[宇宙兄弟 六太は元自動車デザイナー②]本気の失敗には価値がある
宇宙兄弟という漫画が好きです。
兄弟で一緒に宇宙を目指すということで、兄弟愛だったり、宇宙に行くという目的のための努力だったり、宇宙というロマン溢れた世界に魅せられた人たちの素敵さだったり……魅力はたくさんあるのですが、僕のツボを一番ついてくるところは、主人公の南波六太が元自動車デザイナーという経歴からくるキャラクターです。
今回紹介したいのは、NASAの宇宙飛行士候補ASCAN(アスキャン)の訓練で、キャンサットを製作して、カムバックコンペティションに参加するというエピソードです。
機械系の設計・製作であるため、六太の本領を発揮できる分野と言えるでしょう。
大体、102話から112話で描写されています。
■カムバックコンペティション・キャンサットとは?

CanSat(キャンサット) は、空き缶サイズほどの容器の中に、衛星が持つような基本機能を詰めた 模擬人工衛星キット です。
主に大学生・高校生の宇宙教育やコンテストなどで使われ、
✔ センサー
✔ 通信機器
✔ 電子回路
✔ パラシュートなど
を備えていて、大気圏内での投下実験ミッションを通じて宇宙ミッション設計・運用を学びます。
コンテストの内容は上に示した1ページでほぼ網羅されています。
・ロケットの打ち上げ
・パラシュートによる帰還
・回収ポイントまでの移動
の一連のプロセスを自動で行う、宇宙開発の基本をミニチュアで行うという技術系の学生にとっては心の躍るコンテストといえるでしょう。
僕としても、六太の活躍を期待してワクワクします。

■『失敗して壊れる前提で、最低でも2機作れるくらいの余裕があった方がいい』

まず、開発畑の人間として最初にした大事な発言はこちらでした。
この発言は、失敗を失敗だけじゃない試行錯誤の過程が良いものを作るために重要なことを示している。
この意識は、言われれば当たり前のようですが、普通の人はあまり意識しないところだと思います。
僕も前職場がモノづくり系だったのですが、試作品を作るという予算をもらえることはほぼありませんでした。
作ったものはすぐに実装すればいい。
もしくは、試作品を作れても予算はないので協力業者を探しなさい、とか。
ちょっととぼけた顔で話している描写ですが、ものすごく核心をついた一言だったと思います。
元々、予算が前の訓練の順位によって割り当て金額が違ったため、使い方については大事なポイントだったと思います。

■『タイヤをスポンジで作ろう!』
キャンサットの設計においては、会場が砂漠であったため砂漠を自走してゴールまで自走しなければならない。
これだけならば、車輪を大きくすればいいだけだが打ち上げ時に入れるサイズが決まっているため、一度コンパクトにしなければならない。

拡張式のタイヤにすることが一般的な解決方法ですが、ここでブレイクスルーが起こります。

このセリフには僕は大いに、ワクワクしました。
また、宇宙開発ではロケットに積むための重量がかなりシビアに制限される。
スポンジという素材は、この思考回路にも繋がっているようでワクワクが止まらない。
■パラシュートは愛で開く
これらの議論をやる気なさそうに聞いていた、指導員のピコが技術者としての六太の言葉に反応するように、パラシュートのたたみ方について指導してくれる。

このセリフは、酔っぱらいの中年おじさんが言うと逆にカッコいい。
実は、ピコは弟の日々人が地球を担当した技術者であった。

■縮小版 宇宙開発

111話のこのエピソードは、ある映画を思い出して熱くなる。
砂漠が会場であるコンテスト、なぜか前日に雨が降ると言うアクシデントが起こる。
他班の手法に比べて、スポンジのタイヤに水は大敵だ。
よくこんなアクシデント思いつくものだ。
冒頭の一コマで思い出した映画とは、『アポロ13』という映画です。
宇宙船内で起こったトラブルにより、地球までの帰還が危ぶまれるピンチの場面、乗組員は船内をくまなく探し使えそうなものを集める。
時代の最先端である宇宙開発にDIYが持ち込まれる。
この時、さじを投げようとした地球組の設計者に対してジーン・クランツが言ったセリフは今でも心に残っている。
"I don't care what anything was designed to do. I care about what it can do."
(何のために設計されたかなんてどうだっていい。何ができるかが重要なんだ)
少し話が逸れましたが、この一コマの絵はその場面を強く想起させます。。
(おそらく、引用だと思う。)
どうやって、水を含んだ砂漠に対抗したのかは、是非お読みいただいて確認してもらいたい。
そして、この訓練自体が宇宙に出て活躍する宇宙飛行士の候補達が地球に残ってサポートする技術者達の気持ちを理解するための訓練であることが明確になっていく。

■本気の失敗には価値がある
ピコには、子供の頃に一緒にミニチュアのロケットを作って本気で宇宙を目指していたエピソードがここで挿入される。
この話はものすごくいい、何回読んでも泣いてしまう。
が、今回は割愛しないと長くなりすぎてしまう。
是非、読んでほしい。いや、絶対に読んでください。
そして最後に、ピコと打ち上げをする六太のこのセリフが、ピコの子供の頃の思い出に触れた瞬間に、宇宙飛行士と技術者の信頼関係が改めて構築される。

今回、面白いと思ってもらえたら前回のこのシリーズも読んでみてください。
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