「100点」より、あえての「80点」が人を動かす。疑り深い相手を納得させる心理学『両面提示』
皆様のセールスコンサルタント、ごりごりのおちびさんです。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
春も深まり、新生活や買い替えのタイミングですね。
私は最近パソコンを買いましたが、皆さまの中にも新しいパソコンや高価な家電を検討している方もいらっしゃいますよね?
さて、突然ですが質問です。
あなたは決して安くない買い物をする時、どうやって商品を選びますか?
世の中には、店員さんに「今一番売れてますよ!(バンドワゴン効果)」と言われて安心する人もいれば「あなただけに特別なモデルを(スノッブ効果)」と言われて気分良く買ってしまう人もいます。
▼バンドワゴン効果の解説はこちら
▼スノッブ効果の解説はこちら
ですが、あなたが【オタクタイプ】なら、そんな甘い言葉には1ミリも心を動かされないはずです。
パソコンやカメラ、あるいは高機能なドラム式洗濯機を買うとき。
あなたはお店に行く前に、まずは家でYouTubeを開き、「〇〇 徹底比較」「〇〇 デメリット」と検索して、レビュー動画を最低でも5本は見漁るのではないでしょうか?
さらにAmazonや価格.comのレビュー欄を開き、サクラっぽい「星5」のコメントはスルーし、「星1」や「星2」の辛辣なコメントばかりを血眼になって熟読する。
頭の中で自分なりのスペック比較表が完成して、ようやく重い腰を上げて店舗へ向かう。
そんなあなたの前に、笑顔の営業マンが現れてこう言います。
「お客様、実はこちらの商品、画質も最高で、バッテリーも長持ちで、今一番人気なんですよ!」
……その瞬間、あなたの心のシャッターは「ガラガラガシャーン!」と音を立てて閉ざされますよね。
「そんなカタログに書いてあるメリットは全部知ってるんだよ。私が知りたいのは、その裏にある『デメリット』なんだよ。いいことしか言わないこの店員は、絶対に信用しないぞ」
いかがでしょうか?
心当たりがある方、あなたの防御力は非常に高く、素晴らしいです。
しかし、本日はそんな「うまい話の裏」を血眼になって探す警戒心MAXのあなたですら、「なるほど、それなら買おう」と理詰めで納得させられてしまう……。
日常の人間関係をも滑らかにする強力なコミュニケーション技術、『両面提示』についてこれからお話しします。
■ なぜ私たちは「メリットばかり」だと冷めるのか?
そもそも、なぜメリットばかりを語られると、私たちは胡散臭く感じてしまうのでしょうか。
実はこれ、心理学の世界でしっかりと証明されているロジックなんです。
ここで、2つの強力な心理効果をご紹介します。
1つ目は、『ブレミッシング効果』
「ブレミッシュ」とは「傷」や「欠点」という意味です。人間は、完璧すぎるものを見るとかえって嘘くさく感じてしまいますが、「致命的ではない小さな欠点」をあえて見せられると、その商品や人の『誠実さ』や『魅力』が逆に引き立つという心理効果です。
2つ目は、『接種理論』
これは病気を防ぐ「ワクチン」と同じロジックです。相手が後から自力でデメリットに気付いて「騙された!」と反発する前に、売り手側から先に「小さなデメリット」を注入しておく。そうすることで、相手の心に疑念に対する「免疫」を作らせるという恐ろしい理論です。
つまり、この2つを組み合わせるとどうなるか。
「先に小さな弱点を教えてくれた」ことで未来の疑いに対するバリアが張られ、同時に「あえて欠点を晒すなんて、なんて誠実な人なんだ」と、相手への信頼度が跳ね上がります。
この2つの心理効果が掛け合わさった瞬間。
どれだけ警戒心MAXだった人でも、脳内から「この人を疑う」という選択肢が消え去り、「この人の言うことなら信じられる」という【納得モード】へと強制的に切り替わってしまうのです。
■ あえて「欠点」から語る技術
このロジックを、私たちのようなセールスのプロが現場でどう使うか。
一般的な営業マンは「この商品はこんなに素晴らしいんです!」とメリットだけを押し付け、お客様に「うまい話には裏がある。こいつはデメリットを隠している」と警戒されてしまいます。
一方、トップセールスはあえて「致命的ではないデメリット」を先に自白します。
「こちらのパソコンですが、実は他社さんのモデルに比べて少しだけ重いんです。持ち運びには少し不便かもしれません。ただ、その分バッテリーの持ちと処理速度は群を抜いていて……」
わざと小さな欠点を自白することで、「こいつは星1レビューと同じ裏側を教えてくれる誠実な奴だ」と錯覚させ、「いいことしか言わない嘘つき営業マン」から「真実を教えてくれるアドバイザー」に一瞬でポジションチェンジするのです。
さらに、このテクニックの本当に恐ろしいところは「その場で見破ることがほぼ不可能」だという点にあります。
なぜなら、セールスのプロはマニュアル通りの欠点ではなく、「お客様の普段の業務フローだと、この高機能は逆に邪魔になってしまうかもしれません」と、目の前の相手に合わせて組み合わせを変えながらデメリットを提示してくるからです。
さらに、「騙されたくない、裏を知りたい」と身構えているオタクタイプは、この欠点を出されると「やっぱりな! 自分が見込んでいた通りだ!」と、自身の分析力が証明されたことで承認欲求が満たされてしまいます。
相手の「疑い深い」という防御の力を逆手に取り、合気道のように投げ飛ばしてしまう。
だからこそ、理詰めのあなたですら完全に気を許し、その後に語られるメリットを何倍もの説得力で受け入れてしまうのです。
■ 「できない」と宣言する人ほど選ばれる理由
個人で仕事をしているクリエイターやフリーランスの方の中には、つい何でも「できます!」と答えてしまう方がいるのではないでしょうか?
その気持ちは痛いほど分かります。
でも、背伸びをして「完璧な何でも屋」を演じ続けるのは、シンプルにしんどいものです。
しかも皮肉なことに、人間心理というのは「あれもこれもできます」とアピールされるほど、「本当に?」「器用貧乏なんじゃないの?」と逆に冷めてしまう生き物なのです。
だからこそ、この『両面提示』があなたの盾であり、武器になるはず。
もし機会があれば、提案や面談の場で、あえてこう宣言してみてください。
「私には、〇〇のような幅広いテイストのデザインは正直できません。でも、〇〇のジャンルで深く刺さるデザインなら誰にも負けません」
自分の「できないこと」をあっさり自己開示してしまう。
するとクライアントは、「この人は自分の限界を客観視できている」「できない約束はしない、信頼できる」と、かえって安心感を抱くはずです。
「100点のクリエイター」を演じる必要なんて、最初からなかったのかもしれません。
メリットばかりを並べて疲弊しているライバルたちを尻目に、あなたは堂々と「80点の等身大の自分」を見せればいいと私は思いますね。
ビジネスにおける人間心理は複雑で一筋縄ではいきませんが、「完璧じゃなくていい」「できないと言った方が、むしろ深く信頼されるんだ」という事実を知るだけで、日々プレッシャーと戦うあなたの肩の荷が、軽くなればと思います。
■ 作られた「誠実さ」に騙されないために
では、あなたが買い物をする時、このテクニックを使う営業マンからどう身を守ればいいのでしょうか。
先ほどお伝えした通り、上手なセールスが仕掛ける両面提示をその場で見破るのはほぼ不可能です。
「他に隠している致命的な欠点があるはずだ!」と探りを入れても、滑らかな話術の前では結局丸め込まれてしまいます。
ですから、もっともリアルな防御法をお伝えします。
それは、「あ、私、今この人のこと『欠点まで教えてくれる誠実な人だ』と完全に信用しちゃってるな」と、自分の感情の動きを自覚することです。
「この人なら大丈夫だ」とホッとして、警戒心のシャッターを開いてしまったその瞬間こそが、罠が作動した合図。
それに気づいたら、その場で戦うのはやめて、「一旦持ち帰って検討します」と物理的に距離を置いてください。
相手の嘘を見抜こうとするより、一度その場を離れて冷静な頭を取り戻す。 それが、この技術に対する一番確実な自己防衛です。
さて、ここまでお読みいただいたあなたに、一つだけ種明かしをします。
お気づきでしょうか?
今回はあえて、いつもより専門用語や心理学のエビデンスを「モリモリ」、文章もかなり長めに語ってみました。
「ブレミッシング効果」や「接種理論」といった小難しい理屈を並べたのは……分析型の皆さんが、こういう「エビデンス」を出されると警戒心を解いて、相手を信用してしまうから。
すっかり私の解説を信用して、ここまで読んでしまったあなたは、間違いなくオタク気質ですね?
……もしくは。
こういう小難しい話は普段あまり読まないけれど、私を信頼し、「意味ある記事だ」と感じて最後まで読んでくださったか。
そのどちらであっても、こうして最後までお付き合いいただけたこと、私はとても嬉しいです。
いつもありがとうございます。
ごりごりのおちびさん
【追伸】
これにて、世の中に存在する「4つのコミュニケーションタイプ」すべての攻略法が出揃いましたね。
さて、次回は……
どんなタイプの人であろうと逃れられない、人間の「もっとも根源的な恐怖」を突くアプローチについてお話しします。
実は前回の記事で少しだけ触れた、「人は、何かを得る喜びよりも『失う恐怖』に2倍も敏感である」という悪魔の法則……について。
「期間限定」や「残り1枠」という言葉に、なぜ私たちは焦り、理性を失ってしまうのか。
どうぞお楽しみに。
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良いモノを作れば売れるほど、甘くない世界で戦うあなたへ。
▼ 初めましての方へ。セールスコンサルタント「ごりごりのおちびさん」の自己紹介はこちら
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