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医療機関の消費税「損税」問題を、地方財政の視点から考える〜第3回(全3回)

「ゼロ税率」という解決策と、その壁——この問題をもう少し広く考えてみたい

第1回では損税が生じる仕組みと補填の実態を、第2回では医療界に温度差が生まれる構造と自治体病院特有の問題を整理しました。

最終回となる今回は、根本的な解決策として議論されてきた「ゼロ税率」をめぐる論点と、この問題をどう位置づけるかについて考えてみます。

「ゼロ税率」という解決策と、その壁

こうした問題を根本的に解決する方法として、医療団体が長年主張してきたのが「ゼロ税率課税」への転換です。

ゼロ税率とは、保険診療を「非課税」から「課税(ただし税率0%)」に変更するものです。
一見同じに見えますが、「課税取引」になることで仕入税額控除が使えるようになり、支払った消費税を全額回収できるようになります。

患者の負担は、税率が0%なのでゼロのままです。

日本医師会は1988年の消費税導入論議の時点からゼロ税率を主張してきました。日本病院会の相澤孝夫会長は2026年4月の記者会見で「中長期的にゼロ税率課税を要望する」と発言したという報道もあります。

しかし、財務省は一貫して消極的です。

ゼロ税率を認めると、医療だけでなく他の非課税業種(金融・教育・住宅など)からも同様の要求が広がりかねないという懸念があります。
また、仕入税額が全額還付されることによる税収減も無視できません。

令和8年度の与党税制改正大綱にも、医療の控除対象外消費税の抜本対応は盛り込まれませんでした。現時点では「診療報酬による補填」という枠組みが続く見通しです。

2018年には、三師会(日医・日歯・日薬)と四病院団体が「非課税を維持しつつ、個別申告による過不足調整」という妥協案を提言しましたが、これも実現していません。

国際的に見ると、イギリスでは処方箋医薬品等にゼロ税率、オーストラリアでは公的医療サービスがゼロ税率(GST-free)として扱われています。カナダでは公立病院の仕入税額の83%が特別制度で還付されます。
主要先進国の中で、日本の医療機関が置かれた状況は相対的に不利なものと言えるかもしれません。

この問題を、もう少し広く考えてみたい

消費税の減税論議が広がるいま、医療機関の消費税問題は、その核心的な課題のひとつとして位置づけてよいと私は思っています。

問題の構造はシンプルです。
保険診療が非課税である以上、仕入れ時の消費税は医療機関の最終負担になる。
診療報酬で補填しようとしても、平均値で一律に対応する仕組みでは、高額医療機器を多く使う急性期病院ほど損税が大きくなる。
そして自治体病院は、損金算入という税制上の緩衝効果もないまま損税を丸ごと抱え込み、結果として自治体(住民の税金)がそれを補填することになる。

この問題を「医療機関の経営問題」として閉じてしまうと、見えにくくなるものがあると感じています。

それは、医療提供体制の持続可能性という問題です。
高度急性期医療を担う大病院、とりわけ地方の公立病院が設備投資をためらい、医療の質が低下していくリスクは、地域の住民生活に直結します。

シンポジウムで「必要な投資をためらい、医療の質の低下につながりかねない」という声が上がったのは、まさにその懸念を端的に表しているのではないかと思います。

どのような解決策が現実的なのか、国民的な議論が必要だと感じます。

この問題が「医療」と「税制」と「地方財政」にまたがる問題であることは、もう少し広く認識されてよいのではないか、と感じています。


参考

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