980円の女、2200円のケーキを食べる



私はつい先日、自分という人間の底の浅さを思い知る事件に遭遇した。
事の起こりは焼肉ライクである。一人焼肉で有名なあの店に、私は初めて足を踏み入れた。薄切りカルビにごはん、スープ、サラダ、キムチまでついて980円。焼いて、食べて、大満足である。「世の中、こんなに安くておいしいものがあるのか」と、私はすっかり節約上手な女になった気分で店を出た。
このときの私は、まだ知らなかった。数十分後の自分が何をしでかすのかを。
焼肉のあとは、コーヒーが飲みたくなるものである。私は近くの椿屋珈琲に入った。そして席で待っている間に、見てしまったのだ。
マスクメロンのショートケーキを。
コーヒーとセットで2200円。980円の焼肉で「安い!」と喜んでいた女の前に、焼肉2回分のケーキが現れたのである。
普通ならここで心の葛藤が始まるところだが、私に葛藤はなかった。一目見た瞬間、もう食べると決まっていたのである。裁判でいえば、判決はとっくに出ている。
ところがおかしなことに、判決が出ているにもかかわらず、私の心の中では弁護人だけがせっせと働き続けていた。「今日は焼肉が安く済んだから」「今日は焼肉が安く済んだから」。同じ言い訳を、何度も何度も。誰に向かって弁護しているのか、自分でもわからない。
そういえば、人間は「買う」と決めたあとから理由を探す生き物だと聞いたことがある。順番が逆なのだ。私の場合は決めるのが早すぎて、理由が追いつくのに時間がかかっただけである。
さて肝心のケーキだが、これが最高だった。メロンはもちろん、生クリームは意外とさっぱりしていて、スポンジはふわふわ。高級な空間に緊張しながらも、私はぺろりと平らげた。
というわけで、980円で膨らんだ節約の自信は、その日のうちにケーキと一緒にきれいに消えた。
節約の日々は、続く。

これが、2,200円のケーキセットです。
はじめましての方は、こちらでご挨拶しています。
*マンガは新宇佐美式で描きました
