体育会系合気道⑱ー人間関係複雑化ー
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わたしが頭部のMRIを撮ることになったのは、級・昇段査定のあと、四月末のことだった。
なにか様子がおかしくて、脳溢血や脳梗塞の疑いもありMRIを撮ったのだが、それはまったく異常がなかった。代わりに首の部分に異常があるというのであらためて首の部分のMRIを撮ることになった。
それも、まったく異常がなかった。
なんなんだろう……
おかげで一ヶ月くらい「もうこれからは合気道もできないかもしれない」、「死んでしまうのかもしれない」と暗い気持ちでいたのがまったくの無駄だったように、わたしの現実からは消えてしまった。
死の足音は消えたけれど、わたしにはまだこれから何十年かあるだろう未来が残った。
先生は、苦笑いなさっている。
それと併さって、今度は人間関係で支障が出た。
表立って「首などの異常の疑いで何回もMRIを撮った」と大騒ぎするのも何なので、先生以外には黙っていたが、それが上川さんに誤解を生んだらしく、昇段査定からあと、きっと山田さんはサボり癖が出たんだろうと思われたらしい、またしても上川さんが教室の終わりの礼をわたしたちにしなくなった。(主人も一緒に休んだ)
仕方ない、無視したいなら仕方ない。そういうひとなのだ。指導者でもないのに、わたしたちを勝手に合気道をする者とは認めないというのだ。
先生が、ちゃんと扱ってくれるのに勝手なひとだ、とわたしは思った。
上川さんは、今までに何度か入門者にこういう態度を取っているらしい。
女性が何十年かやっている味川さんしかいない。
味川さんは上川さんの姉弟子だから尊敬しないわけにもいかない。
上川さんは、あとから入ってきた女性会員をいじめたり、無視したり、何かやっている雰囲気はあった。そうでなくてもわたしは女性にしてはカッコつけにみえるから、そういう人間を好まないのだ。おまけにクラスの人気者にみえるらしいからそういう者に恨みを持つひとが勝手にいじめてくることは、わたしのほうにも何回かあった。わたしはむしろ小学生のころ漁村の網元の娘のワガママをとがめたらいじめられたほうなのに。
上川さんは、わたしたちと同期の藤川さんを捕まえて何やら悪口をいっている。えみこさんと組むと勘が狂うとか。
上川さんは、腕や足の使い方が小ぶりだ。それを先生に注意される。
「もっと大振りに、大きく振って」
上川さんは、何度も横手打ち側面入り身投げも注意される。それが、何処が悪いのか、なかなか捉えどころがないから、そのうち意地悪されたような気持ちになってきたらしい。顔の表情に不満がありありと表れる。
(違うよ、上川さん、みんなあなたを昇段させたいからだよ)
わたしには、そうみえた。
わたしには、先生は、久しぶりに入ってきた女性会員だから、よく褒めて、ここに居やすくさせてくれている。そこがまた気に食わないのだ。
上川さん、違うよ……
上川さんは、自衛隊の部長上がりだ。
リーダーシップもあり、ストイックで厳しいところもある。そこを反感持たれて意地悪もじっさいされてきただろう。何となくわかるよ、わたしも同じようなことで嫌われることあるから。
じつは先生は、自分に厳しい誇り高い上川さんに敬意をもって、安易に褒めないのもあるとわたしは思った。
そして、そういうひとは、とくに孤独を感じやすいのだ。
つづく
©️2026.7.11.山田えみこ
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