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漫画家アシスタント物語  第9章 〈7〉 大学は見学したけれど‥‥

 
《写真上: 相変わらずの我が秋山プロの仕事場風景。ほとんどゴミ屋敷と化しています‥‥『ゴミ(石)の上にも3年』と云いますが、ゴミの上のゴミの上にも30年という凄いゴミの堆積。師匠が30歳(40年前)だった頃には、銀座のお姉ちゃんなんかが遊びに来たそうですが、今ではゴミ養老院です 》
                < この9章〈7〉は、文庫本約9ページ分 >
 
 

「第9章」は、独立した「章」ですので、「第8章」の続きではありません。ほとんど短いショートストーリーですので、「第9章〈1〉」(無料)より、お楽しみいただけます!

ただし‥‥ この「第9章」は、それぞれの話が少しだけ連続していますので‥‥ 「第9章〈1〉」よりお読みください!
 
それから‥‥
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!



               その13  
  
  《 漫画家アシスタントが・・・講演でC調ぶりを発揮する!? 》
 
 
大学で漫画家アシスタントが苦労話を「 講演 」( ※参照 )する‥‥‥‥ 奇妙な時代になったものです。

私が子供の頃には‥‥

「 漫画なんか読んでるとバカになるぞ! 」
とか‥‥

「 漫画なんか道楽者がすることだ! 」
‥‥とか、よく言われたものです。

このブログを読んでおられる皆様の中にも、同じ様な経験をされている方が少なからずおれるるのではないでしょうか。

そんな時代に、漫画家アシスタントが大学で講演する時代が来るなんぞと誰が想像したでしょう‥‥‥‥ まさにコペルニクス的転回というやつです。

もっとも‥‥ こうした奇妙な現象の元になっているのが、実は、深刻な大学進学希望者の減少です。

少子化が加速する中で、入学者を維持するためには、授業の構成を「 人気科目 」に変更せざる得ない‥‥ そんな訳もあるのではと‥‥‥‥。
 

2009年の春‥‥

私は大学講師として都心にある大学へ週に一回通うことになるのですが‥‥

同じ頃、前回にも書きましたようにTK大学での講演( 前半90分と後半90分の2回、講演料は3万円前後 )を行いました。

私に講演依頼をした漫画科の教授先生( ※参照 )は、業界の厳しさをテーマに話して欲しかったようですが‥‥

私は、用意しておいた3枚のレジュメ( 講演内容のあらすじ )のうちの1枚を読み忘れるという失態をやってのける始末ですし、内容も「 苦労話 」というよりも「 ズル休みと遅刻のス~ダラ人生 」という感じでした。

特に、レジュメのうちの一枚を抜いてしまったのは、大変なミスでした‥‥ ( 会社で重要なプレゼンのシナリオを途中ですっ飛ばしてしまうようなものです )

さすがに教授先生は、私のミスを見逃しません‥‥‥‥ 前半の90分でこなす内容が少なすぎるので‥‥

「 小池さん、前半が短かった様ですが‥‥‥‥ 後半、大丈夫ですか? 」

私は、そう注意されて自分がレジュメの一枚を抜かしていた事に初めて気付くのですが‥‥‥‥
( 一瞬、顔色が変わったかもしれませんが )

そこは、適当なスーダラ男‥‥‥‥ 平気な顔を装いつつ‥‥‥‥

「 だ‥‥ 大丈夫です‥‥ はい、大丈夫です 」

ちなみに、その時の講演の内容ですが‥‥‥‥

大きな教室に60人以上の学生、そして、教卓とマイク‥‥

シ~~ンと、私に注目している学生に向かって‥‥‥‥ マイクを握る右手が震えるので、左手でそれを抑える様に‥‥‥‥

「 秋山プロで30年ちょっと仕事をしています‥‥ え~と‥‥ ジョージ秋山を知っている人は‥‥‥‥ どれくらいいますか? 」

手を挙げてもらうと60人の学生のうちの20人ほどが手を挙げてくれる‥‥

私が初めてアシスタントをしたSという女性漫画家や「 COM 」時代を代表する芸術的な漫画家Mを知っている人は、ほとんどいませんでしたが‥‥

私は、自分のアシスタント経験を19歳の最初の仕事から話し始めたわけです‥‥ その後は、このブログでも書いてある通りなので、ここで紹介するほどの事はありません。

後半は、そつなくこなし‥‥‥‥ ありがたいことに、翌年度の講演も依頼されたのですが‥‥‥‥

私のアシスタントの仕事の都合で突然キャンセルしてしまう事になります‥‥‥‥

大変な迷惑をかけてしまいました。 私を招聘してくれた大学教授先生には、今でも申し訳なく思っています。
  
 

さて‥‥

この2009年の春、初めて東京某所の大学で非常勤講師( ※参照 )をやらせてもらうことになったのですが‥‥

どの様に授業をやればよいのか‥‥

まったく経験のない私は、勉学のためにその大学で漫画の授業を見学させてもらう事にしました。

事務局の課長さんが、私に紹介してくれた漫画の先生は‥‥‥‥

細っそりとした‥‥ 若い女性漫画家で‥‥‥‥

和装の‥‥ 袴をはいていて‥‥‥‥

手には日本刀(?)を持ちつつ‥‥‥‥‥‥‥‥

 
 



東京某所の駅前繁華街の写真です。こんな繁華街の中に私が非常勤講師を務める大学のビルがあるとは、ちょっと信じられない気もしますが‥‥実際に、他の商業ビルと並んで建っています。

 
               その14  
  
 《 漫画家アシスタントが・・・詩吟の剣舞に刺される・・・!? 》
 
 
私が非常勤講師のオファーを受けた当時( 2009年夏 ) ‥‥

『 大学の講師なんて出来るのだろうか‥‥? 』

そんな疑問が‥‥ いつもまとわりついていました‥‥

そんな時に、テレビの報道番組だったか‥‥ 漫画家のちば先生( ※参照 )が某大学で講師を勤めている姿が映し出されていたのですが‥‥‥‥

ちば先生ほどの人が講師をされている‥‥ それ自体は、とても自然な事なのですが‥‥ テレビを見ながら‥‥‥‥

『 私が講師なんぞやって良いのだろうか‥‥ 』

そんな不安に襲われました‥‥‥‥

ジワジワと危機感が迫ってくるような‥‥ 毎日、落ち着かない気分で過ごすことになります‥‥‥‥

そこで、私は‥‥ 大学で漫画をどの様に教えているのかを知るために、実際の授業( ※参照 )を見せてもらいに出かけたわけです‥‥‥‥

事務局で紹介された先生は‥‥

30歳ほどの女性漫画家で、外見は長い髪とスリムな体型で優しい雰囲気の人でした。( 講師控え室で紹介された時は、普通の服装だったと思います )

しかし、授業が始まった時には‥‥ 彼女の姿が和装麗人に変わっていたのです‥‥‥‥

さらに、手には日本刀を持って教鞭をとっているのですから驚きました。

教務課の課長さんに案内された教室は、80人は使用できそうな広さに30人ほどの学生がいました。 男女の比率は、女子のほうが多い‥‥ というよりも、女子の中に男子が少しいる‥‥‥‥ といった感じでした。

積極的な学生は教室の前の方の席に着き、控えめな学生は教室の後ろの方の席に‥‥

そして、私は、その学生のさらに後ろの最後列に座ってエサの時間を待つ豚のようにトロンとしていました。

彼女が袴姿に日本刀を持って教壇に上がったのは、時代劇の漫画を講義する時に、集中を高めるための演出だったわけです。( いつもは普通の服! )

授業中は、日本古来の伝統を解説‥‥ 漫画の講義というよりも日本史か民俗学の授業のような感じでした‥‥ しかし‥‥‥‥

突然‥‥ 学生たちに剣舞を舞って見せたのです‥‥‥‥ ( CDによる効果音付き! )

あの有名な‥‥‥‥

「 べんせぇ~しゅく~しゅく~よるかわを~~わた~~るぅ~~ 」

‥‥って、アレです!( 上杉謙信を詠った川中島の詩吟 )

ホントに驚きました‥‥ というか‥‥‥‥

『 そ‥‥ そこまでやるのかよ‥‥! 』
‥‥と、正直‥‥ 深刻に受け止めざるを得ませんでした。

そして、さらに‥‥ ゆるんだ私を一撃する出来事が起きます‥‥‥‥

彼女は、日本刀の説明に入るのですが‥‥

時代劇漫画の小道具としての日本刀を説明するには、実際に日本刀を手に持たせる事が重要であると考えて、学生たちに実際に日本刀を順番に持たせるわけです。( もちろん、本物ではなく模造刀です! )

半分ほどの学生が触り終えた頃‥‥ 一人の男子学生が‥‥‥‥

「 先生、この刀は、年代はいつ頃のものなんですか? 」
‥‥と、挙手しながら質問します‥‥

これは、刀のデザインが江戸時代のデザインなのか、戦国時代のデザインなのか‥‥ といった質問の意味なのですが‥‥

一瞬、和装の麗人( 先生 )は‥‥‥‥ 間をおいてから‥‥

「 それ、模造刀ですから‥‥ 」

結局、「年式」というほどのものは無い‥‥ という事なのだと思いますが‥‥‥‥

私は、この時‥‥

『 さすがに‥‥ 大学だな‥‥‥‥ 』

‥‥と。

学生は、いろんな角度から真剣に学ぼうとしている‥‥‥‥

『 漫画背景を30年描いてました‥‥ 程度の事じゃ通用しないかも知れない‥‥‥‥ 』

 
  
 

       「 漫画家アシスタント物語 第9章〈8〉」へつづく・・・・

                   「第9章〈6〉」へもどる‥‥

                   「もくじ」 へ‥‥

 

 

 

 ~~~ 参照 ・第9章〈7〉 ~~~ ( 読んでも、読まなくても!)

 【その13】
・「講演」 : 東京から小田急線に乗って神奈川県の某所、名前はけっこう有名な美術系の大学。その「漫画科」の授業の一環として行われる作家や業界関係者による講演。
・教授先生 : 白髪交じりの私よりも少し年上の清潔な紳士。苦労人らしい落ち着いた風貌。数年間に渡り超有名な原作者のマネージャーを経験。
・非常勤講師 : 東京某所にある美術系大学。「漫画背景美術」の講義を担当する非常勤講師。水曜日の朝1時限。(後に、水曜と金曜を各90分)
 【その14】
・ちば先生 : あの有名な大御所ちば先生。「参照」なんてまったく意味がありません!私が大好きな漫画家ですが、氏が選考委員長を務める漫画賞の最終選考で2度も落とされました‥‥悲しい限りです。(私の片思いの人)
・授業 : 大学は一見すると10階ほどの商業ビルにしか見えませんが、内部は、全階、教室や演習室、事務室などになっています。

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