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医療機関の消費税「損税」問題を、地方財政の視点から考える〜第1回(全3回)

保険診療は非課税なのに、なぜ医療機関は消費税を負担するのか

2026年5月9日、国際医療福祉大と読売新聞社の共催で「医療における消費税の問題を考えるシンポジウム」が東京で開催されました。

塩崎恭久・元厚生労働相が「新時代にふさわしい形に見直さなければいけない」と発言し、登壇者から「実際の負担と補填状況にずれが生じている」「必要な投資をためらい、医療の質の低下につながりかねない」という声が相次いだという報道を目にしました。

消費税の減税や軽減税率をめぐる議論が国民的な関心を集めているいま、医療機関の消費税問題もその文脈で改めて問い直す価値があるのではないかと感じています。

地方財政に携わる者として、この問題には「地域医療をどう守るか」という観点で、決して他人事ではない側面があります。
今回はこの問題の構造を丁寧に整理しながら、考えてみたいと思います。

今回から3回にわたって、この問題の構造を丁寧に整理しながら、考えてみたいと思います。

そもそも、なぜ医療機関は消費税を「損」するのか

保険診療を受けた患者が消費税を払うことはありません。診療報酬は消費税法上の「非課税取引」として位置づけられているからです。

ところが、医療機関が薬剤や医療材料を購入するとき、医療機器を導入するとき、あるいは病棟を建て替えるときには、当然のことながら消費税を支払っています。
通常の事業者であれば、この「仕入れ時に払った消費税」は「仕入税額控除」という仕組みで回収できます。
しかし医療機関は、収入の大部分が非課税の保険診療であるため、この控除がほとんど使えません。

結果として、医療機関は仕入れ時に払った消費税を、自らの損失として計上せざるを得ない状況に置かれています。
これが「控除対象外消費税」、俗に「損税」と呼ばれる問題の本質です。

消費税率が3%から5%、8%、そして10%へと引き上げられてきた歴史と、この問題は切り離せません。税率が上がるほど、医療機関が最終的に負担する金額も膨らんできました。

「診療報酬で補填している」の実態

厚生労働省は、この問題に対して「診療報酬(保険診療の点数)に消費税分を上乗せして補填している」という立場をとっています。
1989年の消費税導入時から、税率引き上げのたびに診療報酬を改定し、消費税対応分を盛り込んできました。

2019年10月の10%引き上げ時には、医療本体全体で+0.41%の消費税対応改定が行われています。

ただし、この仕組みには構造的な問題があります。
補填は「医療機関の平均的な消費税負担」を基準に点数に組み込まれているため、一律の上乗せになります。

高額な医療機器を多く使う大規模な急性期病院と、医療機器がそれほど多くない療養病棟の病院では、実際の消費税負担の割合がまったく異なります。

厚生労働省が2024年度の補填状況を中央社会保険医療協議会(中医協)に報告したデータによれば、全体の補填率は100.3%と「おおむね補填できている」ように見えます。

しかし内訳を見ると、400床以上の大規模病院では中央値で67.4%にとどまっています。公立病院に限れば83.2%です。
一方、療養病床中心の病院は156%と大幅に「過補填」の状態になっています。

つまり、マクロ(全体)では帳尻が合っているように見えても、ミクロ(個別の医療機関)ではかなりのバラつきがある、ということです。

さらに、2024年度の補填率は前年度の103.1%から2.8ポイント低下しています。
物価上昇が続く中で、2年に1度の診療報酬改定では対応が追いつかず、中医協の委員からは「このままでは2027年度末に補填率が91%程度まで落ちる」との試算も出ています。

現在「おおむね補填できている」とされているというそもそもの前提が、このままでは崩れていく可能性があります。


次回は、医療界の中でこの問題への危機感に温度差が生まれる構造的な理由と、自治体病院特有の問題について整理したいと思います。


参考

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