ヒューマンドラマ小説|サンクチュアリが見えたら(24)|薔薇色の明日
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田舎の古民家シェアハウス『サンクチュアリ』。
住人は老若男女6人と猫が一匹。
住人の一人、雨宮茉莉花は40代シングルマザー。小学生の男の子が一人いる。茉莉花は、ある日サンクチュアリへの帰宅途中で男性と揉めていた50代の元モデルの女性、夏見紫をサンクチュアリに誘う。
茉莉花もまた、そうしてサンクチュアリに迎えられた一人だった——
茉莉花をサンクチュアリに誘った野路菊さくらは、過去に不倫経験のある70代女性。その他、神野宗四郎は30代の同性愛者の男性、木南悠はお金のない現役大学生。
仕事、恋愛、家族——
これは、それぞれがそれぞれに、生き方に悩みながらも、少しずつその答えを見つけていく物語。
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薔薇色の明日
「おいおい。謝ることはないだろうよ。どう考えてもWin-Winじゃん。悠はアルバイトを追加せずに車に乗れる。茉莉花と紫は、晴れてドライバーデビュー。最高じゃん」
それは、極めて宗四郎らしい言い分だった。本当に誰も損しない話ではある。
「でも、車は? 探してくるって言ったって——」と紫が言う。
「まあ俺に任せとけ。それより、各自、自分のミッションクリアに励むこと」
宗四郎は言って、最後に残った野菜スープを啜った。
「へえ。それで、運転の特訓することになった訳?」と麗子が言う。
スナックの店内、晴れて初出勤の日を迎えた紫は、テーブル席のテーブルを拭いていた。カウンター席に腰掛け、電卓を叩く麗子と言葉を交わす。客が来るのは大体6時からなので、大抵、開店直後はこんな風に雑用をしているのが常らしかった。
「そうなんです。強引すぎて、宗四郎らしいです」
紫が戯けて言う様子に、麗子が笑う。

「まあそれで誰も損しないあたりが、また憎いですけどね」
「本当ね。まさに宗四郎らしいわ」
電卓の数字を帳簿に記載しながら麗子が言う。その言葉には、しみじみと実感がこもっているように聞こえる。
「麗子さんは宗四郎と知り合って長いんですか?」
「長いってほどでもないわよ。宗四郎がこの島に来てからの付き合いだから——3年くらい?」
「そうなんですか。でも宗四郎があのキャラだから、3年も付き合いがあれば、旧知の仲って気がします」
「確かにね。紫さんと宗四郎も、知り合ってまだ1週間も経たないなんて信じられないものね」
麗子が言って笑う。
今日も麗子の爪は、美しい薔薇色だ。
「麗子さんは運転するんですか?」
「そうね。まあこの島で暮らす上では必須だから。ここは家から歩いてすぐだけど、普段の買い物とかは車ばっかり。都会の人のほうがよく歩いてるわよ」
「そうなんですか。でも確かに、この島に来てから私あんまり歩いてないかも」と紫が言う。
「そうでしょ? 気をつけないと太るわよ」
「本当ですね。健康のためにも歩かないと」
「健康といえば——」と麗子が言う。
「私この間、凄くお腹が痛くなって、本土の病院まで慌てて行ったわ」
「え、大丈夫だったんですか?」
「全然、全然。尿路結石。きっともう死ぬんだと思って、慌てて本土の病院行ったのに、次の日にはポロって出てきて笑っちゃった」
麗子は言って笑う。
「あ、でも、一つだけ気になることが」
「まだお腹痛いとかですか?」
「ううん。お腹の痛みはすっかり。私の身体の話じゃなくて——その病院で、さくらさんを見た気がしたのよね」
麗子の言葉に、紫はどきりとした。
「いや、私も宗四郎繋がりで、顔見知り程度だけど、さくらさん、その時も着物姿だったし、間違いないと思うのよね」

【1135文字(あらすじ、その他除く本文のみ)】
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