✅ 「ただ音が出るだけ」じゃダメだった。壊れたラジオが『誰かのための道具』に変わるまで。
FMラジオ2号機DKN-03開発記①
この記事でわかること
✅ 音が出たラジオを、人に使ってもらえるラジオに仕上げるために行った具体的な改善点
✅ イヤホンジャックや配線、部品配置など、基板を一度作ってから気づいた設計の修正ポイント
✅ Arduino Nanoを使った自作機で、使い勝手を左右するソフトウェア修正(音量保存)の考え方
✅ 個人クリエイターでも可能な、JLCPCBでの基板発注方法とスポンサー制度の実体験
✅ 試作機から正式版(DKN-03)へ移行した理由と、Rev1.1発注までの流れ
✅ 自作ラジオを持ち出して行う、「旅するラジオ」という受信テストの考え方
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音が出ただけでは、まだ完成じゃなかった。
「人に使ってもらえるか?」
そこから、DKN-X03は本当の意味で生まれ変わった。
🟦 序章:前回のあらすじ
前回、壊れていたFMラジオは、
新たな命を組み込まれ、ついに音を出すところまでたどり着いた。
自作したプリント基板。
Arduino Nano。
FMラジオモジュール。
確かに、FM放送は受信できている。
でもその時、ふと思った。
これは本当に
「人に使ってもらえるラジオだろうか?」
音が出た。
それだけでは、まだ足りなかった。
🟦 第1章:音が出たあとに見えてきた「使いにくさ」
朝起きるとまずDKNーX03のスイッチを入れる。
FMラジオを聴きながら朝食を作り、朝のコーヒーを飲みながらDKN-X03から流れてくる放送に耳を傾ける。
「いい音だ。LM386もちゃんと仕事をしてくれている。」
動作試験を兼ねて、朝から晩までラジオを聴く生活になっていた。
そんな生活を2週間ほど続けていると、いつの間にかテレビを見なくなっていた。
ただ、実際にしばらく使ってみると、設計段階では見えなかったことが、次々に見えてきた。
「ではもうちょっと修正して、2号機を作るか」
■ まずはイヤホンジャックのフットプリントを修正
フットプリントが合っておらず、
足を曲げないと基板に入らなかったアレだ。
そのせいでイヤホンを差し込むと若干の接触不良が起きていた。
これは完全に設計ミスだった。
そこで、イヤホンジャックのフットプリントを作り直し、足を曲げずに、そのまま実装できる形に修正した。
■ PCBは「動いた後」に本当の改善点が見える
次に手を入れたのは、配線。
PCBエディタ上で見直すと、
・無駄に遠回りしている配線
・もう少し整理できそうな引き回し
が目についた。
そこで、
配線を整理し、より効率の良い引き回しへ変更する。
「無駄な配線が整理され、ノイズにも強くなるだろう。」
あわせて、裏面実装しているArduino Nanoの足の間にある電源二重化回路を、全体的に約1mm下へ移動した。
「これだけで、部品が密集しているエリアでのArduino Nanoのハンダ付けが、かなり楽になる。」
■ シルク印刷は「使ってみて初めて分かる」
もう一つ、使っていて気づいたミスがあった。
F- / F+ / V- / V+ のシルク印刷。
LEDのすぐ近くに配置していたため、
LEDが眩しくて、文字がほとんど見えなかった。
そこで、表示位置をスイッチ下部へ移動。
あわせて、シルク印刷の細かな間違いも修正した。
■ ソフトウェアにも「人向け」の修正が必要だった
修正が必要なのはハードだけではなかった。
ソフトウェアにも、致命的な「使いにくさ」があった。
それは――
電源を切る前の音量の保存処理を入れ忘れていたこと。
電源を入れるたびに、音量が初期値に戻る。
自分で使っていても、
「これはちょっと不親切だな」と感じた。
そこで、前回聞いていた音量をEEPROMに保存し、次回起動時に復元するようプログラムを修正した。
これで、
✅ 電源を入れたら
✅ 前回と同じ音量で
✅ すぐに聞ける
ラジオになった。
■ ここで「X」を外した
これらの修正をすべて反映した時、DKNーX03は、もう「試作機」とは呼べない状態になっていた。
そこで、
DKN-X03からXを外し、
正式にDKN-03とした。
もうこれは、
実験のための基板ではなく、人に使ってもらうためのラジオになるのだ。
🟦 第2章:JLCPCBさんにスポンサーになってもらえた
そして、もう一つ大きな転機があった。
いつも基板製造でお世話になっているJLCPCBさんに、スポンサーとして協力していただけることになった。
シルク印刷には、JLCPCBさんのロゴも入れさせてもらった。
個人クリエイターでも、活動内容をきちんと伝え、申し込んで、条件を守れば、スポンサーになってもらえる可能性がある。
これは、やってみて分かった事実だ。
「自分も基板を作ってみたい!」と言う読者がいれば、ぜひ下記リンクから自作基板の発注をチャレンジしてみてほしいと思う。
■ 実際の基板発注方法(写真付き手順)
※KiCadでガーバーファイルまで作成できている場合の手順です。
①新規JLCPCBのアカウントを作成する。
②作成されたアカウントでサインインする。
③画面右上の「発注する」を選択する。
④ガーバーファイルのアップロード画面が表示されるので、作成済みガーバー+ドリルをzipで圧縮したファイルをアップロードする。

アップロードする。
⑤アップロードされた基板が表示されるので、枚数、色などの仕様を登録し、「カートに保存」を選択する。

自分の基板が表示される。
⑥右上の「🛒カートボタン」を選択すると注文内容が表示されるので、発注する基板の左側に✅を付ける。

⑦右側の発送予定を選択すると配送方法を選ぶことができる。
特に急がないのであれば、送料の安いOCS NEPかOCS Expressを選んでおけば良いだろう。
⑧金額を確認して、「安全な決済」を選ぶ。

(※実際の支払いはドル)
⑨住所や配送方法などを確認し、支払い方法を決める。
PayPalやクレジットカード、Google Payに対応。
クーポンがある場合はここに表示されるので、使いたいクーポンに✅すると適用される。
⑩支払いをすると、生産工程に入る。
以上が、JLCPCBで基板を発注する手順だ。
生産中も工程が随時更新され、基板が今どういう状況かが分かる。とても親切だ。

どこまで進んでいるか分かるので、
とても安心できる。
🟦 第3章:スポンサーアカウントで Rev1.1 を発注
今回から特別に発行されたスポンサーアカウントを使い、配線やシルク印刷を見直した、DKN-03 Rev1.1をJLCPCBに発注した。
今回発注は10枚分行うことにした。

支援して頂いている
JLCPCBさんのロゴも入れてある。

裏面にArduino Nanoを乗せる。
■ Rev1.1実装と「作れる数」
基板を発注後、何日か経ったある日、家の玄関前に置き配で荷物が置いてあった。
袋の中にはいつもの青い箱。
ついにDKN-03 Rev1.1基板が届いたのだ。
さっそく開封し、基板をチェックする。

もちろんデータ通りにできている。
色はRev1.0と同じ紫色にした。
JLCPCBのロゴも綺麗に印刷できている。

アンテナ接続部も整えた。
さっそく届いた基板に、改めて部品を実装する。
最初に確かめたのはイヤホンジャックだ。
イヤホンジャックを基板のJ4にそっとに乗せる。
ピタッ。
イヤホンジャックは、まるで吸い込まれるようにピッタリと収まった。
「よかった!
無理に足を曲げなくてもいい!
これで接触不良は回避できる!」
今回LEDは緑ではなく、紫と相性の良いオレンジに変更してみた。
オレンジは緑ほど眩しくないので、LEDの抵抗値は2.2kΩではなく1.5kΩに変更した。

紫色の基板とオレンジLEDが合う。
スイッチも黒からグレー変更し、
落ち着いた印象となった。
JLCPCBのロゴも正面から見える
いい位置に収まった。
さらに嬉しいことに、DKN-03 FMラジオ用のアクリルケース単体も購入することができた。
「これでラジオキットを部品取りで買う必要はなくなった😅」
こうして、差し当たり、10台分は制作できる状態になったのである。
「少なくとも10台分は作れるな。親しい人たちにも分けて使ってもらうかな。」
■ DKN-03(Rev1.1基板)で見えてきた課題
DKN-03が完成し、スイッチを入れる。
いつものようにFM愛知が聴え始める。
イヤホンジャックのフットプリントを正しく修正したことにより、ちょうど良い音量がブレッドボードでのテスト時と同じVol4となった。
イヤホンジャックの接触不良が修正されたおかげだ。
と、ここまではよかった。
しかし、配線や部品配置、銅箔塗りつぶしエリアの最適化により、Rev1.0基板の時は隠れていた課題が浮き彫りになってきた。
信号受信レベルが低くふらつく時に、音声に紛れてチッチッというクリック音が目立つようになったのだ。
調べてみるとこの耳障りな音はラジオモジュールであるM5807MBから出ているようだった。
Rev1.0基板でこんな音は出ていなかったので最初は困惑したが、Rev1.1基板でM5807MBや、LM386がしっかり仕事ができるような環境になったため、今まで隠されていた問題点が表面化したようだ。
幸い、受信レベルが高い時は問題ないので、後日ソフトウェア側で受信レベルが低い場合の処理の見直しと更なるチューニングを行うつもりだ。
■ 旅するラジオへ
Rev1.1基板が届く少し前のこと。
寒風吹き荒ぶある日、ちょうど愛知県の岩倉市に行く用事があった。
試作機DKN-X03は自宅で受信できる放送局以外でテストできていない。
他の放送局もちゃんとオートシークで受信できるかどうか試したくなり、DKN-X03を持って行くことにした。
災害があれば、通信手段は限られる。
ネットも繋がるかどうかは分からない。
情報は取りたいが、スマホの電池は極力節約したいだろう。
その点このラジオはUSB電源と乾電池の同時使用ができるように作ってある。
いつも自由に電源が取れるとは限らないことを想定しているのである。
車を安全な場所に停車し、DKNーX03の電源を入れる。
冬の低い日差しが車内に差し込む中、緑色のLEDが点灯し、OLEDに家で聞いていたFM愛知の周波数80.7MHzが表示され、いつもと変わらない番組の音声が流れてくる。
今回のターゲットは、自宅では受信できなかった「90.4MHz ぎふチャン」だ。
「岩倉は岐阜からも近い。きっと受信できるだろう。」
さっそくオートシークを試してみる。
OLEDの周波数が次々と変わっていく。
途中、自宅で受信できる放送局を捕まえるが、目的の放送局ではないのでスキップする。
画面の周波数表示が、
89.9MHz
90.0MHz
90.1MHz
90.2MHz
90.3MHz
と変わっていく。
そして…
表示が90.4MHzになった瞬間、全てのLEDが一斉点灯し、2回フラッシュした。
ノイズの向こうから、聞き慣れない、でもはっきりとした「ぎふチャン」の音声が飛び込んでくる。
「やった!届いた……!」
自分の手で作った基板が、知らない街の空気を震わせている電波を、確かに捕まえた。
場所が変わっても、この小さな箱はちゃんと「ラジオ」として生きている。その事実に、冷え切った車内で一人、熱いものがこみ上げてきた。
岩倉でのテストが成功したことで、「どこへ行ってもこのラジオは情報源になってくれる」という信頼感に繋がった。
これからDKN-X03及びDKN-03は、
「旅するラジオ」として、
県外での秘密の受信テストが続くことになる。
🟦 おわりに
壊れていたラジオは、
✴️ 新しい命を与えられ
✴️ 音が出るようになり
✴️ 人に使ってもらえる形になり
✴️ 旅に出るラジオになった
DKN-03は、ここからが本番だ。
差し当たって次の旅の予定は、2月14日。
ドローンサッカーの試合で京都へ行く時だ。
これからは作るのではなく、育てていくターン。
この物語はまだまだ続く。
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