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[宇宙兄弟 六太は元自動車デザイナー③]六太の歩んできた道が、何もない月面に道を描く


宇宙兄弟という漫画が好きです。
兄弟で一緒に宇宙を目指すということで、兄弟愛だったり、宇宙に行くという目的のための努力だったり、宇宙というロマン溢れた世界に魅せられた人たちの素敵さだったり……魅力はたくさんあるのですが、僕のツボを一番ついてくるところは、主人公の南波六太が元自動車デザイナーという経歴からくるキャラクターです。

今回紹介したいのは、月へ行くルートから外れそうになった六太が、得意の自動車開発技術を使って窮地を乗り越えるエピソードになります。

見事宇宙飛行士になれた六太だった。
一方で弟である日々人は、月面上でトラブルに遭い、これが原因でイップスとなってしまう。
日々人へのプレッシャーを恐れた室長は、六太をISSのプロジェクトにアサインしようとするが、兄弟で月に行くことにこだわりを持つ六太はこの提案を断る。
日々人の状況など全く知らなかったのだ。(この辺は男兄弟ぽくて好きだ)

そこで回されたのは、バギーやローバーなどの月面基地の開発部署。
しかも、日々人が月面であったトラブルの防止策としての月面バギーの開発….
宇宙飛行士になって初めての仕事がまた自動車開発とは…と考える六太、通常なら少し左遷されたように見えるエピソードだが、僕は知っている。
ここで大活躍するのが、六太なのだ。むしろなんてセンスあるんだ、室長。

大体、♯131〜♯136くらいに描かれたエピソードです。


■日々人の月面でのトラブルとは?

日々人が月面で遭遇したトラブルとは、月面バギー走行中の谷底への落下でした。主に原因となったのは二つです。
・普段遠近感を保つために認識している人工物などが、全くない月面
・輸送のために極端に軽量化された車体+地盤を覆うレゴリスのためにブレーキが利きづらい。




この二つの要素が合わさると、
運転者から見た場合、突然谷やクレーターが現れる。
その上、急にブレーキを踏んでも止まることはできない。

車は急に止まれないとよく交通安全教室などで言われるが、
月面では、そのリスクが最大限に高まっている。

ちなみに、落ちた谷底からの景色のスケールが壮大で印象的だったので、
貼っておきます。


■月面バギーの改良方針


六太がこのプロジェクトに参加するまでのチームの方針は、
タイヤとブレーキの改良であった。

ただ、それまでも技術者たちが必死で開発してきた車体だ。
元々の性能が劣っていたわけではない。ここからの改良は、至難の業である。



■ダミアンへのヒアリング

そして、プロジェクトに本格的に取り組み始めた六太がするのは当事者へのヒアリングだ。
まずは日々人に、そして運転者であったダミアンに。


砂漠でのテスト走行も行うが、あまり参考にならない。

自動車の制御には、タイヤが接地していることが大前提である。
極端に軽量化した車体では、浮く、跳ねるは避けられないが、
これを改善するには重量しかない。

ここで立ちはだかるのは、月の重力である。

月の重力は地球の1/6しかない。

ということは、地球上と同じ効果を得ようと考えれば6倍の重量が必要となる。(そう単純じゃないかもですが、少なくとも重量は増える)
その重量を月面に運ぶための費用は…何と2億ドル…宇宙開発、こわい!


■何もないところに道を描く

小タイトルは、ちょっとおしゃれな見出しとしましたが、
ブレーキの改良という方針に行き詰まったところで、六太が状況を打開する。

もう、どうせ接地するのが難しいなら空飛ばそうか、という冗談を言っていたところに思い出したのが、自動車会社時代に企画していた空飛ぶ自動車の構想でした。

自動車が空を飛ぶ時代になったら、どう交通整理するのかという発想から生まれたフロントガラスに道を表示するシステム。
しかも、その企画自体はボツになったものの派生してナビシステムとして開発中。




ここでは、空を飛ぶ動力の前にこの構想をするかな?
という疑問がよぎったが、
・開発分野が多くて分岐している大会社
・想像力を持った六太のキャラクター
・渋滞が問題になっていた時代性
などもあって、ギリギリありそうと思えてワクワクしてしまう。


■じゃあ、描かれる道とは?

ここまで見てくると、このナビシステムで月面の地形を映すのだろうなと想像がつく。
じゃあその地形データは?ということになるが、読者はもう知っている、
JAXAがそのデータを持っているということを。

これは、日々人が月面で谷に落ちた際に救出のために地球側から協力した際に出てきたデータである。

あれがここにつながるっていうのもいいし、JAXAがここで出てくるのもいい。


■そして活きるサラリーマンスキル

ここまで材料が揃ったら、問題の解決への道筋は見えた。
ここまでの流れだけでも十分説得力はある。
ただ、六太の強みは技術者視点にプラスしてサラリーマンだったことだ

まずは、元の会社に技術提供を受けるために自分を首にしたとも言っていい天敵上司をうまく転がす。



宇宙飛行士になった六太に、見事な手のひら返しをする上司に思うところはあったはずだが、ちゃんと相手を立てて利益を得る立ち回り。

そして、無茶ぶりされるプレゼンを完璧にこなす。



JAXAの成果と開発会社の技術….あとNASAに熱意があれば、
我々のこの案は実現できます。

こんなかっこいい口説き文句があったものか。

また、このプレゼン中にしっかりとコストの話をしたり、


ちゃっかりそのコストダウンのために自分を月に行かせるのが得という話も入れる。


■六太のこれまでの道のりが全て入ったエピソード

物語の中で、ここのエピソードは六太のこれまでの道のりが詰まっていたと言ってもいいと思います。

・技術者的な視点
・経験してきた中での人脈(当事者だった弟・自動車会社・JAXAなど)
・サラリーマンスキル

この3つが余すことなく描かれていて、物語の中でも1、2を争うくらい好きなエピソードです。

こんなにかっこよくサラリーマンスキルが表現される宇宙漫画、
最高だなと改めて思います。

また、この漫画で象徴的な
宇宙服をちゃんと着た弟・日々人と、
半分しか宇宙服を着れていないネクタイを締めた兄・六太の構図

もこのエピソード中に出てくるのもすごくうまいな、と思いました。








今回、面白いと思ってもらえたら今までのこのシリーズも読んでみてください。




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