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【時事】第3回ペンギン先生の違和感教室 第7回目

【第5回目以降について】

第3回の第4回目で、問題の違和感を書いた話としては一度、完結しています。

そのため、第3回の第5回目以降は、内容の性質が変わります。

問題そのものは、すでに前の話で出揃っています。

この先は、答えを探す話ではありません。

「考えてしまったあと」を見ていく試みです。

ペンギン先生は、第3回ではもう問題の話をしません。

問題の話は終わっても、考えることは、まだ終わっていないからです。

気づいたら、何が変わるんだろう

教室。朝。

一般人ちびが、窓の外をぼんやりと見つめている。

昨日の言葉が、まだ頭の中で響いている。

「『私たち』と言うとき、線を引いています」

一般人ちび
「……気づいたら」

小さく呟く。

一般人ちび
「何が変わるんだろう」

ペンギン先生
「…何か、考えていますか」

一般人ちびが、ゆっくりと振り返る。

一般人ちび
「先生…気づいたら、何が変わるの?」

ペンギン先生が、お茶を啜る。

ペンギン先生
「気づいたら、ですか」

一般人ちび
「うん。『私たち』って言葉が線を引いてるって、気づいたじゃん」

一般人ちび
「でも…それで何が変わったの?」

ペンギン先生が、お茶を置く。

その音だけが、教室に響く。

ペンギン先生
「そうですか」

窓の外から、風の音が聞こえる。

その時、教室のドアが勢いよく開いた。

制度くん
「気づくことは大事だと思います!」

制度くんが、いつものように明るく入ってくる。

一般人ちび
「制度くん!」

制度くん
「気づけば、意識が変わると思いますよ!」

一般人ちびが、少し顔を上げる。

一般人ちび
「意識が…」

制度くん
「はい! 意識が変われば、行動も変わるはずです!」

制度くんが、ホワイトボードに向かう。

制度くん
「気づくことが第一歩だと思うんです!」

一般人ちびが、小さく頷く。

一般人ちび
「じゃあ、気づいたら変わるんだ!」

制度くん
「はい! 気づかないより、ずっといいはずです!」

一般人ちびの表情が、少し明るくなる。

一般人ちび
「そっか…気づけばいいんだ」

制度くん
「そうですよ! だから気づくことが大事なんです!」

一般人ちびが、窓の外を見る。

一般人ちび
「じゃあ、これから変わるかな」

制度くん
「きっと変わると思います!」

ペンギン先生
「…そうですか」

静かな声が、教室に落ちる。

ペンギン先生
「気づいても、何も変わらないかもしれません」

一般人ちびの動きが、止まる。

一般人ちび
「…え」

制度くん
「気づいても…」

ペンギン先生が、窓の外を見る。

ペンギン先生
「気づいても、『私たち』という言葉は使い続けますか」

【空気が止まる】

一般人ちびが、何も言えない。

制度くんも、黙り込む。

遠くから、鳥の鳴き声が聞こえる。

一般人ちびが、小さく声を上げた。

一般人ちび
「気づいたら、意識が変わるんでしょ!?」

ペンギン先生
「意識が変わると、何が変わりますか」

一般人ちび
「えっと…」

制度くん
「行動が変わると思います!」

ペンギン先生
「そうですか」

ペンギン先生が、静かに問いかける。

ペンギン先生
「あなたは『私たち』という言葉を使わなくなりましたか」

一般人ちびが、固まる。

一般人ちび
「…使ってる」

ペンギン先生
「気づいても、使い続けていますか」

【沈黙】

一般人ちびが、自分の手を見つめる。

制度くんも、うつむく。

窓の外から、車の音が聞こえる。

一般人ちび
「でも…気づいたじゃん」

ペンギン先生
「そうですね。気づきました」

一般人ちび
「それで…何が変わったの?」

ペンギン先生
「さあ」

一般人ちびが、少し声を大きくした。

一般人ちび
「でも、『私たち』って言わないと不便じゃん!」

ペンギン先生
「不便、ですか」

一般人ちび
「だって、いちいち説明するの面倒だし…」

ペンギン先生が、お茶を啜る。

ペンギン先生
「では、気づいても、便利な方を選びますか」

一般人ちび
「…」

制度くんが、慌てたように言う。

制度くん
「気づいていても、習慣で使っちゃうんです!」

ペンギン先生
「習慣、ですか」

制度くん
「はい! 無意識に使っちゃいます!」

制度くんの声が、少し小さくなる。

制度くん
「気をつけようと思っても…気づいたら使ってます」

ペンギン先生
「気づいても、無意識に戻りますか」

【沈黙】

教室に、重い空気が流れる。

一般人ちびが、窓の外を見つめている。

一般人ちび
「じゃあ…気づく意味って…」

声が、消えていく。

一般人ちびが、小さく呟いた。

一般人ちび
「気づいたら、なんか…引っかかるようになった」

ペンギン先生
「引っかかる、とは?」

一般人ちび
「『私たち』って言うとき、ちょっと…」

一般人ちびが、言葉を探すように空を見る。

一般人ちび
「一瞬、止まるっていうか…」

ペンギン先生
「止まる、ですか」

一般人ちび
「うん。でも、結局使っちゃうし…」

一般人ちびの声が、震える。

一般人ちび
「気づかない方が楽だったかも」

ペンギン先生が、目を閉じる。

ペンギン先生
「そうですか」

【沈黙】

遠くから、子どもの笑い声が聞こえる。

でも、教室の中には笑い声はない。

ペンギン先生が、ゆっくりと目を開ける。

ペンギン先生
「では、気づかないままでいいのでしょうか」

一般人ちび
「…」

一般人ちびが、机を軽く叩いた。

一般人ちび
「じゃあ気づく意味ないじゃん!」

ペンギン先生
「意味がない、ですか」

一般人ちび
「だって、気づいても変わらないんでしょ!?」

ペンギン先生が、静かに答える。

ペンギン先生
「変わらない、とは?」

一般人ちび
「『私たち』って言葉、使い続けるし…」

一般人ちび
「何も変わってないじゃん!」

ペンギン先生
「では、気づく前と後で、何も変わりませんでしたか」

一般人ちびが、動きを止める。

一般人ちび
「え…」

ペンギン先生が、窓の外を見たまま続ける。

ペンギン先生
「『私たち』と言うとき、一瞬止まりませんか」

一般人ちびが、小さく頷く。

一般人ちび
「…止まる」

ペンギン先生
「その『一瞬』は、何ですか」

【沈黙】

一般人ちびが、自分の胸に手を当てる。

一般人ちび
「なんか…引っかかる」

ペンギン先生
「引っかかる、ですか」

一般人ちび
「でも、それが何なのか…」

一般人ちびの声が、消えていく。

制度くんも、黙って聞いている。

制度くんが、小さく声を出した。

制度くん
「気づく前は、何も考えずに使ってました」

ペンギン先生
「気づいた後は?」

制度くん
「一瞬、『これでいいのかな』って思います」

ペンギン先生が、お茶を置く。

ペンギン先生
「でも、使いますか」

制度くん
「はい…」

ペンギン先生
「では、何が変わりましたか」

制度くんが、考え込むように視線を落とす。

制度くん
「えっと…」

一般人ちびが、小さく呟く。

一般人ちび
「選んでる?」

ペンギン先生
「選んでいる、ですか」

一般人ちび
「気づく前は、無意識に使ってた」

一般人ちびが、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

一般人ちび
「気づいた後は、…使うことを選んでる?」

ペンギン先生
「そうですか」

【沈黙】

窓の外から、風が吹き込んでくる。

カーテンが、静かに揺れている。

制度くん
「でも、選んでも結局使ってるなら…」

制度くんの声が、震える。

制度くん
「何が違うんですか?」

ペンギン先生
「さあ」

一般人ちびが、制度くんに向き直った。

一般人ちび
「制度くんは気づくことが大事って言ったじゃん!」

制度くん
「それは…えっと…」

一般人ちび
「気づいたら何が変わるの!?」

制度くんが、しょんぼりとうつむく。

制度くん
「ボクも…わかりません」

一般人ちび
「え…」

制度くんの声が、小さくなっていく。

制度くん
「気づいても、何が変わるのか…」

制度くん
「でも、気づかないままでいいのかも…」

ペンギン先生
「そうですか」

【誰も答えを持たない空気】

三人とも、黙り込む。

教室に、静けさが満ちていく。

時計の音だけが、規則正しく響いている。

一般人ちびが、最後の力を振り絞るように問いかけた。

一般人ちび
「先生は!? 気づいたら何が変わると思うの!?」

ペンギン先生が、お茶を置く。

カタン、という小さな音。

ペンギン先生
「…わかりません」

一般人ちび
「…」

ペンギン先生が、目を閉じる。

ペンギン先生
「ただ、一つだけ気になるのは」

一般人ちびが、息を呑む。

一般人ちび
「何?」

ペンギン先生が、ゆっくりと目を開ける。

ペンギン先生
「気づかないまま、『私たち』と言い続けることと」



ペンギン先生
「気づいていて、『私たち』と言い続けることは」



ペンギン先生
「同じでしょうか」

一般人ちびが、何も言えない。

一般人ちび
「…」

ペンギン先生が、窓の外を見る。

ペンギン先生
「その『一瞬の止まり』に、何かがあるのでしょうか」

一般人ちび
「…わかんない」

【沈黙、ペンギン先生が窓の外を見る】

夕陽が、三人を照らしている。

誰も、何も言わない。

遠くに、コンビニの明かりが見える。

レジの前に、人が並んでいる。

一人、また一人と。

レジの向こうに、人がいる。

一般人ちびも、同じ景色を見ている。

今日も、一瞬、レジの向こうに目が止まる。

気づく前は、止まらなかった。

気づいた後は、止まるようになった。

でも、それが何を意味するのかは…

一般人ちび
「…わかんない」

制度くんが、小さく呟く。

制度くん
「ボクも…」

ペンギン先生が、目を閉じる。

ペンギン先生
「そうですか」

【暗転】

(画面外から、小声で)

「気づいても、何も変わらないかもしれません」

(間)

「でも、気づかないままでいいのでしょうか」


【第7回終】

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