま! ありがとうございます! )、お借りしたお金( 40万円、たぶん全額+α )を返す事が出来ました。

デタラメな人間がほんの少しだけ真面目になるのに「 27年 」かかったわけです。

ちなみに、秋山プロのスタッフの多くが師匠から借金をしていました。

若くて元気な野郎どもが安い月給で満足しているわけがないのです。

月末になると「 先生、前借したいんですが・・・・ 」と泣きつくのが秋山プロの社内風景でした。

平均で諸先輩方は、10万円以上( 20~30万円 )借金が溜まっていたと思いますが・・・・・・・・

まともに、借金を全額返済したのは私一人です。

この事だけは最後にしっかり記しておきたいと思います!

 
 
 
                   《 2020年7月:ブログ公開 》

 

          「こりゃタイ編 先生との思い出2」 へつづく・・・・

               「先生が死んでしまった」 へもどる‥‥
 
                   「もくじ・こりゃタイ編」へ‥‥
 
 

 

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