20年前のカミングアウト(2):「女には興味がないねん」親友に打ち明けた夜
こんにちは、しみっく(@simik_gay)です。
20年以上前に親友4人にゲイをカミングアウトした話 2つめです。
2001年大学2回生の夏、1番の親友ヤスダにゲイをカミングアウトした話になります。
前回はこちらです。
ヤスダとの出会い
まずはヤスダとの関係について簡単に説明します。
ヤスダは大学で出会った同じ学科の親友です。入学してすぐ仲良くなり、卒業までいつも一緒にいました。授業はもちろん、同じサークルに入ったので文化祭も一緒に店をやったりしましたし、大学1回生、2回生の頃は同じサークルの友人と3人でよく遊んでいました。
カミングアウトを決意したあの日
2001年8月2日、大学2回生の夏。私はヤスダと二人きりで神戸に遊びに行きました。
一番の親友であるヤスダには本当の自分のことをわかっていてもらいたいと、夏休みに入る前から願っていました。その日にカミングアウトをすると決心していたわけではなく、具体的な計画があったわけでもありません。それでも、二人きりで出かけるその日は絶好のチャンスでした。
ヤスダと会って神戸に向かい、当時上映されていたあの大ヒット作「千と千尋の神隠し」を見てご飯を食べて、ハーバーランドに行きました。その後、晩に宝塚で花火大会があるということだったので宝塚に向かったのですが、乗り換えようとした西宮北口駅で花火大会中止のお知らせが出ていて、しょうがなく帰ってきました。
梅田に着いたのが19時15分ぐらいで帰るにはまだ早い時間だったので、ソフトクリームを食べたり、梅田HEP FIVEの向かいにある広場で他愛もない話をしていました。そのうちに今しかない、カミングアウトしようと決意したのです。
言葉を探して
20時15分くらいになって「そろそろ帰ろうか」ってヤスダが言い出した時、私は「もう少しいようや」と引き留めました。それで、ヤスダは道ゆく人を観察して、面白おかしく考察していました。そんな話に適当に相槌を打ちながら、私はどう切り出すべきか必死に考えていました。
「男が好きやねん」、「ゲイやねん」こんな表現が思い浮かびましたが、ストレート過ぎます。当時のゲイに対する偏見を考えると、ショックが大き過ぎて引かれてしまう可能性が高いと考えました。少しでも受け入れてもらいやすいように、言い方はもっとソフトなものを選ばなければ、と考えました。
それと、話を始めるきっかけになる言葉もできるだけ自然な感じでなければ、と考えました。できるなら相手の気持ちをこちらに引き込むような工夫も欲しいところです。
非常に悩みましたが、カミングアウトは諦められませんでした。
最終的に選んだ言葉は「俺は女には興味ないねん」でした。直接的に男に興味があるというのは言いづらくても、女に興味がないっていうだけなら消極的な言い方なので向こうが都合よく解釈しやすいし、ショックが和らぐかなとか、考えての結論でした。
言い出すタイミングを図りながら、ヤスダがケータイを弄っているから切り出しにくいなとか、ケータイをしまったら言い出そうとか、ヤスダが黙ったらとか、いろいろ考えながら長い時間を過ごしました。
「自分って口堅いやんな」覚悟を問う
次の問題は切り出し方をどうするかでした。このときは悩んだ結果、「自分って口堅いやんな」と言いました。私はあの時は、これは我ながらうまくできたんじゃないかと思いました。「ん?なんで?」とヤスダの関心を引きつつ、覚悟を要求していたのです。私がこれから話すことを、ヤスダが他の人には喋らないということを信じているというサインも含めていました。
この言葉に対してヤスダが冗談でも「誰かに言ってしまうかもしれん」とか返していたら引き返すことも考えなければなりませんでしたが、そんなまずい返答しそうな相手にそもそもそんなこと言ったりしません。もちろんヤスダは「人に言いふらしたりはしない」と応えてくれました。
震える声、打ち明けた秘密
そのあと、言う言葉が決まっていても声が出ない時間が続きました。「あのさ、俺な、、、」って言ってから次の「女には」がどうしても口から出なくて、座っていたところから立ち上がって息を整えているうちに今度は微かに膝が震えてきたのを覚えています。
そんな私にヤスダは「あのさ、言いたくないことなら言わんでもええねんで」って言いました。もう引けない私は「言いたいから言ってるねん」と返しました。
頭の中で、10秒数えたら言う、電車が通り過ぎたら言う、そんなことを何度も何度も心に決めてはやはり言えないということを繰り返しました。何分待たせたかわかりません。もしかしたら30分近く待たせたのかもしれません。
それでもようやく、震える声で「女には興味ないねん」と言えました。言えたら、少し楽になれました。ヤスダが受け入れてくれるなんていう確証はどこにもなかったけれど、それでもヤスダは私が予想していたように、明らかな嫌悪感は見せませんでした。それはちょっとホッとしました。
ほんの少しの沈黙の後、ヤスダは「別にいいんじゃない?」と言いました。正直、私が期待していた言葉ではありませんでした。それでも彼なりに考えて出してくれた言葉で、それに文句をつけるつもりもありません。欲を言えばきりがないけれど、そこまで期待してカミングアウトしたわけでもなかったはずです。
それから「なんでわざわざそんなこと話そうと思ったん?」と聞かれました。そのとき私は「正直に生きていきたいし、これを言うことで壊れてしまうような薄っぺらな関係なら最初からいらないと思っている」って返しました。今ならそれは随分強がった言葉だなと思います。そんなに私は強くありません。今もそうですが、あの頃は今よりもっと弱かったのです。でもそんな風に虚勢を張ってしまっていました。
そしたら「自分、人間として偉いな」って言われました。それ自体は褒めるつもりで言ってくれたんだろうと思いますが、そう言ってくれた理由が当時の私にはわかりませんでした。ヤスダとしては、ずっと隠し通す方がリスクも少なくて楽だろうに、カミングアウトなんてしんどくて大変なことできるのは偉いな、ぐらいの意図だったのかなと思います。でも、私がカミングアウトしたのはあくまで自分が話したかったからというだけです。誰かのためじゃなくてあくまで自分本位のこと。私が男を愛するのに誰かの承認が必要なわけでもない、そんな風に考えていました。
カミングアウトはしたものの、そこからあまり深い話にはならず一旦その話は終わってしまいました。ヤスダは私がゲイであることを事実として認識はしたけれど、深くは突っ込んでこなかった。ズケズケと土足で踏み込んでくるようなことはしない人間です。それは彼もコンプレックス強めで、秘密主義者でしたから。そこまで踏み込まない方がいいだろうと遠慮してくれたんだろうと思っています。
その後、ヤスダも彼の秘密を一つ話してくれました。それは私からしたら可愛らしい秘密でしたが、ヤスダもいつかは言いたいと思っていたことだけれど「恥ずかしいから」言えなかったことを私に伝えてくれたのです。
カミングアウト後のヤスダとの関係
それ以降もヤスダとの関係は特に変わりませんでした。変に距離をおかれることもありませんでしたし、逆に親密になるということもなく、自然なままでした。
流石に私に対して「彼女作らへんの?」とかそういう話はしませんでしたし、ある程度は理解はしてくれているとは思っていましたがやっぱりゲイということがタブーに近い時代でした。わざわざ触れるのはためらわれたでしょう。
私も自分の事情で知らなくていいことを背負わせてしまっていることに引け目を感じていましたし、余計な気を使わせたくなかったこともあって、あまり自分がゲイであることに関する話をすることはありませんでした。
他の友達3人にカミングアウトしたいと決意するまでは・・・。
次回の話はこちらです。
