お守りになった言葉|あの日のわたしに会いに行く
「柳のような人だね」
って同僚に言われた。
麗しき20歳の乙女時代のことだ。
柳?
幽霊とセットのようなあの柳?
時代劇ででてくるあの柳?
麗しき20歳の乙女に向かって、柳?
「倒れそうで倒れない」
あとに続いたその言葉。
素直に誉め言葉としても受け取れず。
まだまだ深く読み取ることもできず。
もやっとした。
きっと顔に「困惑」と書いてあったことだろう。
ぴきっ。
若干の怒りマークとともに。
あの日、言われた「柳」
当時は華奢な体つきだったので、
折れそうで、折れないという体力的なことだったのかもしれない。
当時30代半ばぐらいだっただろうか。
その男性のことをおじさんと思っていた。
今では、すっかりわたしの方が年上だ。
熟した大人になった乙女は
「しなやかさを身につけたい」と思うようになった。
そして、しなやかさのイメージに
柳がでてくるようになった。
リアルで柳を目にすることはないのに
柳をイメージするとは、歳のせい?
あのときの言葉が残っているから?
もう生きていく意味が見いだせない
と思っていたこともある。
わたしが大切に育てたものを奪われて、
惨めさや悔しさで押しつぶされた。
人を信じることが怖くなった。
そんなときは、あの言葉とともに
柳が浮かんでいた。
どんなに強い風が吹いても、
髪を振り乱しながら、体をよじらせて踏ん張る。
そして風がやんだら、
何事もなかったようにまた静かに佇んでいる。
わたしは、幾度となくそれに救われた。
そんな柳の姿に自分を重ねて、
生きてきたのかもしれない。
柳と言われても 今なら微笑み返せる。
なんなら、幽霊にでもばけてみるか。
