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mRS shift解析の読み方 中央値4はなぜ勝利と呼ばれるのか

LASTEの結果は「中央値mRS 4 vs 6」でした。

EVT群の半数は、介助なしで歩けず、身体的ニーズに介助が必要な状態。それでも試験は「ポジティブ」と発表されました。

なぜか。shift解析(順序尺度解析、ordinal shift analysis)という統計手法が使われたからです。


mRSとは何か

modified Rankin Scale(mRS、修正ランキンスケール)は脳卒中後の機能予後を7段階で評価します。

  • 0:無症状

  • 1:症状はあるが日常生活に支障なし

  • 2:軽度障害、自分の身の回りのことは介助なしで可能

  • 3:中等度障害、歩行は介助なしで可能だが他で介助必要

  • 4:中等度〜重度障害、歩行に介助必要、身体的ニーズにも介助必要

  • 5:重度障害、寝たきり、失禁、常時介護必要

  • 6:死亡

数字を身体感覚に翻訳します。

mRS 3は、杖歩行で買い物には行けるが、料理や入浴に介助がいる状態。家庭内でほぼ自立、外出時に支援が必要なレベル。

mRS 4は、屋内歩行も介助が必要で、トイレや食事に手がかかる状態。家族の生活時間がほぼ介護に拘束されます。

mRS 5は、寝たきり、失禁、経管栄養、体位変換必要、24時間対応必要。在宅介護はほぼ不可能で、療養病床や施設入所が現実的選択になります。施設入所・長期介護コストへの影響が最も大きい層です。

mRS 0-2を「functional independence(機能的自立)」と呼ぶのが従来の標準。古典的なEVT試験はここを主要評価項目に置いてきました。

mRS 0-3は「歩行自立」を含みます。RESCUE-Japan LIMITはここを主要評価項目にしました。

mRS 4と5の差は、家族の介護負担で言えば桁違いです。

3つの解析方法

mRSの結果を分析する方法は大きく3つ。

二値化(dichotomized analysis)

mRS 0-2 vs 3-6、あるいは0-3 vs 4-6など、ある境界で2群に分けて比較する。「functional independenceの達成率」というシンプルな数字が出る。臨床判断に翻訳しやすい。

shift解析(ordinal shift analysis)

mRS 0から6までの全分布を比較する。「1段階改善」を全レベルで拾う。EVTで5→4に改善したケースも、3→2に改善したケースも、同じ「1段階改善」としてカウントされる。

各スコアの絶対頻度比較

mRS 0、1、2…6それぞれの割合を両群で並べる。視覚的に最も豊富な情報。ただし統計検出力は低い。

2015年世代のEVT試験——MR CLEAN、ESCAPE、SWIFT PRIME、EXTEND-IA、REVASCAT——はmRS 0-2の二値化を主流に据えていました。「自立復帰したかどうか」が当時の中心的な臨床問いだった。

HERMES collaboration(Goyal et al., Lancet 2016)でこの5試験の個別患者データメタ解析が行われ、shift解析と二値化が並列提示された経緯もあります。

ところがlarge core trialsの世代に入ると、主流がshift解析に切り替わります。同じ「EVTの効果を見る試験」でも、見せる景色が10年で変わりました。

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