ヒューマンドラマ小説|サンクチュアリが見えたら(23)|為せば成る
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田舎の古民家シェアハウス『サンクチュアリ』。
住人は老若男女6人と猫が一匹。
住人の一人、雨宮茉莉花は40代シングルマザー。小学生の男の子が一人いる。茉莉花は、ある日サンクチュアリへの帰宅途中で男性と揉めていた50代の元モデルの女性、夏見紫をサンクチュアリに誘う。
茉莉花もまた、そうしてサンクチュアリに迎えられた一人だった——
茉莉花をサンクチュアリに誘った野路菊さくらは、過去に不倫経験のある70代女性。その他、神野宗四郎は30代の同性愛者の男性、木南悠はお金のない現役大学生。
仕事、恋愛、家族——
これは、それぞれがそれぞれに、生き方に悩みながらも、少しずつその答えを見つけていく物語。
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為せば成る
「珍しいな。根暗で本以外、物欲のないお前が」と驚いた顔をする宗四郎を無視して、「車が欲しいんだ」と悠が言う。無視された宗四郎は、いつも通り気にしていない様子だ。
「車とはまた意外だな。なんだ? 気になる女でも出来たか?」
茶化すように、宗四郎が言う。
「言うと思った。だから宗四郎には言いたくなかったんだ」
「違うのか?」
「違うよ。車があると便利ってだけ。今はまだそこまで忙しくないけどさ、3、4年になると大学も結構忙しいって聞くし、通学時間の短縮にもなるかと思って」
「まあ確かにな。よくこの距離を通ってるよ、お前。でも、それならバイト増やすより、いい案がある」
「何?」
「茉莉花と紫とお前とで、カーシェアすんの。車は俺が見つけてきてやるよ」
「え?」と言ったのは、紫と茉莉花、同時だった。2人の手が止まる。
「宗四郎。私、免許とってこの方、30年近くペーパーなんだけど?」
「紫さん。それ言うなら私なんて、免許持ってません」
「ちょうどいいじゃん。この際、紫はペーパー返上。茉莉花は免許取得。そもそもこの島で暮らしてんのに、車乗らないのが無理あんだって」と宗四郎が言う。

「紫が運転の練習するなら、俺隣に乗ってやるし、茉莉花の教習も、毎回は難しいかもだけど送ってやる」
「そんな、宗四郎。紫さんはともかく、私無理だよ。車の運転なんて。私、運動神経皆無だし」と茉莉花が言う。
「そんなこと言って、マリオカートはこの中で一番上手いくせに?」
「いや、それはゲームだからであって——」
「マリオカートより、オートマ車の運転のほうがよっぽど簡単だから。茉莉花は減らず口は叩く割に、根本的に積極性にも自信にも欠けるんだよ。まずやってみろって。それで実技試験に落ちまくるなら、それはそのとき考えればいい」
マリオカート。そうなんだ、と思いながら、紫はその会話を聞いていた。ちなみに、紫はマリオカートは疎か、ゲーム全般ポンコツだ。手が動かずに、身体が動くタイプ。
「紫もいいか? ペーパー返上して、カーシェア」
「いや、そりゃ私もできるならそうしたいけど」
「そうか。ざーんねん。悠、車の維持費はお前一人で賄えということだそうだ」と宗四郎が言う。さも残念そうに、顔を歪めて見せる演技が上手い。心なしか、悠もしょんぼりしているように見える。
「もう分かったわよ。ペーパー返上すればいいんでしょ!」
「そうそう。その意気」と宗四郎が笑う。
「茉莉花も、免許取得でいいよな?」
「ええ。もう。強引なんだから。紫さんが協力するのに、私は協力しないって訳にいかないじゃない」
茉莉花が言って、溜め息をつく。
「お。だそうだ。良かったな。悠」
「うん。なんだか茉莉花さんと紫さんには申し訳ないけど」
悠はそう言って、茉莉花と紫に「ありがとうございます」と頭を下げる。

【1159文字(あらすじ、その他除く本文のみ)】
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