✅ USBとバッテリーを束ねる。小さな電源ハブの物語。
DKNモジュール化プロジェクト 第2弾
Power ORing Hub Module DKN-X06A制作記①
この記事でわかること
✅ DKN-X06Aは単なるOR回路ではなく「電源ハブモジュール」であること
✅ USBとバッテリーを安全に束ね、分配する思想
✅ 電解コンデンサの構成でモジュールの“性格”が変わること
✅ φ6.3mmアルミ電解を使った用途別構成例
✅ JLCPCBでの基板製作とリフロー実装の流れ
✅ ステンシル事件の顛末(笑)
✅ DKN-02-PWから続く設計思想の伏線回収
✅ 「始まりと終わりを整える」というDKNの思想
✅ 電源設計に込めた“止まらないでほしい”という想い
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🟦 序章:人間は、心臓を止めてはならない
人間は、心臓を止めてはならない。
僕はそのことを、八年前に身をもって知った。
電子回路も同じだ。
心臓が血圧で血液を全身へ送り出すように、電源という“心臓”が電圧で電子を送り出す。
その流れがあって初めて、回路は決められた仕事をすることができる。
だから僕は、電源をおろそかにできない。
🟦 第1章:DKNという名前に込めた願い
DKNという名前は、
最初は単なる「電子工作ネコ」の頭文字という意味でしかなかった。
ただ、作品を作り続けていくうちに、
僕の中にある願いが芽生えた。
そして、それは別の意味も持つ名前になった。
「誰も(D)困ることが(K)ないように(N)」。
僕は昔から、始まりと終わりをちゃんとしたいと思ってきた。
電源も同じだ。
どこから来て、どこへ流れ、どう終わるのか。
それが曖昧だと、
必ずどこかで誰かが困る。
だから僕は、
電源の“始まり”と“終わり”を整える基板を作りたいと思った。
その最初の答えが、
DKN-X06B USB Type-C Safety Power Moduleだった。
🟦 第2章:始まりを整えた、その先へ
DKN-X06Bは、電源の“始まり”を整えるための基板だった。
USB Type-Cという、少し複雑で、少し危うい世界から、安全な5Vだけを取り出す。
それは、外界との境界を守るためのモジュールだった。
けれど、それだけでは足りなかった。
電源の“始まり”を整えても、その先が曖昧では意味がない。
USBから来る5V。
バッテリーから来る電圧。
どちらか一方ではなく、
どちらも自然に使えるようにしたかった。
そしてそこから、さらに複数のモジュールへと安定して電源を配りたかった。
電源の“終わり”を整える必要があった。
その答えとして生まれたのが、DKN-X06A Power ORing Hub Moduleだった。
🟦 第3章:これは単なるOR回路ではない
DKN-X06Aは、一見すると単なるOR回路に見える。
USBとバッテリー。
どちらか電圧の高い方を自動で選び、出力する。
それだけなら、既存の回路でも実現できる。
DKN-03 FMラジオでもショットキーバリアダイオードで同様の構成を組み込んでいた。
けれど、僕が作りたかったのは
ただの“切り替え回路”ではなかった。
電源を束ねる、小さなハブ。
安全に受け取り、
自然に選び、
必要な先へ静かに分配する。
そして、受け取る側に自由を残す。
X06Aは出力するだけ。
フィードバックや制御は、受け取る側に委ねる。
抱え込まない。
支配しない。
ただ、整えて渡す。
それがこのモジュールの思想だ。
それを形にした回路が、これだ。

OR回路、電解コンデンサ、分配ライン。
けれどその中心にあるのは、思想だ。
■ これはただのOR回路ではない
DKN-X06Aは、USBとバッテリーを“つなぐ”だけのOR回路ではない。
電源を“整えて、蓄えて、配る”電源ハブモジュールだ。
そしてこのモジュールの面白さは、
電解コンデンサの選び方で“性格”が変わることにある。
底面φ6.3mmのアルミ電解コンデンサーなら、用途に応じて構成を組み替えられる。
例えば…
✴️ アンプ用途(音の安定・低域)
220µF / 100µF / 47µF
電源の“ふらつき”を抑え、音の土台を作る。
✴️ デジタル用途(瞬間電流・リップル対策)
220µF / 220µF / 100µF
ピーク電流に強く、USB側が弱くても踏ん張る。
✴️ バッテリー直結用途(安心感重視)
470µF × 2〜3
瞬断や負荷変動に“粘る”。
入力と出力はそれぞれ2系統ある。
だが用途によっては、すべてを使う必要はない。
■ 今回出来上がったプリント基板
今回もスポンサーのJLCPCBさんのご好意により、DKN-X06Aができあがった。
今回の基板も、DKN-X06Bと同じように、リフローで部品実装することで36×34 mmという大きさに収めることができた。

J1がDKN-X06Bからの5Vを受け入れ、J2がバッテリーからの電圧を受け入れる。
出力をJ3とJ4に分けることと、容量の異なる3つのアルミ電解コンデンサーを組み合わせることで、モジュールとしての汎用性を高めた。
■ リフローの動画
部品実装時のリフロー動画は下記でご覧いただけます。
■ JLCPCB基板発注リンク

以下のリンクから行えます。
➡️ 英語版発注システムはこちら
➡️ 日本語版発注システムはこちら
➡️ 実際の発注手順はこちら
■ モジュール間の接続はJSP PH2.0コネクターを採用
今後のDKNモジュール化プロジェクトの標準コネクターとして、モジュール間はJSP PH2.0を採用することとし、4つのコネクターをハンダ付けしてDKN-X06Aの部品実装は完了した。

写真はアンプ用途で作った
220μF/100μF/47μF仕様。
🟦 第4章:ステンシル事件
今回も表面実装基板ということで、JLCPCBさんにはステンシルも同時に注文してあった。
ステンシルがあればハンダペーストの塗布が格段に楽になる。
■ そして、事件は起きた
注文した基板は36×34mmと小さい。
ただ、いつもの青い箱の中にステンシルが入っていないことに気づいた。
「あれ?ステンシルが入っていないぞ?」
ちょうどそのタイミングで、別便でJLCPCBのロゴの入った重い大きな箱が届いた。
「なんだこれは?」
さっそく開けて確かめる。
中には大きな木の板が数枚入っており、間に何かが挟まっている。
「お、ステンシルだ。まさか別便で届くとは。
・・・ん?」
「なんだこれは!?」

なんと、380×280mm。
どう見ても巨大だ。
中央に36×34mm基板用のハンダペースト塗布用の穴が空いており、周りは全て余白!!
なんという無駄な余白!
ステンシル注文時にステンシルサイズを指定し忘れたので、標準サイズで送られて来たのであった🤣
この巨大ステンシルを前に、一瞬途方に暮れた自分がいた。
「やってしまった」と。
基板と同寸ステンシルの方が扱いやすいに決まっている。
そう思い込んでいたからだ。
しかし途方に暮れていても仕方がない。
ステンシルを挟んでいた木板を土台に、巨大ステンシルの片側をテープで固定し、扉が開くような形にする。
そして巨大ステンシルの下に基板を置き、位置を合わせ、ハンダペーストをスクレーパーで塗布してみた。
するとどうであろうか。
めちゃくちゃ塗りやすい!
重い。
たわまない。
ズレない。
完璧だった。
電子工作は、時々こういうことがある。
失敗だと思った選択が、
実は最適解だったりする。
超巨大ステンシルは、
思い込みをひとつ壊してくれた。
ただ、さすがにこのサイズは大きすぎだ。保管場所に困る。
次からはA4サイズくらいで頼んでみようと思う。
これは後に
「超巨大ステンシル事件」と呼ばれることになる。
🟦 第5章:止まらないでほしかった
超巨大ステンシルはさておき、実は、DKN-X06Aには原型がある。
娘のために作った、ひとつの小さな電源基板だ。
USBでも動き、
電池でも動く。
どちらかが途切れても、
時計が止まらないように。
ただそれだけの理由だった。
けれど僕にとっては、それがすべてだった。
止まらないでほしかった。
時間も、
生活も、
そして、あの子の毎日も。
あのとき作った
DKN-02-PW USB or BAT Power Board。
それが、
今思えばDKN-X06Aの原型だった。
電源を束ねるという発想は、すでにそこにあった。
ただ今回は、それをモジュールという形で整え直しただけだ。
🟦 終章:始まりと終わりを整える
電源は、ただの5Vではない。
それは回路の“始まり”であり、
そして“終わり”でもある。
どこから来て、
どこへ流れ、
どう受け止めるのか。
それを整えることが、
僕にとっての電子工作だ。
巨大ステンシルも、
小さなOR回路も、
娘の時計も。
すべては、
止まらないようにするための工夫だった。
思い返せば、僕の半生も今までずっとそうだった。
「始まりを整え、最後まで責任を持って、終わりも整えてきた。」
DKN-X06Aは小さな基板だ。
けれどそこには、
「始まりと終わりを、雑に扱わない」
という
自分の人生哲学に似た思想が詰まっている。
このモジュールは、
また次のモジュールへとつながっていく。
物語は、まだ続く。
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