巽くんと今日子さん 第14話
前回のお話
第14話
吉祥寺界隈はおサイフを置いてあるお店も多い。
お値段もそれなりして、安くない。
「今日子さんは買い物よく行くんですか。」
「よく….でもないですけど、出かけて気になっちゃったら買っちゃう方です。ほら、お洋服とかって出会いですから。誰かとこうして買い物にくることは私にしては珍しいです。」
悩むわりに相談しない。でも気に入ったらパッと買ってしまう。
やっぱりこの前買ったおサイフの方がいいなぁと思い返す。通い始めたイラスト学校の近くのお店で見つけたもので、スリムでL字ファスナーの小さめの長財布。
真ん中の仕切りの中に小銭を入れるようになっていてその仕切りの側面にカードも二枚程度なら差し込めるようになっている。お札は仕切りを挟んだ両側に入れることが出来る。
クリスマスのプレゼント、おサイフがいいなぁと思ってから自然と目に入ったおサイフで、デザインも革の質感も色んなバリエーションがある中から、黒の光沢があるしっかりとしたクロコダイルのような型押しがされているものを選んだ。
巽くんが気に入るのがあればいつかプレゼントしたいなぁと思っていた。
「実はこの前、出会ってしまったおサイフがあって良ければそれにしたいんですけど…。私の選んだのでいいですか。」
うん、やっぱりあのおサイフがいい。
二人のおサイフだけどお会計するときには巽くんに立って欲しいから。巽くんに、うん、しっくり馴染みそうな気がする。
少し見下ろすように見る巽くんと目があった。
優しい優しい目をしている。
「今日子がいいなら。そうしよう。」
「プレゼントもまた欲しいものに出会ったらそのときにしましょう。」
「….それに….、早くふたりになりたいです。」
ちょっとイタズラっぽい目になった。
「ちゃんと宿題も考えてきましたか。
“巽さん”じゃない呼び方を。」
また不意にドキドキすることを言ってくる。
「それは、あとで…。」
いつもくすぐったくなるようなささいなやり取り。それがなんとも言えず好きで照れてしまう。
ふたりにどれだけ時間があるんだろう。
こんな、やり取りが続けばいい。
夜、家に帰ってから、ゴソゴソと封筒を探す。
お財布に付き合い始めたふたりの記念になる新札の一万円札を入れるための封筒だ。最初にふたりがそれぞれ一万円を用意する。
目の前に少しシワの入った一万円札。取っておく方はこの一万円にしておきたい。
付き合うことが出来るようになって、ひとり井の頭公園の弁財天さんにお礼参りに行ってきた。願いを込めて新札の一万円に水を回しかけた。水気をよく拭き取ってからジップロックに入れて本に挟んで帰ってきたけど少しポコポコしている。
けど、いいよね、これくらいは。
一万円にかけた願いごとは巽くんには内緒にしよう。
そう約束じゃない、願いだから。
今日、一緒に過ごせたことに感謝する。
それが積み重なっていけばいい。
いつまでも一緒にいられたらいいな、という気持ちはほんのり透けるぐらいがちょうどいい。
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封筒を探している
できるだけ薄い封筒を
薄い紙越し どうかお守り下さい
ふたりの居場所に
幸せのお札がいつまでも
舞い込んできますように
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完
なんのはなしですか
最後、エピローグを書きます。
書き上げるまでに随分時間がかかってしまいました。
ここまでお付き合いくださりありがとうございます。
朝の曲紹介はお休みします😌
