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来た!見た!笑った!?〜THE FIRST 発表会

5月、都内某所。
息子の初めてのピアノの発表会がありました。

前回の発表会は見送った私。
だって息子、レッスンでも家でもぐねぐねして座ってられないんだもん。
そんな急くこともないしと思ってのことでしたが、
5歳になり一人でレッスンを受けられるようになって(すごい!)
今年はやってみようかという話になりました。

「ママがさ~、一緒にレッスンにいるとつまんないんだよ~」

ほうほう!
いい傾向だ。
それなら発表会もいけるのでは?
みんなの前で弾けるかな?

「はっぴょうかい? できるよ~」


課題曲「よろこびのうた」

発表会に参加することを決めたのが昨年の9月。
ピアノも買えて、準備万端です。

どんな曲を選んだらよいでしょうか?
私の問いに先生は

「テキストの中から選んでもいいですし、あとは小さいお子さんだったらジブリとかディズニーとか」

ほうほう。
うちの息子ジブリ観たことないから、ディズニーがいいかな。
(かといってディズニーもカーズしか観てないけど)
けどそれだけじゃ短いから(持ち時間は4分)もう1、2曲あってもいいかもしれない。

最初に選んだのは「よろこびのうた」でした。
随分前にテキストに出てきて、その頃から弾けるようになっていたので一先ずはこれでいいかな。
一曲目にちょうどいいかもしれない。
とはいえ、お客さんの前で弾くんだから練習はしようよ。

まずはメトロノームに合わせて、最後まで速くなったり遅くなったりせずに、八分音符も指が動くように。
そう思って練習をするのですが、息子からすると

(は?もう弾けるんですけど?)

とやる気なし。
なに勝手に弾けると思ってんだよ!

ママ
「ちょっとさぁ、ダラダラ弾くのやめてくんない?眠くなってくるんですけど!『よろこびのうた』だって言ってんじゃん!」

ったく、しょーがねーなぁとネットを漁りよろこびのうたの歌詞を探してくる。
(色んな人が訳してるけど、なるべく子供にもわかりやすいものないかなぁ、ゴソゴソ)

ワードで起こしたった

「ほらぁ!『体中を熱い炎でいっぱいにし』って書いてあるよぉ」
「もっと、こう、よろこびで胸を!こう!」

(こんな感じですかね)と息子が力強く鍵盤をたたく。
うーーん、、
ちょっと乱暴なんだけど、眠そうよりはいいわ。
とりあえず元気いっぱい弾いてくれよ。
「よろこびのうた」
なんだからさ。


課題曲「ホール・ニュー・ワールド」

ディズニー曲の中から私が選んだのは映画「アラジン」の曲、
「ホール・ニュー・ワールド」でした。
ディズニープリンセスなんてミリも興味ない息子に「何のディズニー曲がいい?」って聞いたところで「どうでもいい」って返ってくるに決まってます。
だったら主人公が男の子の曲の方がいいかな。
魔法の絨毯に乗って飛んでいくってのも、ロマンがあっていいじゃあないか。
うんうん、そうしよう。
ま、一番の理由は、ママの好きな曲ってだけなんですけどね。

「ぷりんと楽譜」で探してみると

初心者~上級者まで色んなバージョンの楽譜がある。
初心者向けと初級者向けの楽譜をプリントし、先生に相談しました。
「普段の、実力で弾ける曲じゃなくて、少し難しい曲を選んだ方がいいと思いますよ。息子君ならこのぐらいに挑戦してもいいと思います。まだ時間もあるし」
と言って、初級者向けの楽譜をおススメされました。

よーーし、決まったぞ!
さぁ、これから5月まで、一生懸命練習しよう。
一生懸命やれば、必ずいいことがあるよ。
そう言ってもまだ半信半疑の息子ですが、
大丈夫、ほんとうだから。

そうして始まった練習ですが、
まぁ大変。
結局はママが先に弾けるようになってから息子に教えるスタイルで
(わたしだってわかんないよ!)
「できないよ!」とキレる息子をときに宥め、ときに叱りながら、
1小節ずつ、にじりにじりと進む他ありません。

それでも息子、できるようになるのは嬉しいようで、

「おれ、プロ~」

と調子こいたことを言ってくるのが安心しました。
(少しは楽しんでくれてるかな)

ようやく30小節通して弾けるようになったのが2月。(5か月かかった)
そこからは表現の練習を始めました。
もともとは歌があるんだから、歌うように弾かないとだよね。
歌詞を確認しながら、該当の箇所を弾く。
これを繰り返していきます。
もっと丁寧に弾いてほしいのになぁ…。
雑~に弾く息子対しては、

ママ
「ちょっと待って。
輩? ねぇ、輩なの?
相手はお姫様だよ?
「へいへいネェちゃん、俺の絨毯に乗ってかね?損はさせねーよ」
だなんて、そんなオラついたデートの誘い方でいいんでしょうか。
否、不敬です!」

すると今度はボソボソ呟くように弾きだす息子。
(ストーップ!)

ママ
「まてまて待てい。
『よよよよよかったら、ぼぼぼぼ僕の、まま、魔法のジュウタ、、』
って聞こえるんですけど。
陰キャかよ。
あのね、アラジンは猿と一緒に暮らしてるチンピラなの。
そのアラジンが魔法の力で王子様に変身して、バチバチにキメてきてんでしょ。
カッコつけなきゃどぉぉすんだよぉぉお。
そんなんでお姫様がOKするとおもうか?
ママなら断る。」

「だからもっと、
スマートに
エレガントに
ロマンティックに……!」

覚えず高らかに歌い出すママを尻目に
息子が ファ#️⃣ をひとつ、ぽーんと鳴らしました。


「ママ、音違うよ」

「………。


失礼なんだよ

発表会の練習を頑張ってやっていると話すと、
「ピアノでは食っていけないよ」と言われることがありました。
ピアノで食っていく話なんて私は一度もしていないのだけれど。

「私も子供の頃ピアノやってたけど、なんにも覚えてないよ」
「どうせ電子ピアノなんでしょ?」
「そんなことより英語だよー」

真面目な私からすれば、
せっかく発表会に出るんだから、まがりなりにもお客さんがいるのだから、
一生懸命練習して、人前に出せるものに仕上げておかないといけないんじゃないの?
と思うのですが、

「音大に行かせなきゃ!将来はピアニストに!なーんて言いださないでよ〜笑笑

と揶揄う人もいるわけです。



失礼なんですよ。


芸事の一端の、隅っこの角を齧った私が、
そんな寝ぼけたことを言うわけないじゃないですか。

芸事の何たるかをミリほどわからない人が、
私にそういうことを言うわけです。

そもそも、お金を稼ぐことに繋がらないなら一生懸命やる意味がないという考えにも賛成しません。
芸術は、承認欲求を満たしながらお金も稼げてウハウハな手段ではないわけです。(いや、むしろ逆です)
そういう人こそ、コンサートに行く意味などないでしょう。
だってその耳で聞いたところで、1円にもならないんだから。

ともあれ、
当日はパパも来てくれるし、
熱心に教えてくれる先生のために、
応援してくれるスタッフさんたちのために、
お客さんのために、

みんなのために、一生懸命弾いてきてね。


カッコ悪いところを見られたくない

風薫る新緑の季節とはまさに今日のような日のことかと思うくらい、気持ちよく晴れた発表会当日。
会場の最寄駅でパパと待ち合わせをし、少し早めに会場に向かいます。

「これ、先生に渡す用の手土産。買ってきた。」

そう言ってパパが手にさげた紙袋を振りました。

「おお!気になってたんだけど忘れてたから助かるわ!サンキュー」

今日だけなんか気がきくやん。どうした。

緊張してなさそう。

息子の出番はなんと1番。
ということは息子が1番年齢が低いということかな?
ちゃんとお辞儀とかできるのかなー。
はーー、不安だなぁ。
私の方がソワソワします。

受付ではいつもの教室のスタッフさんが出迎えてくれました。
「一番だからすぐ呼ばれるので、先に席をとちゃってください」
おお、では撮影しやすい場所を探さないと。
撮影係のパパをせっつき、会場の真ん中、通路挟んで後方の席を陣取りました。

「ステージの真ん中でお辞儀するのよ。わかった?」

うんうんと頷く息子。
会場が暗くなるとすぐに呼ばれて行ってしまいました。
(あーママのが緊張するー)

思えば8か月も、よく練習してきたなぁ。
おんなじ曲を何百回と弾くなんて、5歳には大変だったろうな。
(8割ぐらい、まずまず弾けてるんだから、もういいじゃん。)ってつい思ったこともあったけれど、
「5歳でこれだけ弾けてたら拍手くれるよ」
「間違えてもちゃんとお客さん拍手してくれるから」
と言う私を、息子はきっ!と睨んで
「こんなんじゃダメでしょ!全然ダメでしょ!」
とムキになって練習していました。
ママが厳しかったというのもあるかもしれないが、
息子自身の「絶対にカッコ悪いところ見られたくない」精神があったからこそ、ここまで頑張ってこれたのかもしれません。
これ以上努力しようがないくらい励んでも、失敗したり負けたりすることは普通にあるし、逆立ちしても敵わない相手がいるものです。
そういう経験も大事だと思うけれど、せめて最初の発表会ぐらいは、成功させてあげたい。
頑張った分が全部結果として返ってくる、という経験を積ませてやりたい。
カッコ悪いところ見られたくないならなおさら。


なにかに似てる

司会者のアナウンスが終わると、スッと会場が静かになり、
舞台の袖から息子がきょろきょろしながら出てきました。
お客さんたちが控えめに笑います。
息子は深々お辞儀をして拍手をもらうと、ニコニコしたまま会場を見回し、椅子に座ってもまだニコニコ会場と、舞台袖の方(先生がいる)を一通り見やって
(あ、そうでした。弾くんでしたね)
と思い出したかのように「よろこびのうた」を弾き始めました。

ふぅ。弾かないのかと思っちゃたよ。

一曲目「よろこびのうた」と2曲目「きらきら星」は、
(「きらきら星」は発表会の2か月ほど前に追加しました)
普通に弾いてくれればなんの問も題ないはずです。
緊張して指が止まっちゃったりしなければ。
逆にここでミスって最後のホール・ニュー・ワールドが崩れたりしないようにきちんと弾けてくれよ。

客席で固唾を飲みながら、
これ、あることに似てるなぁ、と思いました。
昔、フィギュアスケートの試合をテレビでよく観ていたころ。
フィギュアって予めプログラムが分かっていて、技の難易度も分かるので、

次のジャンプ、決まるか!?こいこい!
っしゃあ!降りたァァ!!!!

てなるんですよ。
それとおんなじで、息子と8か月も一緒に練習してきた身からすれば、難しくて何度も何度も繰り返した場所とか、つい弾き方に癖が出てしまう場所とか全部を把握していますから、その箇所に差し掛かるにつれ

たのむたのむたのむ…、
ッヨォッッシュ!!!

とガッツポーズです。

「よろこびのうた」と「きらきら星」は難なく着地しました。


来た!見た!笑った!?

3曲目の「ホール・ニュー・ワールド」の一番の難所は左手が2拍、右手が三連符、
歌詞でいうとサビの
「誰もぼくらー、引き止めー」の
「だーれーも」
の箇所です。

滑り出しは順調でしたが、
いや、滑り出しはというか、
結果的には全体通して過去いち良かったんです。
先生も後から
「完璧でしたね。」
と評するほどに良かったんですけど。。

A Whole New World
新しい世界

サビだ!さあ行くぞー!と意気込むママとカメラを握りしめるパパ。
けれど息子は くるーっと 顔を客席へ向けました。

へっ!?
ちょちょ、手元手元は?
前 前 前をむきなさいいいーーー!!

渾身の念を送ってみましたが、息子には通じなかったようで、
どころかさらに客席へむけて

ニコッ☺️

っと、微笑みます。

(お客さんもつられて笑います。)

時間にして、2秒、3秒ほどだったかと思いますが、
とてつもなく長い時間に感じました。
そんなことしてミスったらそれこそカッコ悪いじゃんかよ。
直後の二拍三連も完璧に着地し、最後までミスなく丁寧に弾ききってくれたからよかったけど。。

そんなこともありつつ、初めての発表会は大成功でおわりました。
よかったよかった。

いっぱいの拍手ををもらい満足げに帰ってきた息子が言いました。

「おれ、勝った」
(やかましいわ)


ファン一号現る

今回の発表会の参加者は30名弱。
どの子も一生懸命練習したんだなと思うと、自然と盛大に拍手を送りたい気持ちになります。
楽器って、弾けるようになるまでに時間がかかりますよね。
他の習い事、例えばお絵描き教室とか、スポーツ系の教室ならその日から楽しめるものも多いと思います。
下手でも楽しい。
けれど楽器は、何度も地味な練習をしないといけない。大変です。
私だって、龍笛の音を出すだけに何日もかかりました。
それに、ピアノが何かの役に立つことは、普通の人の人生ではあまりないでしょう。
でも、だから良いんだと思います。
役にも立たないことを楽しめる方が、人生はきっと豊だ。

しかしまぁ、ほんとうにお疲れ様。ママにとっては一生の思い出になりました。
ありがとう。

丁度半分の参加者の演奏が終了したころ、休憩時間になりました。
「トイレ、トイレ」と言いながら息子をトイレに連れていくと、年配のご婦人から声を掛けられました。

「キャー!あなただったのねー!すっごい上手だったわぁ~!客席を見る余裕があるなんて~!ニコってするからおばちゃんファンになっちゃったわ~!もぅ、ステキ~!いや~ん!」
(ほんとにこんなテンション)

「ありがとうございますありがとうございます。
今?5歳です。
いつから?3歳から習ってるんです。
誰と?パパと3人で来ました。」

おばちゃんの賛辞をひとしきり浴び、何度もお礼を言ってトイレの個室に入りました。
君、おばちゃんキラーだなぁ。
でもよかったじゃないか。頑張って練習して、褒めてもらえて。
そう言ってズボンのチャックを下ろそうとすると、

え!?
チャック開いてたの!?

息子
「そうだよ」

ママ
「チャック開いたままピアノ弾いてたってこと?」

息子
「そうだよ」

「……。

ご褒美のおもちゃいっぱい


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