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高いピアノなんて、とみんなは笑うけれど〜小径を抜けて林の奥へ

引っ越しをした。

7月、福岡から帰った次の日から早速不動産屋を巡り、越してきた。
10月の末には引っ越さないといけない事情があったからと言うのもあるが、一番の理由は、ずーっと欲しかった電子ピアノを買うためだ。

一年半、おもちゃのピアノで練習してきた息子に一刻も早く買ってやりたかったのだ。
発表会に出ると決めたことだし、どうせなら長く使えるしっかりしたものが欲しい。

割引を受けられるというので作っておいたエポスカード(10%OFFデカい)を握りしめ、楽器屋へ。
2時間くらいみっちり話を聞かせてもらって(店員さんよく付き合ってくれました)
CASIOの最上級モデル、GP1000に決めた。
カードの限度額パンパンの買い物、
ひぃ〜!
ぷるぷるするよ!

新居のリビングにしっかりとスペースを空けて、待ち侘びた納品の日。

ピカピカ!


うわぁ〜、すごい!!
鏡面仕上げのピカピカボディに顔を映して、息子はニコニコしている。
こんなに心躍る買い物はいつぶりだろうか。
このためにお金貯めてきてよかったよ。

ただ、念願のハイブリッド電子ピアノを買ってホクホクしている私に、失礼なことを言う人もいたもので、彼らが言うには

「何目指してるの?」
「音大目指してるなら電子ピアノじゃだめだよ?」
「うんうん😌(はいはいお疲れ様🖐️)」
「せいぜいピアノを嫌いにしない程度にがんばって」
「うちの実家にも何十年と弾かれてないピアノが重厚感を醸し出してるから、そういう意味じゃもっと高いピアノ買った方がいいんじゃない?www」

ざっとこんな感じです。

むっちゃ言うやん、みんなして。

なんでこんな失礼なん。


音楽なんて金にならないし裕福な家庭でもないのだからそんなに必死にならなくても、
どうせお飾りになるだけだよ、
親バカもほどほどに、

といったところでしょうか。

そういう話じゃないんだけどなぁ…


バットを一回振っただけで

「ピカピカのピアノが来たことだし、さぁ、練習しよ!」
眺めてたって始まらない。
さっそく弾いてみてよ!
なのに息子ときたら、急にストンとテンション下がって
(ええ?いま?)
みたいな顔をする。

おいおい、何のために買ったんだよ。
練習するでしょうが。

結局この頃からからあまり変わらず、お互い毎日が戦いです。

「もおお!できないんだよぉぉぉ!」とイライラする息子。

私「できないから練習してるんです。」

「今日は保育園で塗り絵したんです、ぼく。」と話を逸らす息子。

私「指を動かさないこの時間はピアノの上達に1ミリも寄与しません。はい、弾いてください。」

(クソだりぃな)という顔の息子。

私「今日まだ3分しか弾いていません。例えば「僕はメジャーリーガーになりたいんだ!だから毎日練習してるんだよ!」というお兄ちゃんがいたとしましょう。そのお兄ちゃんに、「へぇぇ。すごいね!毎日どんな練習してるの?」ってきいて「僕は毎日素振りを一回やってるよ!」ってドヤられたらどうですか?はい、指を動かしなさい」

疲れます。疲れるけど、、
それでも毎日やろうというのはですね、
「毎日続ける」ってことを当たり前にしたいからなんです。
毎日練習するを練習をしているわけです。
毎日やるって、キツイですよ、大人でも。
やらない理由なんてなんぼでもありますから。
でもやる理由は一つしかない。
やるって決めたから。

ほぼほぼすべての人は(あなたも私も、あの人もこの人も)フツーの凡人です。その凡人が努力もできなくてどうするんだ、と。
継続は力なりとはよく言ったもので、
フツーの人間でも、努力が出来れば、まぁまずまずなんとかなったりもします。ならないこともあるけど、そもそも挑戦しなければわからないことですし。
努力だけでは一流になれないじゃないかという意見ももっともですが、そもそも凡人に一流になれという人もいないでしょうし、
多くの一流でない人がこの世界でぼやっと生きているのだから、そう懸念する必要もないと思います。
最初はママに強制されてでも、毎日やってきたという事実が息子を支えてくれるはずだ。

勿論ピアノは息子が決めたことではないので、

私「君がピアノが好きか嫌いかなんてのは関係ない。ママがやると決めてしまったのだから諦めろ。やるしかないんだから、頑張ってやりなさい。」

と言っています。

すごいすごーい!天才!なんてうちのおばなんかは簡単に言ってますが、

「お前は凡才なのだから、努力をしなさい」

と私は言っているんですね。
五歳には厳しいと承知のうえで。

発表会の曲「ホールニューワールド」


上手いやり方

バカみたいな根性論のように感じる人もいるかもしれませんが、

努力をすること
目標を定めてまっすぐ進むこと

これが王道だと私は思います。

(ママはバカだなぁ。)
(もっと上手いやり方があるのに。)
(古臭い。)

いつか息子がこんな風にいう時が来るかもしれません。
世の中には「上手いやり方」とか「裏ワザ」は確かに存在するし、
お金で時間を買うやり方だって今の時代はいっぱいありますしね。
私はそれを否定しないし、むしろ活用した方がいいと思っています。
(裏ワザがあるなら教えてほしかったよ…ママだって…)
ただその「上手いやり方」が見つからなかった時に何かを諦めてしまうことになったとしたら、
それはそれは勿体ないことだとも思います。
いくつか選択肢があって、楽なものを選べるならいいけれど
しんどい選択肢しかない時にそれでも選べるような体力を今からつけておいてやりたい。

だからこの二年、ほぼ毎日練習してきましたし、これからも続けていくでしょう。
五歳の息子にとって世の中で厳しい人間はママ一人くらいなんだからさ。
それはもう観念しろよ。

音楽が教えてくれるのは

ここまでなんだかんだとピアノをやらせる理由を述べてきました。
相変わらず「無理強いして可哀想」的なことは言われますが、私が何を言っても聞いていないようなので最近では沈黙しています。
不貞腐れてばかりの息子もピアノが上手くなりたいのは本当らしいようで、
苦戦した1小節が弾けた瞬間にパッと見せる明るい笑顔に私もやっててよかったと思う、二人で喜び合う、その繰り返しです。



けれども本当の本音をいえば、

別にいいんですよ。
面白おかしくへそで茶を沸かしながら生きてってくれれば。
何ができるとか出来ないとか、本人が気にしない限り大した問題ではありません。
立派な納税者になる必要もない。
立派な人物になる必要もない。
毎日機嫌よく、健康であれば。
その幸運に恵まれてくれれば。

そう思います。

そして勿論音楽が教えてくれるのは努力の仕方などではなく、

気楽な挨拶の方法であったり、

芸術という崇高なものへの自分の溶かし方、

誰だって小さな頃は
軽々と駆けていけたサンクチュアリという林の奥の
自分だけの友達に会えるあの木陰
そこへの隠れ方

そんなものなんじゃないだろうか、と思う。





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