見出し画像

【時事】第3回ペンギン先生の違和感教室 第8回目

【第5回目以降について】

第3回の第4回目で、問題の違和感を書いた話としては一度、完結しています。

そのため、第3回の第5回目以降は、内容の性質が変わります。

問題そのものは、すでに前の話で出揃っています。

この先は、答えを探す話ではありません。

「考えてしまったあと」を見ていく試みです。

ペンギン先生は、第3回ではもう問題の話をしません。

問題の話は終わっても、考えることは、まだ終わっていないからです。

一瞬が積み重なったら、何になるんだろう

この話には、答えがありません。

一瞬が積み重なったら、何になるのか。
止まり続けたら、何が変わるのか。

時計の秒針は、止まらずに進んでいきます。

積み重ねても、何も変わらないかもしれません。
でも、積み重ねなければ、何も変わらないのかもしれません。

第8話は、時間の話です。

教室。朝。

一般人ちびが、机に突っ伏している。

昨日の言葉が、まだ頭の中で響いている。

「気づいても、何も変わらないかもしれません」

「でも、気づかないままでいいのでしょうか」

一般人ちび
「……」

窓の外から、鳥の鳴き声が聞こえる。

一般人ちびが、小さく呟く。

一般人ちび
「今日も、止まった」

朝、コンビニで「私たち」という言葉を聞いた。

一瞬、引っかかった。

でも、何も言わなかった。

一般人ちび
「昨日も止まった。一昨日も…」

ペンギン先生が、静かに入ってくる。

ペンギン先生
「…何か, 考えていますか」

一般人ちびが、顔を上げる。

一般人ちび
「先生…」

少し間を置いて。

一般人ちび
「一瞬が積み重なったら, 何になるんだろう」

ペンギン先生が、お茶を置く。

カタン, という小さな音だけが響く。

ペンギン先生
「そうですか」

窓の外から, 風が吹き込んでくる。

時計の秒針が, 規則正しく進んでいる。

教室のドアが, 勢いよく開いた。

制度くん
「積み重ねれば変わると思います!」

制度くんが, いつものように明るく入ってくる。

一般人ちび
「制度くん…?」

制度くん
「一瞬でも止まることを繰り返せば, 習慣になるはずです!」

一般人ちびが, 少し顔を上げる。

一般人ちび
「習慣…」

制度くん
「はい! 習慣になれば, いつか行動が変わると思います!」

制度くんが, ホワイトボードに向かう。

制度くん
「継続は力なりって言いますよね!」

一般人ちびの表情が, 少し明るくなる。

一般人ちび
「じゃあ, 続ければ変わるんだ!」

制度くん
「そうだと思います! だから諦めないことが大事だと思います!」

一般人ちびが, 窓の外を見る。

一般人ちび
「そっか…積み重ねればいいんだ」

制度くん
「はい! 一瞬一瞬が積み重なれば, きっと!」

ペンギン先生
「…そうですか」

静かな声が, 教室に落ちる。

ペンギン先生
「積み重ねても, 何も変わらないかもしれません」

一般人ちびの動きが, 止まる。

一般人ちび
「…え」

制度くん
「積み重ねても…」

ペンギン先生が, 時計を見る。

秒針が, 一つ進む。

ペンギン先生
「一瞬止まることを繰り返しても, 『私たち』という言葉は使い続けますか」

【空気が止まる】

一般人ちびが, 何も言えない。

制度くんも, 黙り込む。

遠くから, 車の音が聞こえる。

でも, 教室の中には何の音もない。

秒針だけが, 進んでいく。

一般人ちびが, 小さく声を上げた。

一般人ちび
「一瞬でも止まるのを続ければ, 変わるんでしょ!?」

ペンギン先生
「続けると, 何が変わりますか」

一般人ちび
「えっと…習慣になる?」

ペンギン先生
「『止まること』が習慣になりますか」

一般人ちび
「うん!」

ペンギン先生が, 静かに問いかける。

ペンギン先生
「では, 止まった後は?」

一般人ちびが, 固まる。

一般人ちび
「…使ってる」

ペンギン先生
「止まることを繰り返しても, 使い続けていますか」

【沈黙】

一般人ちびが, 机を見つめる。

制度くんも, うつむく。

一般人ちび
「でも…止まってるじゃん」

ペンギン先生
「そうですね。止まっています」

間。

ペンギン先生
「それを積み重ねると, 何になりますか」

一般人ちび
「…」

時計の秒針が, また一つ進む。

制度くんが, 声を出した。

制度くん
「でも, 時間をかければ変わると思います!」

ペンギン先生
「時間をかければ, ですか」

制度くん
「はい! 最初は意識していても, 続けるうちに自然に変わるはずです!」

ペンギン先生が, お茶を啜る。

ペンギン先生
「では, 時間が経つと何が起こりますか」

一般人ちび
「変わる…?」

ペンギン先生
「あるいは, 時間が経つと気づきが薄れますか」

一般人ちびが, 動きを止める。

一般人ちび
「…」

制度くん
「それは…」

ペンギン先生が, 窓の外を見る。

ペンギン先生
「最初は止まっていたことも, 時間が経つと止まらなくなりますか」

【沈黙】

窓の外で, 葉っぱが風に揺れている。

同じように揺れて, 同じように戻っていく。

一般人ちび
「わかんない…」

一般人ちびが, 机に突っ伏した。

一般人ちび
「毎回止まるの, 疲れるんだけど…」

ペンギン先生
「疲れる, ですか」

一般人ちび
「だって, 『私たち』って言うたびに止まってたら, 面倒じゃん」

ペンギン先生
「面倒, ですか」

一般人ちび
「うん。いちいち考えるの, 疲れる」

ペンギン先生が, 静かに問いかける。

ペンギン先生
「では, 疲れたらどうしますか」

一般人ちびが, 顔を上げる。

一般人ちび
「…止まらなくなる?」

ペンギン先生
「積み重ねても, 疲れて元に戻りますか」

【沈黙】

制度くんが, 小さく呟く。

制度くん
「ボクも…最近, 疲れてきました」

一般人ちび
「制度くんも?」

制度くん
「はい。最初は意識してたんですけど…」

制度くんの声が, 小さくなっていく。

制度くん
「なんか, 元に戻ってる気がします」

ペンギン先生
「そうですか」

時計の秒針が, また一つ進む。

積み重なっていく時間。

でも, 何が変わっているのか。

一般人ちびが, 窓の外を見た。

一般人ちび
「止まるのを続けて, どこに行くの?」

ペンギン先生
「どこに, ですか」

一般人ちび
「うん。止まって, 止まって, 止まり続けて…」

一般人ちびが, 言葉を探すように空を見る。

一般人ちび
「で, 結局どうなるの?」

制度くん
「えっと…使わなくなる…?」

ペンギン先生
「使わなくなるのですか」

制度くん
「…わかりません」

ペンギン先生
「ゴールが分からないまま, 積み重ねていますか」

【沈黙】

一般人ちびが, 自分の手を見つめる。

一般人ちび
「ゴール, ないのかな」

ペンギン先生
「さあ」

風が, カーテンを揺らす。

同じように揺れて。

同じように戻る。

一般人ちびが, 小さく呟いた。

一般人ちび
「止まって, 考えて, でも使う」

ペンギン先生
「それを繰り返していますか」

一般人ちび
「うん。毎回そう」

ペンギン先生
「では, それを積み重ねると, 何が起こりますか」

一般人ちびが, 顔を上げる。

一般人ちび
「え…」

制度くんが, 小さく声を出す。

制度くん
「『止まっても使う』が, 習慣になっちゃう…?」

ペンギン先生
「そうですか」

【沈黙】

一般人ちびが, 机を見つめる。

一般人ちび
「止まることが, 使うことを…」

声が, 消えていく。

制度くん
「正当化, しちゃうんでしょうか」

ペンギン先生
「さあ」

時計の秒針が, また一つ進む。

止まることを積み重ねる。

でも, 使い続ける。

それは, 何を意味するのか。

一般人ちびが, 机を叩いた。

一般人ちび
「でも, 止まらないよりはマシなんじゃない!?」

ペンギン先生
「マシ, ですか」

一般人ちび
「だって, 気づかないまま使うより, 気づいて使う方が…」

一般人ちびの声が, 小さくなる。

一般人ちび
「…何が違うの?」

ペンギン先生が, お茶を置く。

ペンギン先生
「さあ」

制度くん
「止まっても使うなら, 止まらないのと同じ…?」

ペンギン先生
「同じ, ですか」

制度くん
「でも, 何か違う気もします…」

ペンギン先生
「何が違いますか」

制度くん
「…わかりません」

【沈黙】

三人とも, 黙り込む。

時計の音だけが, 規則正しく響いている。

一秒。

また一秒。

積み重なっていく。

でも, 何が変わっているのか。

一般人ちびが, 制度くんに向き直った。

一般人ちび
「制度くんは積み重ねれば変わるって言ったじゃん!」

制度くん
「それは…えっと…」

一般人ちび
「積み重ねたら何が変わるの!?」

制度くんが, しょんぼりとうつむく。

制度くん
「ボクも…わかりません」

一般人ちび
「え…」

制度くんの声が, 震える。

制度くん
「積み重ねても, 何が変わるのか…」

間。

制度くん
「でも, 積み重ねなかったら, 何も変わらない気もして…」

制度くん
「わかりません…」

ペンギン先生
「そうですか」

【誰も答えを持たない空気】

窓の外で, 鳥が鳴いている。

同じ鳴き声を, 繰り返している。

積み重ねても, 同じ鳴き声。

一般人ちびが, 最後の力を振り絞るように問いかけた。

一般人ちび
「先生は!? 積み重ねたら何が変わると思うの!?」

ペンギン先生が, 目を閉じる。

長い沈黙。

ペンギン先生
「…わかりません」

一般人ちび
「…」

ペンギン先生が, ゆっくりと目を開ける。

ペンギン先生
「ただ, 一つだけ気になるのは」

一般人ちびが, 息を呑む。

一般人ちび
「何?」

ペンギン先生が, 時計を見る。

秒針が, 一つ進む。

ペンギン先生
「積み重ねても, 何も変わらないかもしれません」

一般人ちびが, 何も言えない。

一般人ちび
「…」

間。

ペンギン先生
「でも, 積み重ねなければ」

秒針が, また一つ進む。

ペンギン先生
「何も変わらないのかもしれません」

【沈黙】

一般人ちびが, 小さく呟く。

一般人ちび
「…わかんない」

ペンギン先生
「私も, わかりません」

【暗転】

時計の音だけは、静かに響いている。

チクタク。

チクタク。

チクタク。

一瞬が, 積み重なっていく。

でも, それが何になるのかは…

(画面外から, 小声で)

「積み重ねても, 何も変わらないかもしれません」

(間)

「でも, 積み重ねなければ, 何も変わらないのかもしれません」


【第8回終】

#エッセイ #教育 #政治 #経済 #社会問題 #時間 #習慣 #継続 #思考の整理 #違和感 #無力感 #ペンギン先生

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集