✅ 自作FMラジオの音量が大きすぎた。試行錯誤の末に見つけた「アッテネーター」という答え
FMラジオ3号機 DKN-03 開発記②
この記事でわかること
✅ 自作FMラジオで音量が大きくなりすぎる原因の考え方
✅ 抵抗値を変更して音量カーブを調整する試行錯誤の実例
✅ アッテネーター(分圧回路)の基本的な仕組み
✅ 小さな抵抗1本で回路の挙動が大きく変わる理由
✅ 実際の電子工作で行われる「仮説→検証→改良」のリアルな過程
✅ DKN-03 Rev1.2で行った受信安定化と音質改善の工夫
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🟦 序章:旅するラジオ
壊れたTEMUのラジオキットがきっかけとなり、内部を自作基板で総入れ替えすることになった。
こうして元のあるべき姿に戻ったFMラジオ試作1号機 DKN-X03(Rev1.0)が誕生した。
1号機を使ってみると、いくつか気になる点が見えてきた。
使いにくい操作、部品実装のしづらさ、そしてソフトウェアの細かな不具合。
それらを一つずつ修正し、正式なモデルとして生まれたのが
DKN-03(Rev1.1)、つまり2号機である。
■ 1号機は福岡へ
1号機にはさらにソフトウェアのバージョンアップを施し、 福岡へ出張する友人に預けた。
目的はただ一つ。
現地の放送局をオートシークで正しく捕まえられるか。
結果は問題なし。
自動で福岡の放送局を検出することができた。
「良かった。
オートシークのロジックは問題がないようだ。
でも……1つの県だけでは安心できないな。」
■ 2号機はまず滋賀へ
2月14日。
僕は京都で開催されるドローンサッカーの試合に出場するため、 早朝から車を走らせていた。
途中休憩で立ち寄った滋賀県の草津SA。
ここで持参した2号機のオートシークテストを行う。
周波数表示が 0.1MHzずつ静かに上がっていく。
「滋賀県の放送局を受信してくれ……!」
祈るような気持ちで見守っていると、 聞き慣れない放送がスピーカーから流れてきた。
念のため車のラジオで確認する。
間違いない。
滋賀県の放送局だ。
「これで2県目だ。
このまま安全運転で試合会場へ行くとしよう。」
■ 2号機の最終目的地は京都
試合会場は亀岡市のサンガスタジアム。
Jリーグの試合も行われる立派なスタジアムだ。
現地へ近づくにつれて、
あたりは真っ白な濃い霧に包まれていった。
「この霧は…。何か嫌な予感がするな…」
濃霧の中で会場に入り、試合準備もそこそこに ラジオのスイッチを入れてオートシークを実行する。
結果は――
京都の放送局も無事受信。
「これで3県目だ。」
先ほどの嫌な予感は全くの杞憂だった。
次は3月7日、長野県へスキーに行く。
「その途中で岐阜と長野でもテストだな。」
そして僕は思った。
「その前に、
2号機をもう少し良くしておこう。」
こうして
DKN-03 Rev1.2の改良が始まった。
🟦 第1章:Rev1.1からRev1.2へ
京都でのオートシークテストを終え、DKN-03の基本機能には手応えを感じていた。
福岡、滋賀、京都と3つの地域で放送局を問題なく受信できたことから、ソフトウェアのロジック自体には大きな問題はなさそうだ。
しかし、実際に使いながら基板を眺めていると、いくつか気になる点も見えてきた。
■ 少し気になる点
Rev1.1自体はきちんと機能している。
毎日朝から晩まで使っていても不具合はなく、市販のFMラジオと比べても遜色はない。
ただ、少しだけ調整したい点があった。
気になっていたのは次の点である。
✴️ 部品配置の改善
✴️ ノイズ対策
✴️ 実装性の向上
✴️ ラジオモジュールDIP化基板P20D10Aの供給安定性への懸念
✴️ 電波安定性の向上
である。
特に、電波安定性については、もう少し余裕を持たせておきたい。
Rev1.1ではUSBケーブルがアンテナ化して受信感度が変わったりすることがあった。
そして、いつもaitendoさんから購入させていただき、DKN-03にも採用していたラジオモジュールDIP化基板である「P20D10A」の供給に少し不安が生じてきた。
「少なくとも電波安定性の改善とDIP化基板の不安は何とかしたいな…。」
■ 自作DIP化基板とRev1.2発注
そこで2号機の回路をベースに、いくつかの改良を加えた Rev1.2 と、P20D10Aに変わる自作DIP化基板を作ることにした。
今回もスポンサーのJLCPCBさんのご好意で作っていただいた。
■ JLCPCB基板発注リンク

以下のリンクから行えます。
➡️ 英語版発注システムはこちら
➡️ 日本語版発注システムはこちら
➡️ 実際の発注手順はこちら
■ 自作DIP化基板DKN-ADP-11D10
まず作ったP20D10Aを参考にして作った自作DIP化基板は、
名称をDKN-ADP-11D10とした。
11mm角・10ピン・2mmピッチのキャスタレーション基板を
2.54mmピッチへ変換する基板という意味である。
サイズはP20D10A互換とし、DKN-03でそのまま置き換えられるようにした。
一方で、基板厚についてはaitendoさんのホームページ表記では1.2mmとなっていたものの、手元の実物は1.6mmだったため自作版では1.2mmに変更し、ピンヘッダーで実装した際の高さを抑えるように、配線は極力真っ直ぐ等間隔になるよう工夫した。

右がaitendoさんのP20D10A。
幅と高さは同じにし、
配線は極力真っ直ぐ等間隔、
基板厚は0.4mm薄くした。

を実装したところ。
サイズも問題なさそうだ。
実はこの基板には、もう少し機能を持たせることも考えた。
0603サイズのコンデンサーなどを実装し、単なる変換基板ではなくラジオモジュールとして完成させる案である。
しかし今回はDKN-03との互換性を優先することにした。
あくまでこの基板は「変換基板」として設計することにしたのである。
「ただ、この変換基板を作った経験は、いつか完全ラジオモジュールを作る際に必ず役立つだろう。」
■ DKN-03 Rev1.1とRev1.2比較写真
まずは出来上がった基板を見ていただこうと思う。

左がRev1.1、右がRev1.2。
左下の電源入力部にSMD部品を採用。

左がRev1.1、右がRev1.2。
Arduino Nano実装部にはランドが
無くなり、右上アンテナ線付近に
いくつかのSMD部品を採用。
■ 電源部の変更
写真で見ていただいた通り、SMD部品のおかげで電源周りのスペースが空き、USBからの電源入力部にフェライトビーズ(FB3)を入れることに成功。これにより、USBケーブルのアンテナ化をいくらか抑えることができるだろう。
裏面実装するArduino Nanoのハンダ付けもやりやすくなった。
裏面に部品の足が出ないため、Arduino Nanoと接触するリスクもなくなった。
■ R5とC11の位置の入れ替え
Rev1.1までは、ラジオモジュールからの出力とLM386のPin3への信号入力の間にあったR5とC11の配置が適切でなく、無駄なループができていた。
R5とC11の位置を見直し、無駄なループをなくした。
■ ラジオモジュールへの電源入力部の改良
Rev1.1までは、Arduino Nanoからの3.3V出力をフェライトビーズ(FB1)を通して直接M5807M(RDA5807M搭載ラジオモジュール)へ入力していたが、Rev1.2では入力ピン直前に0.1μFのデカップリング用コンデンサーを入れ、電源の高周波ノイズの除去と瞬間的な電力不足を補うようにした。
ただスペースの関係上、スルーホールではなく基板背面にSMD部品として実装することにした。
■ アンテナからの入力保護
Rev1.1まではM5807Mのアンテナ入力ピンとアンテナは直結だった。
そのため、アンテナに触れた際に静電気でM5807Mが壊れる恐れがあった。
そこでRev1.2では、アンテナとアンテナ入力ピンの間にTVSダイオードを入れて静電気対策とした。
また、将来フェライトビーズを組み込めるよう、直列に0603サイズのパッド配置し、今回は0Ωの抵抗で接続しておくようにした。
■ アンテナ配線をビア壁で保護
Rev1.2では、アンテナ配線の周りに等間隔でGNDビアを打つことにより、ビア壁としてメイン基板主回路との間の防御壁となるようにした。
🟦 第2章:電波と音を安定させる
Rev1.2の設計変更には、もう一つ大きな目的があった。
それは 受信の安定性をさらに高め、音をより良くすることである。
Rev1.1の段階でも、ラジオとしては十分に実用的だった。
福岡・滋賀・京都と複数の地域で放送局を問題なく受信できている。
しかし、使い込むうちに一つ気づいたことがあった。
USBケーブルを触ると受信状態が変わるのである。
少し位置を動かすだけでノイズが増えたり、逆に受信感度が良くなったりする。
つまり――
USBケーブルがアンテナの一部として動作してしまっていた。
これは小型電子機器ではよく起こる現象だ。
アンテナの基準となる カウンターポイズ(GND側のアンテナ) が十分に確保されていない場合、電源ケーブルや周囲の配線がアンテナとして振る舞うことがある。
今回のDKN-03も、まさにその状態だった。
「ならば、カウンターポイズを増やしてやればいい。」
そう考えて、ケース内部に銅テープを貼ることにした。
FB3を入れることでUSBからの高周波ノイズを抑えるだけでは不十分だと思ったからだ。
■ カウンターポイズの追加
DKN-03のケースは、
透明プラスチックによる、あえて「基板をデザインとして魅せる」構造になっている。
つまり、金属筐体ではない。
そのため、ラジオに必要なGND側の面積が不足している可能性がある。
そこで、
美観を損なわない位置、すなわち、
✴️ ケース背面の内側
✴️ 電池ボックス裏側
この2箇所に銅テープを貼り、
GND面積を大きくすることにした。

なくカウンターポイズ面積を増やせる。
アンテナ周囲だけは影響を避けるため貼らず、
それ以外の部分をほぼ一周するように配置した。
ただ、銅テープをケース内側に貼るのはなかなか苦労した😅
■ スピーカー配線の取り回し方法を変更
Rev1.1までは、スピーカー端子を右上に置き、そこからツイストペア(ねじれ構造)にしたスピーカー線をラジオモジュール裏側→OLEDすぐ上側を通してメイン基板へ接続していた。
Rev1.2では、スピーカー端子を真下に出し、ラジオモジュールやOLEDと離れた方向からメイン基板へ接続するように変更した。
「これでスピーカーへ乗るノイズが減るだろう。」
■ スピーカーの変更
Rev1.1まで、スピーカーはコーン部が滑らかな8Ω1Wのものを使っていた。

コーン部は滑らかだ。
Rev1.2では渦巻き状に溝が入ったコーンになっている8Ω2Wのものに変更した。

■ 結果
この処理を行った結果、
受信状態は明らかに安定し、高音がクリアになり、ラジオの音がより良く聞こえるようになった。
またUSBケーブルの位置によって
受信感度が大きく変わる現象はほぼ消えたのである。
つまり、
USBケーブルがアンテナとして動作する状況が減り、
本来のロッドアンテナが主役になったということだ。
小型ラジオでは、
アンテナだけでなく GND側の設計も非常に重要である。
またスピーカー形状でも音が変わる。
今回の改良は、そのことを改めて実感する結果となった。
そしてこの時点で、僕はこう思っていた。
「Rev1.2は、かなり良くなった。」
しかし――
この後、
思いもよらない問題が待っていた。
それは 音量だった。
🟦 第3章:思わぬ音量問題
Rev1.2の改良により、受信状態は明らかに安定した。
USBケーブルの位置によって感度が変わる現象はほぼ消え、
音質も以前よりクリアになった。
「これはかなり良くなった。」
そう思いながら電源を入れ、いつものようにラジオを操作した。
しかし――
すぐに異変に気づいた。
音が大きすぎるのである。
ボリュームを最小の Vol0 にしても、
普通に聞こえてしまう。
しかもそれなりの音量である。
本来ならVol0ではほぼ無音、
あるいはかすかに聞こえる程度であるはずだ。
Rev1.1ではVol0はかすかに聞こえる程度、室内ではVol4がちょうど良いというドンピシャな状態だったのに…。
「試作1号機(Rev1.0)の時と同じ現象だ。おかしいな…。」
あの時は確かイヤホンジャックのフットプリントの設計をサボって、イヤホンジャックが入らないのでピンを無理矢理曲げて入れたのが原因だった。
でも今はフットプリント問題は解決している。
■ 原因を探る
まず疑ったのは LM386だった。
手元の在庫の都合で、
Rev1.2ではRev1.1とは別メーカーのLM386を使用していた。
「個体差かもしれない。」
そう思い、Rev1.1で使っていたLM386を取り外して交換してみた。
しかし――
結果は変わらなかった。
音量は相変わらず大きいままだ。
■ スピーカーの影響
次に疑ったのはスピーカーだった。
Rev1.2では音質改善のため、
スピーカーを8Ω1W→8Ω2Wのものに変更している。
そこで試しに、
Rev1.1で使っていた8Ω1Wスピーカーを取り外し、Rev1.2に取り付けてみた。
すると――
音量カーブはRev1.1とほぼ同じ状態 に戻った。
Vol4あたりがちょうど良い。
しかし同時に、
音質もRev1.1と同じレベルに戻ってしまった。
「やはり2Wスピーカーの方が音はいい。」
つまり
⭕️ 音質 → 2Wスピーカーが良い
❌ 音量 → 大きくなりすぎる
という状況だった。
「音質はそのままで、音量カーブを戻す方法はないものか…」
■ 信号レベルを下げる
しばし回路図を見ながら思案する。
そこで思いついたのは、
アンプに入る信号を小さくする
という方法だった。
DKN-03では、
M5807Mラジオモジュールからの音声信号が
R5(直列抵抗)
を通ってLM386のPin3に入力されている。
「この抵抗を大きくすれば、
入力信号は弱くなるはずだ。」
そこで実際に抵抗値を変えて試してみることにした。
試した抵抗値は次の通りである。
2.2kΩ(Rev1.1)
↓
4.7kΩ
↓
10kΩ
↓
22kΩ
ハンダ吸い取り線と外した抵抗の山が出来上がる。
基板もフラックスでベタベタだ。
抵抗値を上げるごとに、
確かに音量は少しずつ下がっていった。
しかし――
まだ十分ではない。
Vol1がまだ少しうるさい。
Rev1.1と同じ音量カーブにはなかなか近づかない。
■ 万策尽きたかに思えたところに…
以前、AIと回路の話をしていた時に
ふと出てきた言葉が頭に浮かんだ。
それは
「アッテネーター」
だった。
🟦 第4章:アッテネーターというヒント
万策尽きたかに思えたその時、
以前AIと回路の話をしていたときに出てきた言葉が頭に浮かんだ。
それは
「アッテネーター」
という言葉だった。
アッテネーターとは、
信号のレベルを意図的に下げる回路のことである。
「そうか。
アンプの前で信号を減衰させればいいのか。」
そう考えて回路図を見直してみる。
DKN-03では、
ラジオモジュールからの音声信号が
C11
↓
R5
↓
LM386 Pin3
という経路でアンプへ入力されている。
つまり、この入力部分で
信号を分圧してやればよいはずだ。
■ 急造アッテネーター
そこで試したのが、
C11の手前からGNDへ抵抗を入れる
という方法だった。
具体的には、
C11のパッドから
LM386のPin4(GND)へ
1kΩの抵抗
を追加してみた。
もちろん、Rev1.2の基板にはそのような抵抗を入れる場所はない。
そこで、基板裏面で
C11のパッドとPin4のパッドへ
抵抗を直接ハンダ付けする空中配線で実装してみた。

スピーカーの裏に隠れる位置なので
応急処置としては問題はない。
■ 急造アッテネーターの効果
さっそく電源を入れてみる。
ボリュームを Vol0 にする。
すると――
ほとんど聞こえない。
かすかに音が聞こえる程度だ。
そして Vol3〜Vol4 にすると、
ちょうど良い音量になる。
これはまさに、
Rev1.1とほぼ同じ音量カーブだった。
「やった!」
思わず声が出た。
■ なぜ効いたのか
今回追加した1kΩの抵抗は、R5と組み合わさることで
簡易アッテネーター(分圧回路)として働いている。
今回の設定では
R5 = 22kΩ
GND側抵抗 = 1kΩ
となるため、
入力信号はおよそ
1 / 23
まで減衰する。
つまり、
アンプに入る信号が小さくなり、
音量カーブが適切な範囲に収まったのである。
■ Rev1.3の課題
今回の急造アッテネーターは
あくまで応急処置である。
基板裏面に抵抗を直接取り付ける方法では、量産や再現性の面で問題がある。
そこで次の改良では、
このアッテネーター回路を正式に基板へ組み込む
ことにした。
つまり――
DKN-03 Rev1.3
の設計である。
🟦 終章:今回の学び
今回の改良で改めて感じたことがある。
電子回路は、
ほんの小さな抵抗一本で挙動が大きく変わることがあるということだ。
そして、回路図だけでは分からないことも多い。
実際に作り、試し、失敗し、また試す。
その積み重ねの中で、
ようやく答えに辿り着くことができる。
次は、この急造アッテネーターを正式に組み込んだ
DKN-03 Rev1.3の設計である。
このラジオの旅は、
まだ始まったばかりだ。
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