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第2回 国語学の授業なのに ∀ と ∃ が出てくる

前回の記事はこちら↓

前回、昭和末期の女子大で受けた少し変わった国語学の授業について書いた。

夏目漱石『草枕』の文章を、論理構造として読むという授業である。

しかし実際の授業は、文学作品の分析だけをしていたわけではない。

むしろ驚いたのは、授業で配られたプリントだった。





論理学のプリント

授業で配られた「定理」の一部

これは当時の授業プリントの一部である。

内容は

  • 命題論理

  • 量化論理

  • 推論規則

  • 証明図

などで、どう見ても論理学の授業の資料に見える。

しかしこれは、国語学の授業で配られていたものだった。


文学作品だけではない授業

授業では文学作品だけを扱っていたわけではない。

もっと基本的な問題も出された。

たとえば

「母親」と自分の関係を論理式で表せ

といった課題である。

つまり

母(x,y)

のような関係を使って、
自分と母親の関係を論理式として書く。

国語学の授業なのに、である。

当時の私の頭の中はだいたいこんな感じだった。

「ド・モルガンって何?」
「NBG理論って何?」
「えっと国語学ってこういうんだっけ…?」
「文法って論理式で書くものなんだ…」


授業名「意味、その記述」

この授業の名前は

「意味、その記述」

担当は国語学者の水谷静夫先生だった。


水谷静夫という研究者

水谷先生は、計量言語学・数理言語学の研究で知られる国語学者で、日本語研究に早くから統計学やコンピュータを導入した研究者だった。

日本語の自然言語処理の研究にも関わり、言語を数理的に扱う研究を進めていた。

現在の言葉で言えば、日本語の自然言語処理研究のかなり早い段階の研究者だったと言えると思う。


水谷文法という考え方

水谷先生の研究は「水谷文法」と呼ばれる。

その基本的な考え方は、日本語を断片的に説明するのではなく、統一的な体系として記述することにある。

従来の国語文法では、主語・述語・助詞などが個別に説明されることが多い。

しかし水谷文法では、構文・意味・語彙の機能を統合して、日本語全体の仕組みを説明しようとする。

また、日本語の特徴である

  • 語順の自由度

  • 省略の多さ

  • 助詞の働き

  • 複合語の語彙構造

などにも配慮しながら、形態解析・構文解析・意味解析へとつながる形で文法を記述することが意識されていた。

現在の言葉で言えば、日本語の自然言語処理を強く意識した文法理論だったと言える。


論理記号が出てくる理由

こうした研究の背景には、自然言語をできるだけ形式的に記述しようとする発想がある。

つまり

自然言語

命題

論理構造

という形で、文章の意味関係を整理する。

そのため授業でも普通に





といった論理記号が使われていた。


証明図の練習…(国語学のテキスト)

国語学の授業としては、かなり珍しい光景だったと思う。


それでも印象に残る授業

正直に言うと、文系の学生にはなかなか難しい授業だった。

少なくとも私は、数学が得意というわけではなかった。

それでもこの授業が今でも印象に残っているのは、言語を扱う別の見方を知ったからだと思う。

文章や言葉を

  • 命題

  • 推論

  • 構造

として整理すると、意味関係がかなりはっきり見えてくる。

国語学の授業としては、かなり独特だった。


次回予告 文学は文化を知らないと読めない

ただし、この大学の日本文学科の授業は、この「意味論」だけが特殊だったわけではない。

次回は別の観点から文学を鑑賞した授業について書く。


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