東京女子プロレス初心者メモ ――特典会で、何を話そう
以前、東山奈央さんのグータッチ会で「一言だけ話せるなら何を言うか」という記事を書いた。
一言しか話せない現場では、言葉を削るしかない。
「楽しかったです」なのか。
「ありがとう」なのか。
「また会いに来ます」なのか。
持ち時間が短いからこそ、最後に残った気持ちだけを渡すことになる。
では逆に、そこそこ話せる現場では何を話せばいいのだろう。
最近、東京女子プロレスの特典会に参加して、そのことを考えるようになった。
話せる時間があると、逆に困る
東京女子プロレスの特典会は、自分の体感では思ったより普通に言葉を渡せる場だった。
もちろん、いつまでも話していいわけではない。後ろには他のファンもいるし、運営の進行もある。撮影会やサイン会には、それぞれのルールがある。
それでも、流されるように一瞬で終わる感じではなかった。
ありがたい。
とてもありがたい。
でも、ありがたいからこそ困る。
一言しか話せないなら、一言に絞ればいい。
けれど、少し話せる時間があると、今度は自分で言葉を選ばなければならない。
何を話すのか。
どこまで話すのか。
何を言うと重いのか。
何を言うと薄いのか。
時間があるからこそ、急に難しくなる。
試合後の選手を前にするということ
しかも、プロレスの特典会で目の前にいるのは、ついさっきまでリングで戦っていた選手である。
ここがまた難しい。
身体への負担がないわけがない。だから「大丈夫ですか」と言いたくなる気持ちもある。
でも、相手はプロとして笑顔で立っている。その姿にこちらの勝手な心配をかぶせることが、敬意なのか余計なお世話なのか、初心者にはまだ分からない。
かといって、何も感じていないわけではない。
試合はすごかった。
身体を張っていた。
観ているこちらも熱くなった。
けれど自分は、まだ技の名前も、細かい攻防の意味もよく分かっていない。
試合内容について一番思うところがあるのは、リングに立っていた本人のはずだ。
そんな自分が、軽々しく「あそこがどうだった」と論評するのも違う気がする。
では、何を言えばいいのか。
風城ハル選手に伝えたこと
自分にとって、その具体例が風城ハル選手だった。
後楽園大会で、風城ハル選手を明確に応援する目線で観た。
試合は対戦相手の鈴芽選手の勝利。
でも、向かっていく姿が強く残った。
勝ったか負けたかだけではなく、
「この人をまた見たい」
と思った。
その気持ちは、次の行動につながった。
6月大会のチケットを取った。
そして特典会で、風城ハル選手の撮影会とサイン会に参加した。
サイン中に、私はこんなことを伝えた。
「かっこよかったです。技とかは全然分からないのですが、気合というか挑戦者魂を感じました。さっき6月大会のチケットを取りました。応援しています」
言葉としては、だいぶ素朴だったと思う。
「挑戦者魂」とは何だ。
自分で言っておいて、少し照れる。
でも、あの時の自分が本当に渡せる言葉は、それくらいだった。
技は分からない。
細かい攻防も語れない。
でも、かっこよかった。
また観たいと思った。
だから次のチケットを取った。
応援しています。
結局、それくらいしか出せる言葉が無いのである。
また来ましたの次は何だろう
特典会には、もうひとつ妙な悩みがある。
初めてなら「はじめまして」でいい。
二度目なら「また来ました」と言える。
では、三度目以降は何なのだろう。
「覚えてますか?」は、相手に記憶確認をさせてしまう気がする。
「久しぶり」は、少し常連ぶっている感じがする。
「いつも応援しています」は、まだ少し照れる。
たぶん、今の自分には「今日も応援に来ました」くらいがちょうどいい。
覚えてもらうことを求めるのではなく、自分がまた観に来たことを差し出す。
その日見たものを、その日の言葉で返す。
それくらいの距離感でいたい。
推し活は、言葉より先に行動が出る
特典会は、かなり推し活らしい時間だと思う。
試合を観る。
心が動く。
物販でポートレートを買う。
選手に直接言葉を渡す。
次の大会へ気持ちがつながる。
それは試合そのものではない。
でも、試合から完全に切り離されたおまけとも言い切れない。
立派な言葉を用意することではない。
詳しい感想を言えるようになることでもない。
試合を観て、心が動いて、また観たいと思う。
その気持ちが、次のチケットや、物販や、本人に渡す一言につながっていく。
一言しか話せない現場では、時間が言葉を削ってくれる。
そこそこ話せる現場では、自分で言葉を選ばなければならない。
そしてプロレス特典会では、その言葉に「自分が何を見て、どう応援したいのか」まで出てしまう。
まだ、うまくは言えない。
でも今は、
かっこよかったです。
応援しています。
また観に来ます。
まずはそれくらいでいいのだと思う。
うまいことは熟練の猛者に任せておけばいいじゃないか。
初心者は初心者らしく、ありのまま。
長々語らなくとも、思いはシンプル。
良い体験をありがとう、だ。
それでも次に会ったとき、もう少しだけ自分の言葉で話せるように。
そのためにも、また会場へ行きたい。

