巽くんと今日子さん 第13話
前回のお話
第13話
付き合いましょうとなったけど、一緒にいる時間以外は片思いと変わらない。変わらないどころか前より一層好きが募ってる。一緒にいる時間はあっという間に過ぎてしまうし思い出そうとしてもフワフワしてて雲の中にでもいたみたい。はっきりと思い出せるのは頭の中に響いた言葉だけで、それを巽くんの声でリピートしたいのに自分の声になってしまう。
「次はクリスマスプレゼント、一緒に買いに行きましょう。何がいいか考えておいて下さいね。」
目を閉じて思い浮かべる。
欲しいものはもうあった。
でも、それは“もの”じゃない。
でも.…と考えてデートの約束のLINEに返事をした。
決めました!
よければ.…おサイフがいいです。
わかりました!おサイフですね!
一緒に買いに行きましょう!
好きなブランドありますか。
お茶でもしながら相談して
ショッピングでどうでしょう
はい!うれしいです。
クリスマスデートなので
ケーキとかどうですか🎂
いいですね!
ボクはモンブラン好きです。
ワタシもデス.…✨️
ワタシもデス…。
これこれ、これが言いたいの。
嬉しさが込み上げてくる。
「今日子さん 好きです。」
と言われた後に小さい声で
「ワタシもデス…」と呟いた。
巽くんが「あっ、なんかズルいなぁ。」とクシャッと笑った場面を思い出す。
ワタシもデス…がいっぱいあるといいなぁなんて思って
『耳あかタイプはカサカサタイプですか、しっとりタイプですか』なんて質問をたくさん考えてしまうのにどうでもいいか、と質問はできずにいる。同じタイプか違うタイプか、違ってそうな気もするし同じような気もする。
モンブランを食べ終わってじっと巽くんの耳を見る。
「ん、どうかしました?」とくすぐったいような素振りをして目を細めていう。
「…なんでもないです。」
あなたの耳の中が気になりますなんて恥ずかしさが込み上げて目線を逸らして首を降る。
「おサイフはお揃いにしますか。」と言うのでそれには慌てて手を振る仕草もつけて否定した。
「おサイフは…ひとつでいいんです…。」
そう、ひとつがいい。
「本当いうと…欲しいのはおサイフじゃなくて一万円のエピソードで…。新札の、渋沢さんの。」
「巽さんにあの千円と五千円の新札をもらったの、あれがとっても嬉しくて。一万円の思い出も欲しくって。もし一緒に出かけるようなことがあるなら一万円でデートするなんてどうかなぁなんて考えたんですけど五千円、五千円の一万円だと新札の一万円のエピソードにならなくて。」
「だから…、二人がまず新札の一万円を出しあって、1枚の一万円はデートに使って、もう1枚の一万円はお付き合いしている間は大切に取っておく、なんてどうでしょう。おサイフはそれを入れておくための二人のおサイフで、こうしたデート代とか、二人の記念の新札の一万円を入れておきたいです。だからおサイフは一つでいいし、ブランドにもこだわりないです。」
「あっ、でもお札が折れないように長財布がいいかなぁと思ってます。」
なんか自分の希望ばっかり言ってしまって、変におもわれたかなぁと思う。
ほんとはこの間の初デートを予算一万円で、新札の一万円で出来たら、少なくとも二回デートしてくれるならなんて勝手にひとりで妄想脹らませていたけどLINEの一方通行だと、とてもそんなこと言い出せなかった。
でも、一緒に出かけると巽くんは全部デート代持ってくれようとするし、気を利かせてたまにはこちらでなんて芸当も私にはハードルが高い。
だからどちらかが持つじゃなくて、一緒に、二人のおサイフからがいい。
「なるほど…。じゃあ買いに行きますか。
おサイフは今日子さんの好きなの選びましょう。
持ってて欲しいです。」
巽くんがそう言ってくれてほっとする。
「ありがとうございます。
モンブラン美味しかったですね。」
立ってテーブルの上を見渡すと「お会計もう済んでます。」と言ってあっ と笑った。
「じゃあ….今日のところはごちそうさまでした。」
「次からは二人のおサイフですよ。」
軽く頭を下げてから、また笑いあった。
第14話(最終話)につづく
なんのはなしですか
